第205話 大将戦①
小一時間ずっと攻撃を繰り出しては防がれる決闘試合を経ても守護者の零は疲れを見せず、主に向けて笑みを溢す。休憩なしとは言えど、多少の汗をかく程度で、あとはいつも通りに振る舞っている。
妖艶さとはまた違うエロさを醸し出しており、ジュンの心を滾らせる。
(うっわッ、エッロォ!)
髪かき上げるその姿に目惚れしそうになるも、周りの眼があるのを思い出し我に返る。
「──っと、まずはお疲れさまね、零」
「お褒めに預かり光栄にございます。しかしながら、攻略叶わずでした。不徳の致す所です」
大して能力使わずだったのだから当然の結果ではある。及第点とすら、ジュンは思ってない。現段階における最良の判断と捉えるも、そう思うのは彼女らの創造主ジュンだけ。
守護者は違う。
創造されたのだから目一杯働き、結果を出すべきだと思う者も多い。
「能力云々はさて置いて、だ。私は攻略情報を持ち帰るべきだったと思うぞ」
「唯壊もそう思うの」
今しがた反論したように、今回であれば紅蓮と唯壊がその類に該当する。
情報はとかく大事。
何に於いても。
言い換えれば紅蓮と唯壊の二人は、守護者としての最低限の役目を果たしてないと言っているのだ。
だがこの意に反論した者がいる。
「我は、そうは思わんな」
まさかの帝王ドラゴである。
「どういう意味だ?」
半竜人且つおっさんの姿ではあるが、ドラゴは曲がりなりにも帝国の王だ。だがしかし、その名称は守護者にとって関係がない。
守護者が敬うのは創造主のみ。
他国の王など、一般人と何ら変わらない。
友好国だから言葉砕けてるでもない。
対等に見ているわけでもないために、紅蓮の言い方に物申す者がいて当たり前だが、ここは天空決闘場、隔壁された空間であり、帝王の従者は不在。
ドラゴ本人も、そういう煩わしさが起こり得ると懸念していたからこそ、誰も連れて来ていないのだ。
つまり、言葉遣いに気を付ける必要性は皆無。
そもそも、そんな隔たり彼らに有りはしない。
「少し考えれば分かるだろう。奴の障壁強度が計り知れないのは【聖なる九将】であれば知っていて当前、でなければ国に害を及ぼすかもしれん決闘を許可する筈もなしだ。それを【S】の者らであれば突破できるかどうかではあったが、それなりの強さの者でも通常攻撃では傷一つ付けることが出来なかった。これは、十分な成果だと我は思うぞ」
「他国の王に褒めていただいても………ですが一応、謝意を述べます」
「次いでだが、征服王もこの結果に満足しているわけだろう?単なる武器攻撃では破れないと推測もしていた筈だ。なのに送り出したならば、能力を使えばワンチャンくらいの想定もあったのではと我は思うぞ。違うか?」
ドラゴの問いに、ジュンはフフンと笑う。
零も不敵な笑みを溢す。
「本当ですか、ジュン様?」
「陰気な女だしね、唯壊は最初から分かっていたの」
「誰が陰気なのでしょうか。もう一度教えてくれますか、唯壊?」
「あーはいはい、皆ストップ。この話はこれで終わり。障壁攻略なんていつでも考えられるでしょ」
「随分と簡単に言うのだな」
「当然でしょ、私は別に武器による物理攻撃で壊れないとは思ってないから」
「なんと!?」
ジュンの発言に驚くドラゴ。
だが話は一旦おしまい。
何故なら────
「ラスト大将戦、誰が行こっか?」
「あちらは………あの剣士のようですね」
「レイヴン、序列第一位か」
「であればここは私が、ジュン様ご指名下さい」
紅蓮はこれ見よがしに炎剣を握る。
ジュンの予定もそう。相手が【聖なる九将】ならば紅蓮を対戦者にと決めていた。
他に闘える者が居ないからだ。
唯壊は能力が強すぎるが故に温存したいという気持ちがあった。物理無効の【五連星】相手ならば、能力を試したくもあったが、温存の可能性もまだ十分にあった。
連れてきたもう一人、型はずっと寝ているから無理。叩き起こすのは有りだが、やる気の無さが直結しそうで却下。
古城で留守番している者達を連れてくるのも可怪しい。後出しジャンケンで後味が悪い。
ジュン本人が出るのは論外だ。
勝つとか負けるとか、そういう話ではないのだから、本物の大将が出場する必要はない。
これは決闘試合、擬似戦端。本当の戦いではない。
相手の力を知る程度であれば十分、蹂躙の必要性はない。
決闘後に確定で貰える贈呈品にこそ価値があるのだから。
「───んじゃ紅蓮、よろ………!??」
「「???」」
指名する直前に、“黒の捕食者”媒介に現れたのは、ジュンの懐刀、一番強いとされる守護者、翠。
彼女は何も言わず、勝手にレイヴンと向かい合う。
「あわわわわっ、ヤバい」
ジュンの懸念は、はてさて何なのか。
小国レジデントで相対した時振りの二人。
竜虎相搏つ。
大将戦、いざ始まる。
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