第196話 透明階段
帝国城内に亜空間が繋がる。ジュンの技“新界”、組織【S】の面々が帝国の地に降り立つ。
創造主ジュンに付き従うのは、守護者の零・紅蓮・型・夢有・唯壊と半守護者に分類されるヤンとライト、それ以外の者達は各管理地域で留守番となっている。ジュンは零に抱えられながら登場。
今回の人選は純粋な暴力ではない。戦闘技術の良し悪しも違う。であれば、式や陰牢だって選ばれていただろう。
選ばれていない理由は単純。
式や陰牢になくて、他の者達にある共通点。
この場の誰もが僅かながらに所持しているモノ。
魂魄。
傷を治し、病をなかったことにできる技、“半自動治癒”発動に要する魂魄を有しているかどうか。
式は“限界突破”を使用し、陰牢は“有実の誓約”による影響で、魂魄が枯渇している。その為、怪我を負わせたくないというのが、純粋な主の気持ちなのだ。
この自己治癒を備える利点を敵側が察知しているかについて、情報が出回っている可能性は十分にあると、ジュンは推測している。
何故なら【聖なる九将】序列第四位ギルテに知られている可能性があるからだ。大乱戦の中とはいっても、式の“限界突破”が情報を持って帰るだけの諜報部などに見られていないわけがない。
そして、その情報を得たギルテがその後に負けたとて、保身を保つという理由で【聖なる九将】の誰かに報告を上げていると考えることくらい簡単にできる。
仲良し小好しでない。
一枚岩でもない。
だからといって、鵜呑みにはできないがしかし、“半自動治癒”発動できない者を戦場に立たせられないが故に、大バレ覚悟で臨んでいる。
「さてと、それで会場………決闘場は?」
「あちらのようですね、我が君」
ライトが指差すのは天空。確かに以前のような、透明色した決闘場が出来つつある。
但し、前回よりも広く頑丈に視えるのは、作り手が違うからだろう。あれがライトも称賛する透明障壁、零の一撃も難無くいなせるほどの硬質。
決闘場は首痛めるほどの真上。問題はそこまでどうやっていくか。無論、行き方はいくらでもあったのだが────
(あら、これは………)
『どうぞ』と言わんばかりに決闘場から階段が伸びてくる、否降りてくる。
透明色した階段が地にまで形成された。
「へぇー」
一行は、ジュンと零を先頭に登る、登っていく。
一番後ろのライトが進むに連れ、最後の段が消えていく。
そうしてようやく、天空に形成された決闘場へと到着する。
見渡せば見覚えある人物が一人、先に到着していた。帝国の王、ドラゴである。
「来たか」
「よく了承したわね」
開口一番は挨拶ではない。そんなもの必要ないくらいの間柄。友好国同士なのだから当然。
「ふん、我としては御免被りたかったが、民に被害が出ないなら無理に否定することもできまいて。それに同じ【聖なる九将】の頼みであると同時に征服王が受諾したのならば了承すべきと判断したまでだ」
「ありがとね友好国」
「この借りはデカいぞ、征服王」
「あら、十分貸してたような気がするけど?」
ライトの捜索や帝王剥奪の危機を乗り越えた時の話をチラつかせる。
「………ッ!」
効果テキメンだったのか、『言葉の綾だ、気にするな』と話を逸らすドラゴ。つまりはジュンの勝利。
そんな短い世間話が終わりを告げたのは突如として強い気配が現れたから。
「お待たせしたわね───」
決闘場形成者、【聖なる九将】序列第三位のクリス。そして横に立ち並ぶは合計8人。
「へぇ、まさかのご登場ね。そちら側につくんだ?」
「あたいたちは、あたいたち主の敵につく」
「へぇ、そう。それとそのいかにもって身体の人たちが、共和国に現れたってやつね」
「あー!ほんとだー!!似てるぅ!ジュン様、さすがです!」
「ふんっ」
「あとはユキさん、あなた………【聖なる九将】だった、ってこと?」
「御名答と言わざるを得ませ───いいえ、もう敬称は不要でしょう。私は序列第二位のユキ、見知り置く必要はありません。征服王を倒す者、その内の一人ですから」
「へぇ〜。能力を隠すのがお得意で………もしかしてあなたが巨人被害の?」
「さぁ、どうでしょう。下界の者に答える義務はありません」
実に冷ややかな回答。
だが誰もが寒気よりも熱を感じる。
闘いという欲望を。
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