5ー4 怪しげなキャラバン
リコッタ視点になります。
竜の翼を生やし、砂漠の空を舞う。
王都からほど近い街路。気配はそのあたりから漂っている。
荒廃した砂漠といえど川はある。
西の果ての港から王都までを、一本の青い線で繋ぐように伸びている。
他国との交易は古くから、川沿いの道を通じて行われている。上空から見下ろすとかすかに点々と、野営しているキャラバンの灯りを確認することができた。
砂漠の民は大半が獣人や人間との混血で、昔ながらの原始的な生活を送っている。
しかし中には、オアシスを拠点に財を成している豪商もいる。
そういう連中は交易によって、エルカザードの民にひけを取らない魔法技術を有している。
冒険者として出稼ぎにやってくる者も多く、たとえばミスリル級のルーンやフィガロも、オアシスを束ねる一族の出自である。
不穏な気配は、そういった『由緒正しき』キャラバンの積荷から漂っていた。
王都に向かっているようだから、こちらから出向かなくてもよかったかもしれない。
とはいえ対処するなら、町中より砂漠のほうが都合はいい。
相手は思いのほか警戒心に欠けていて、真上付近まで詰めよっても反応が見られなかった。
こういう場合、もっとも手っ取り早いのは奇襲だ。
口から火球を一発。
標的めがけて空からぶつけてやれば、秒で終わらせることができる。
しかしそれだと相手の正体も狙いもわからない。
なのでとりあえず、見張りの前に降り立つことにした。
背中に生えた翼を仕舞い、白いワンピースを裾をつまんでおじぎする。
「ごきげんよう」
「どわっ! なんだてめえ! どっから出てきた!?」
「銀髪のお兄さん、やはり砂漠の民ですね。行商人のキャラバンのように見えますけど――おっと、まだご挨拶の途中なのです」
相手が剣を構えようとしたので、はたき落とす。
ところが勢いがよすぎて、腕ごと落としてしまった。
「ぎゃああああっ!」
「めんごめんご。ひさしぶりすぎて加減を間違えました。えーと……お兄さんたちの中から、というより荷物のほうかしらん。馴染みのある気配がするので、念のためご確認させていただいてよろしいでしょうか」
「わけわかんねこと抜かしやがって! ぶっころ――あばあっ」
うは、一発でミンチになるじゃん。
人間、脆すぎるっつうの。
当然のように騒ぎを聞きつけた連中がわらわらと集まってくる。
「あなたがたが悪党なのはわかっています。罪を認めるなら命だけは見逃してあげましょう。いや、一人やっちまったあとなのでそうじゃないと困るというか、しょっぱい窃盗とかじゃなくてドン引きするような悪事を働いていてほしいのですが」
途中で自信がなくなってきて、うまく脅すことができなかった。
おかげで変な空気が流れてしまった。
とはいえ……普通のキャラバンならひどい有様になった見張りを見てパニックに陥るだろうに、全員が武器を構えて様子をうかがっている。つまり我の姿に戸惑いこそ見せているものの、襲撃されたこと自体には驚いていないのだ。
不自然なところはほかにもある。
さきほどの見張りが持っていたのは精霊銀の剣。
それ以外にも魔力式の銃や、カタログでしか見たことのないような最先端の魔道具を有している。
オアシスの一族に金があるといっても、野党対策にここまでの装備を用意するとは思えない。まるで今から迷宮に潜るか魔物を討伐しにいくか、はたまた戦争でも仕掛けようとしていたかのような物々しさだ。
「闇ギルド。暗殺者集団。他国の工作員。あとはなんだろ……テロ組織とか」
集団のひとりがかすかに動いたのを見逃さなかった。
他国の工作員で眉がぴくり。
テロ組織でさらにぴくり。
よかった。ちゃんとクズだった。
しかも今までにお掃除したやつらの中でも一番スケールがでかい。
初手でうっかり見張りをミンチにした手前、犯罪者でなければこっちが悪者になってしまうからな。
ありがとう君たち。反社会的集団でいてくれて。
本日は二回更新になります。次話は夕方頃に投稿予定。




