3ー3 元死刑囚で殺人鬼でポーション中毒だけどいい?
手始めに大地の声や、小さな自然に問いかける。
しかしさっそくつまづいた。
(我らが主。魔物は自然の友ゆえ、仲間を売ることはできませぬ)
(チクったらハブられるのよ。悪さした連中なら別だけどね)
(ならば無理強いはしないのです。希少種を欲しがるのは人間の都合だものな)
仕方がないので他をあたる。
まずはお隣さん。次にノア・コーエン。
「えっ……ごめんなさい。魔物探しなんてしたことないし」
「僕が研究者だってこと忘れてない? 日中は普通に仕事だよ」
げ。頼める相手がもういない。
つうかお隣さんもノアも別にそこまで親しくはない。
困ったな。
今から新しく作るしかないのか、お友だち。
◇
正規の冒険者を仲間にすることはできない。これはノアを誘ったときに指摘されたのだが、プロの手を借りると許可証を得るための実績としてカウントされなくなってしまうのだ。
つまり勧誘するなら自分と同じ十五歳以下の有望株。
あるいはなんらかの理由で資格を失ったものの、どうにかして現場にカムバックしたい元冒険者。
そもそもギルドを経由せずに依頼を三回達成して許可証を発行するというのは、引退者や脱落者に復帰するチャンスを与えるために設けられた手順なのだ。
仲間は欲しい。
だが、てきとーに捕まえて使えないやつだったりするとむしろ逆効果になる。
時間はいくらでもあることだし、まずは情報収集といこう。
冒険者ギルドの本部は王都の中央、噴水広場の近くにある。
喧騒に満ちた市場からはやや離れていて、魔法の専門書が置かれた本屋や図書館、鍛冶屋や雑貨屋や魔道具屋、あとはお洒落な飲食店などが軒を連ねている。
支所は町のいたるところにあるものの、高難易度の依頼は本部でしか受けられないため、名のある冒険者は基本的にこちらへ足を運ぶ。
リコッタ嬢は向かいに位置するカフェのテラス席から、本部を行き来する人間を観察する。
……思っていたよりレベルが低いな。
ゴテゴテとした鎧を身につけていたりキンキラの槍を背負っていたりと見かけこそ大仰だが、今の我でもデコピン一発でサンドベリージャムに変えられるような連中ばかりだ。
プロの上位層がこの程度だとすると、若輩の有望株やドロップアウト組は相当ひどいかもしれない。
困ったぞ。超一流らしいジークを基準に考えていたから、期待外れにもほどがある。
これならやっぱりひとりでやったほうが無難かもしれない。
なんて考えていたところで、横からふいに声をかけられた。
「お嬢さん。こんなところでなにしてるの?」
「仲間を探しているのです。今すぐ冒険者になりたいので」
正確には迷宮に行きたいだけなのだが、まあいい。
相手を見る。最初はウエイトレスさんかと思ったのだが、それにしては佇まいに隙がない。
厳しい鍛錬を続けている人間特有の、安定した体幹。
タンクトップに短いスカート。その上からエプロンをつけている。よく観察すると調理用というより作業用という感じで、あちこちについたポケットにナイフやらポーションの瓶やらが収納されている。
髪は一房の三つ編み。日に焼けた茶色で、馬の尻尾みたいに肩から垂れている。
女らしい身体つきで、胸の谷間に刻まれたタトゥーがなんともセクシー。
ふわふわ可愛い我とは対照的。野生的な美女である。
「キミならひとりでもいけるんじゃない? なんだかすごそうな子がいると思ってつい声をかけちゃったくらいだし。アタシはルーン。一応、ミスリル級の冒険者」
「リコッタ・パンケーキと申します。エルカザードのレベル低いなと幻滅していましたけど、お姉さんを見てちょっと安心したのです。少なくとも足手まといにはならなそうですし」
「ウケる。なかなか言うね」
相談に乗ってくれそうな雰囲気だったので事情を説明する。
「門限って。そこは普通に女児なんだ」
「なので遠出できなくて、近場だと希少種を探すしかないのです」
「にゃるほど。仲間いないとしんどいね」
「おすすめの人材とかあります? 紹介料は出しますので」
お金はジークの財布からパクっておけばいい。
ちなみに今のカフェ代もそれで支払っている。
ルーンさんはしばし考えこんだあと、
「元死刑囚で殺人鬼でポーション中毒だけどいい?」
「全然問題ないです」
「じゃあ決まりね。アタシの知り合いなんだけど、面倒を見てあげて」




