第202話 中堅戦②
「初めまして、私はニシミヤライト、あなたは?」
「………コウジンだ」
ヒョウジンとは打って変わっての低い声。
表情変わらずとも男性であるのは明らかだが、だからといってライトの好みになりはしない。選ぶ権利は誰にだってある。ライトの好みは、男だった時のジュンだが、今現在は幼女姿に甘んじている。
(確かに魂は一緒と言いましたが、やはりあの時の姿忘れられませんよね。変貌の髪飾りですか…………我が君はそれでどうゆう姿に────いえ詮索はしませんが、もしかすればというのが有り得るかもですもんね)
男→女→男の可能性。
一度捨てた希望が叶うかもしれないというチャンス。
有頂天に心弾む要因にもなる。
(あぁ、我が君………またあの御姿を───!?)
拝む前に先に飛来したのは上空からの眩い光。
ドォォンッっと、一槌の如く。
ライトの身体を簡単に包めるほどの巨砲。
話し合いも無しに、問答無用の能力ありの決闘開始。
「………ふぅん」
回避せずの直撃も、重力壁によりノーダメージ。
「なるほどなるほど。件の光撃被害はあなたの仕業だった、ということですか」
得体の知れない相手の初手を引き出せたのは幸運だった。わざわざ隙を作った甲斐もあったというもの。
「無言は肯定と捉えられますよ、コウジンさん」
それでも尚、コウジンはうんともすんとも言わない。
前方、ライトの方角を見据えたまま攻撃ならぬ光撃を繰り返す。
徐々に天井からだけでなく多方向から。
光に上も下もなければ、屈折だってする。
それら全てをライトは防いだ。
威力調べのためにわざと受けた攻撃もあるが、直ちに命奪われるものではなかったために、消耗があるかどうかに思考を切り替えた。
だが、それは甘い考えと痛感されるくらいに光撃に終わりはなかった。更には壁に当たればその辺の爆発物と一緒で破裂したりと、辺り一帯を目眩ましのように光が覆う。極めつけは、重力で軌道を変えたとしても向かってくるところにあった。言い換えれば、コウジンは無作為に光撃を放っているでなく、ある程度軌道修正できるということ。屈折は単なる光の現象ではなかったのだ。
「ちっ………」
防戦一方、あのニシミヤライトがである。
【聖なる九将】なのにである。
(面倒なのは勿論ですが、一番はやはりアレですか………)
絶え間なく差し込まれる光撃。
それを縫うように避けたり防いだりとしてから僅かに視えるコウジンの立ち姿。
腕組みの仁王立ち。
初期位置からも、ほとんど動いてない。
(イラッときますねぇ、なにかこう………)
不動作の光撃は舐められているとしか思えない。
(埒が明きませんね。我が君の観ている手前、無様な姿も見せられません───毛頭そんな気すらありませんが、ここは一つこちらから仕掛けてみましょうか。物理攻撃が本当に効かないかどうかを───)
「“我が君の怒り”!!」
この技は通常の重力弾と大きく違う。技の中では高火力の部類に入り、溜めも不必要と至れり尽くせりの至近距離砲。より精密に高圧縮されたことで熱爆発をも生む。要するに、当たったらただでは済まない技。
爆発規模は光撃のそれを大きく上回る。
回避だってままならない。
主催者が障壁を展開しなければ二次被害があったろう。ライトの真後ろ、ジュン達の方には重力壁が張ってあるとしてもだ。
それだけの威力を真正面に回避できずに、コウジンはその身に受けた。
ライト自身も着弾をしっかりと確認している、にも拘らず────
「“不可視化の光道”」
「な……!」
反撃を考慮しての重力壁もろとも視認できない光のスジが、ライトの肩下を貫いた。
無論、反撃に転じたコウジンは無傷である。
いや、正しくは胴に大穴が空いていたが、何事もなかったかのように戻っていった。
物理無効の化け物。
エネルギー弾とて変わりない。
これが、【五連星】。
「ふふっはは、これはまた………面妖ですね!だがしかし、悪くないっ!寧ろ、丁度いぃい!!」
劣勢気味ではあったが、変態は声高らかに吠えるのだった。
◇◆◇◆◇◆
(何が丁度いいのか?)
相変わらずの腕組みを続けるコウジンは、今しがたの言動に頭めぐらせていた。
しかし、全く持って正解に辿り着けない。
考えるのも馬鹿馬鹿しく思えてくるほど。
その思考へと辿り着いたのは、ニシミヤライトの変態性、すなわち事前情報を入手していたから。仲間内から聞いていた情報に確信が持てる相手と分析できれば、これ以上懸念する必要もなし。
ただただ、圧倒的な暴力で打ちのめせば良いだけ。変わりはしない、最初から。
(決闘………という曖昧さが好かぬがな)
『いっそのこと殺したい』という意味を多分に含むが、理論上それは不可能ではない。不殺とも言われていない。相手が【聖なる九将】に属するから殺さないでもない。
では何故か?
答えは簡単、[場の形成]に重きを置いているからだ。
ゼロの復活には十分な負のエネルギーが必要。
戦争で数多の血を流し、十分な負の感情をもって形成としていたが、今回は取り決めによりそれができない。
だからこその決闘であり、これは擬似戦端。
擬似戦端を開く以上は激しい戦いを長くと続け、負のエネルギーの代替と成り得るほどの戦闘エネルギー蓄えなければならない。
この地で、大きな戦いが起こったと、痕跡を作らなければいけない。
大技即死・決闘終了になってしまっては十分な形成には至らず、目論みが無駄となるのだ。
先鋒次鋒と各決闘の勝敗が不殺で決した流れも多少なりとあるかもしれないが、やはり一番の理由は場の形成なのである。
大前提があるが故に、急所を狙わない。
近接戦闘に切り替わっても尚。
光の殴りと重力の殴り、光の蹴りと重力の蹴り。
あくまでも拮抗しているかのような演出。
(俺はライジンみたく馬鹿じゃない。攻撃をくらうなんて恥さらしするものか。確かに奴の怪我は気になるが、この変態に同じ事が出来るとも思えんしな…………ならば俺も役目を全うするまで!)
初期位置から殆ど動かずという縛りだけは最後まで貫こうと再決意したコウジンだった。
◇◆◇◆◇◆
手間取っていた。
苦戦していた。
勝機を見いだせないでいた。
どれも合っているが、どれも違う。
正しくは、役割を果たせているかどうか。
周りから見れば十分に果たしていると言えよう。
だが本人、ライトは不十分であると、名折れだと思ってしまうばかり。
(物理攻撃無効化する種族、とでも言うんですかね。いやはや困った困った。万事休すというやつですよ)
敬愛する御方に観られているなら尚更負けたいとは思わない。
しかしながら、ジリ貧状況は変わらない。
敗戦────その二文字が頭をよぎる。
(私ってこんなに弱かったですっけ?最近、怪我負ってばかりじゃありません??)
序列第四位ギルテ部下ダリィとの一戦は圧勝。
序列第五位シルフとの一戦は瀕死の引き分け。
紅蓮との一戦は別介入もあり敗戦濃厚の引き分け。
逃亡を図っていたシンとギルテとの一戦に関しては、予め用意されていた転移門を使用され有耶無耶。
この一戦、決闘も最早圧勝なんてことは絶対に有り得ない。
ダメージを与えられない上に、重力負荷も意味ないときている。
吉兆があったとすればただ1つ。
敵の腕組みが解除されていたこと。
依然として仁王立ちではあるものの、打撃戦闘に切り替えてからは腕組みが解除されていることから、能力発動に課された条件ではないと示唆。打撃一つとっても光を帯びているために間違いない。つまりは、本当に舐められていたのだ。
(だからなんだと言うのでしょう。私では五連星にダメージを与えられないのでしょうか。紫燕殿と何が違うのか気になりま────)
「がっッッ!」
よろけた。
重厚な一撃を横腹に受けてしまっていた。
激痛も走る。
光の拳は光って眩しいだけではない。
光の速度もまた体現している。
敵はもうキメにかかっているという意味でもある。
(十五分は経過した……んですかね。私では何も未解決ですが、僅かでも我が君のためになったなら良しとしましょう。負けも、嬉しくありますよ)
そう思ってしまったからか自然と笑みが溢れてしまう。
不審がられるのむも無理はない。
寧ろ、誇らしくも感じる。
「気持ち悪いな」
「ははは、ええそうかも、しれません。でもこれが私───」
これが、同性愛に執拗な重力使い。
「“崩壊世界”」
パチンッと1つ指鳴らした後、コウジンの身体が無機質の世界へと飲み込まれる。
だが、コウジンは死ななかった。
ダリィのようにはいかなかった。
ダメージ負うことなく、普通に生還した。
「異空間渡りも可能なわけですね」
また1つ、【五連星】の性質を暴いたライトは、そのまま倒れ伏す。
技の発動とほぼ同時に、光撃を受けたからだ。
防がなかったのは無論、暴くことに専念したから。
これは、ニシミヤライトの覚悟である。
中堅戦の勝敗はこれにて決したのだった。
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