第195話 とある場所③
ここは何処かの世界。
辺り一面は草原、どこにでもあるような長閑な景色が広がっている。
その草原を歩く者が一人。
踏まれた草土の上には大きな足跡が残る。歩幅からは、およそ人間味は感じられない。熊のような図体は確かも、全身を衣服で覆っているがために素顔はおろか性別さへも判別できない。
だがその者が、ピクニック気分で散歩していた理由でないのは、この地に居る者であれば誰もが理解する。
草原のすぐ近く、視える範囲に湖。
その中央、僅かに陸地を保っている草土の上には奇妙な壺が1つ。
禍々しさは視認できなくとも、どこか異質さを醸し出すのは、湖のど真ん中陸地に壺という設定ゆえ。
湖の畔まで歩いてきたその者も、ようやく頭のフードを脱ぎ始める。
「ふぅ……依然変わらず、か」
(少しは進んだかもしれんな)
さらけ出した顔は竜人、それも機械的な容姿をしている。ギシッギシッと、歩く度に鳴る音がより重量感を感じさせる。
暫しずっと、畔から壺を眺めていた折に、彼の傍に誰かがやって来る。機械の翼はためかせ舞い降りた者の全体的な容姿は彼と同型だが、ややこじんまり。
「定例報告です、機械竜様」
「うむ」
彼………機械竜に跪く部下は淡々と各地の状況報告を始めてく。
「惑星ベリオロンは完全に堕ちました。数による空戦法が功を奏したようです。これでこの星含む銀河系掌握は成りましたがやはり、以前の世界とは違って魔法的な要素がどこも少ないため、我々の仲間に出来る者は少ないかと………エネルギー源もしくは捕虜や研究といった使い道になると思います」
「うむ、続けて」
「はい、別次元別世界の状況になりますが、[星砕]のロキ様が向かわれた世界は小さな星ながら魔法的要素が多くとても魅力的だったのですが………」
「が?」
「───思うようにいかず半壊させてしまったようです。天変地異や災害が世界規模で起きている様子で、回復の見通しが立っていません。崩壊の一途を辿っています」
「ロッキーなら至極当然に想定できただろう。なぜ誰も付けなかった?」
「妹君らしか信用に値しないとの一点張りでして………」
「ユキとマキか、あの二人は彼の地だろう?」
「左様でございます」
溜め息混じりにも、詳細に描かれた地図を広げては印をつけていく。✕印は調査を終えた所もしくは魅力の欠片もない星を意味しており、△印はその真逆で資源の豊富さや仲間を見つけられる可能性を記しているものだったが、星砕の訪れた星の△印は上から✕印が加えられた。
「そうはいっても、この星は彼の地と同じ銀河系だろう?余波は?」
指し示す彼の地には◯印。これは最終目的地を意味している。
「問題はございません」
「余波が他の星にもあった場合、予定が崩れるのは理解しているか?」
「ご尤もです。そうなりそうな場合は機竜軍全軍をもって、その命使って余波を食い止めます」
「そうしてくれ。場の形成は内側だけでなく外側も必要だからな。問題を起こしてはならん」
「心得ております」
声荒げるのは興奮している証拠だが、機械じみた身体である以上は感情の起伏は読み取れにくい。部下の方もまた同じ。故に報告会も続いてく。
「[戦姫]と[核人]の所は?」
「御二方とも、以前報告した感じとあまり変わりありません」
「まさか………まだ遊んでいるのか!?」
「はぃ……です……」
アルトの部下は恐る恐るも前回の報告書を広げた。
「つまり[戦姫]は身内同士の戦いに明け暮れ、[核人]は絵描きをずっとしていると??」
「左様で、ございます」
力ある者は本人の趣味に興じている、ということ。
「[戦姫]ラグナ様の被害が多くて、困り果てております。これでは他の星に回す戦力が不足してしまいます」
「ラグちゃんは力を誇示するタイプだからなぁ。自分より強い者は許さないって感じの」
「……ですが、アルト様やロキ様に比べれば見劣りします」
「レイヴンくらいの実力はあるわけだから並大抵の者では勝負になるまい」
(うちの部下であれば、同レベは誰になるか………機竜軍では無意味だろうし、やはり【五連星】の誰かを────いやここは我が躾けるとするか)
「よしっ!!」
重い腰をあげた[機械竜]アルトは部下に命じたのち、その巨体を天へとはためかせ、別次元への扉を開く。
アルトの行き先は、[戦姫]と[核人]の居場所。別々の星だが、行って躾けねばならない。彼は一応、二人の上司にあたるのだから。
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このエピソードで第十章は終わりです。
いつもなら、このあと章のサブ登場人物紹介になるのですが、新キャラいない(一度でも軽く紹介したキャラは除く)ので、次回から第十一章に入ります。
もしかすれば、次の投稿は1週間後になるかもです。
今後とも引き継き応援宜しくお願いします!




