第206話 大将戦②
現【聖なる九将】の最強格、序列第一位レイヴンに対するのは、創造主によって創られた守護者最強格の翠。
[黒の剣士] VS [緑の武人]といったところで、相反しなければ交わりもしない両者ではあるが、共通する所が1つだけある。
それは、小国レジデントで相対した時にも起こっていた。
静かなる喧騒─────いや、静かすぎる決闘。
零とクリスが闘った時以上に会話がないのだ。
無口と無口とが向き合っても、声は生まれない。観客に聴こえてくるのは打撃、剣撃、衝撃などの戦音のみ。
息づかいさえも聞こえやしない。
剣と拳とが交叉する音だけが無情に響く。
見応えがないわけではない。
両陣営の最強格がぶつかっているのだから、激しさ、苛烈さは今まで以上、瞬きすら出来ないほどに目まぐるしく、常人の能力者ではついていけないほどの疾さ。
暴力に次ぐ暴力。
障壁決闘場が壊れそうな勢いでもある。
だが…………だからこそ、ジュンの懸念は当たった。
会話の生まれない闘いは面白みに欠けると。
いつの間にか勝手に双方の意で決まっていた能力不使用の武器ありの体術戦など、観る側からすれば退屈だと。
強さが拮抗していれば尚更である。
副将戦以上に終わりは見えない。
だから『居ても立っても居られなかった』、というのが一番の理由になってしまうのだ。
「おおぉっとおぉー!!空を抉る拳を難無く避けたあぁー!!」
「「えっ??」」
「すかさず上段からの剣閃を繰り出すも完全に見切っているうぅー!!」
「「えっ??」」
「カウンター張りのパンチも見事、柄で防いでいるうぅー!!」
ジュンの急な奇妙な行動を第一に理解したのは帝王ドラゴ。
「なんとそのまま斬り刻まもうと剣先を変えたあぁ!?」
「だがそれまでも察知しているスイぃ!」
ドラゴの次に、主の意を解したのは零。
「両名共に機を伺っています」
「最初に動くのは───翠だ!」
「だがレイヴンもほぼ同時に動いているぞぉ!」
「剣と拳とがまたもやぶつかり合っていくねぇ!」
「どっちも殺気がいっぱいわっしょい!」
更に、ヤンと夢有も同調していく。
「おおっとぉ??レイヴンが一歩下がった、後退か??」
「いや違う!あの構えは!!」
「抜刀術だあぁー!!」
「翠は動じていません」
「そのまま突っ込む気だねぇ」
「行け行け、ゴーゴー!」
「踏み込んだ瞬間───抜いたぁ!!間合いもドンピシャ───」
「───だが避けきれている。あれは、スリッピングアウェーか??どこで習ったんだ??」
「………実況が散漫してますよ、程度が知れますね、ドラゴ」
「やはり我には向かん。誘いには乗ったが、『南さん』のようにはいかんな。いや彼も実況よりは解説より…………というか何故起きているんだ、ライト??」
「我が君に呼ばれたような気がしましたので」
「呼んでない」
気絶から復活したばかりのニシミヤライトはジュンに愛想を向けるがそっぽを向かれ落胆する。だが負けじと役目に力を入れるのだ。
そう、無音とは名ばかりの、ド付き合いのみの決闘に、意味を持たせられるくらいの実況と解説を。
しかしながら、まだ燻っている者達がいた。
紅蓮と唯壊だ。
型は居ないものと数えられているため、この二人だけがまだ参加していないことになる。
確かにジュンは命令したわけでも、実況くらいは欲しいと懇願したでもない。
しかし、他の者らは察した。
夢有は違うかもしれないが、実況の手を入れるという波に乗っているのだから、守護者としては主の意に沿う正しい選択をしたと言える。
逆に言えば、乗ってない彼女らは選択を誤ったということになる。
だから零が、彼女らに冷ややかな眼を向けるのだ。
これは『さっさと理解しろ』、そう言っているようなものである。
「かかと落としが炸裂だあぁー!」
「いなしてからの回転斬りいぃ!?」
「チョップで弾き返しましたね」
「そのまま突っ込んだよぉー!」
「げ、下段からの掌底……か?」
「バッチバチィ!」
「掌底を真正面から刀の刃で───」
「受けきったああぁ!!からの突きィィ゙!?」
「それを白刃取るか、やりおる」
「こっからは我慢比べだぁー!」
実況に、解説に、熱が入る。
やっとこさ紅蓮も介入し、盛り上がる最終戦。
否、盛り上がってるのは片側だけ。
もう半分は、ポカーンと眺め続けている。
一体全体、これは何なのかと。
無言の試合に色を着けたとしか言いようがないが、理解できる者はごく僅かだろう。
「あ、あの………唯壊も混ざった方がいい感じ、なの??」
その問いに答える者はいない。
混ざるか混ざらないか、個人の判断。
かくして、実況解説付きの大将戦は、副将戦同じく1時間と経過しても勝敗つかずに、引き分けにて終了したのだった。
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