第198話 一番手
天空決闘場に壇上はない。
障害物もない。
観客席もだ。
被弾は本人の実力不足とでも言うかのように、空中に透明障壁による足場が形成されただけの急繕いな決闘場。
但し、その絶対的自信を砕くのは難しいほどに障壁は固く、落下の危険性はないと実感できる。
いつも通りに欲望に忠実な創造主だったならば、『下から下着視えるんじゃないか?』とか『反射するんじゃ?』とか思ったりとしている状況なのだが、あいにく今日は忠実ではない。
代替品が用意されてるからといって安心しきってはいない。本物かどうかの心配に加えて、贈呈する気があるのかも甚だ信じ切ってはいない状況。ヒョウジンの一挙一投足を見逃さないようにしているのはその為である。
そのような状況下で、自陣の先鋒をも選出しなければならない。
相手は三武人。【聖なる九将】序列第五位シルフの部下、強すぎることもなければ弱すぎることもない。
「我は出らんぞ」
帝王ドラゴは当たり前のように首振るが、ジュンも選ぶ気は毛頭ない。最初から守護者の誰かと決めていたからだ。ドラゴが見届け人という立ち位置なのもある。
「知ってる。最初は、そうね………」
「はいはーい!わたし行くぅ!」
元気いっぱいの宣言者は夢有だ。ピョンピョンと跳ねてまでいる。
「夢有で宜しいのですか?」
「わたしを信用してよー!レーイー!」
「信用はしていますよ。ですが、向こうが能力の使用を厳禁と希望するならば、夢有では些か無謀では?」
「お子ちゃまだもん、無理に決まってるわね」
「むむむ。ででもぉぉ、わたしやりたいぃ!」
「勝敗が何に影響するでないにしても負けという結果を作るのは私達に、ジュン様に似つかわしくないかと────私は慎重に考えて良いのではと提案します。制限時間もなさそうですし…………」
「うわぁぁ〜ん、零と唯壊ちゃんがいじめるー、助けてジュンさまぁ」
ジュンは零に抱えられている。その零の背に、夢有が抱き着くように乗る。重くのしかかるとは正にこれ。
「失礼───」
このままでは唯壊もわざとその上から乗りかねないと判断した零は、鋼糸で上手に引き離しては優しく地に座らせた。
まだ、夢有は駄々をこねている。
と、そこへ────
『問題無い』との声がかかる。
振り向いた先には、先ほどから対戦者を待ち続ける三武人が一人。
「能力を使用しなければ勝てぬなら使用すればいい。こちらも、必要迫られれば使用させてもらおう」
夢有は『やったぁ』と言わんばかりに喜んでいる。
「あなた、お名前は?」
「【聖なる九将】序列第五位シルフ様の直属部下ヤツハ………剛剣のヤツハだ。見知り置く必要はない征服王」
鍛え抜かれた筋肉で軽々と大斧を持っているあたり、剛剣という名も伊達ではない様子。
「お相手さんの温情にすがり、一番手は夢有でいい零?」
「能力使用できるなら心配はありません」
「他の皆は?」
「ジュン様の決定に従います」
「我が君の判断に間違いがあるはずもありません」
「唯壊も同意見」
「あたしは反論なんて無謀しないさ」
「型は───」
「スピーー、ゴロニャン」
「………大丈夫そうね」
陽が暖かいのもあってか、型は到着早々に寝転がり、気持ち良さそうに寝ていた。
「うん、よし、じゃ、まずは夢有、いってらっしゃい!」
「はーい!いってきまーす!」
勇み良く堂々と笑顔で中央へと。
スク水少女は進み対峙する。
「決闘試合、先鋒戦開始!」
ゴングの代わりに響いたのは圧縮した空気、その破裂音。
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