第184話 砂漠地帯ジルタフ①
被害のあった妖国グリムアステルの簡易調査を終えた翌日、ジュンは守護者の紅蓮を連れて砂漠地帯ジルタフへと赴いている。
(さぁ〜て、今日も愉しんじゃうわよっ)
ジュンの気分が高揚しているのは、昨日予定にはなかったお触りを堪能しているからこそ。この地で僅かながらに期待していても無理はない。既に、紅蓮に抱きかかえられている状態が、それを叶えていると言っておかしくはない。幼女体型で良かったと、ジュンは思うばかりだろう。
紅蓮はというと、『恐れ多いです』などと、最初は断っていたが、根負けして付き添い、ヤンとミズキの居る自警団屯所へと向かっている。
ジュンの予定通りに事は進んでいる。
だが、ここで敢えて言えば、これは単純に、ジュン本人の欲望を叶えるためだけの行為ではないのだ。
ギルテ戦を終えた直後の紅蓮は意気消沈していた。更には体調不良も申し出てきた。
あの紅蓮が、だ。
“半自動治癒”で治せない病は無い。呪いや毒も除去できる。紅蓮の魂魄値も枯渇してはいなかった。
『では、何故?』
ジュンの疑問に答えられる者はいない。
原因不明。
今回の遊覧旅行は、そんな紅蓮を気に掛けたがゆえの気分転換でもある。
(もしかしたら、以前の一部記憶消去が影響を及ぼしてるかもだけど……アレはアレで仕方なかったし、本人から言ってこないなら大した問題でないかもでしょ?だから、うん、そう……まずは、お散歩ね!天気いいし、ヤンたちに声掛け終わったら、何処かに行きましょかっ!)
屯所までの道を歩く二人。目的地に近づくに連れ慌ただしさが増すのは、この場の誰も、道行くジルタフの民までもが理解している。
天からの光撃を、この国も受けた。
妖国同様に一部地域といっても、それなりに被害は出ている。ジルタフの場合は民衆が密集する都市から離れた砂漠ではあるものの、その真下には地下遺跡がある。人的被害はなくとも物的被害は山程の可能性。ジルタフ軍が現地調査中ではあるが、都市内を警備する自警団も加勢しており、知らぬ者がいないという状況。ジュンも事前に紅蓮からの報告を受けていた。
「やっぱり、来る日を間違えちゃったかもね」
「いえいえ、そんな………本来であれば訪問の催しが盛大にあって然るべきです。ちょっと、文句言ってきます───」
「いや違うのよ紅蓮、そういう意味で言ったわけじゃないから落ち着いて。私は別に簡素でいいし、そもそも他国民に興味無いし、歓迎みたいなの不必要だからっ」
直ぐに行動しようとする守護者を諭す創造主。
何となくではあるが、いつもの紅蓮に戻りつつあると感じ取ったジュン。
「ま……まぁ、別日にするとまた日程考えなきゃだしね。私達に時間はあるけれど、世界には時間がないかもだから、今日は今日で楽しみましょう」
「はい、ジュン様。ところで、少し前に小耳に挟んだのですが、守護者の誰かに空間系の能力を授けるのですか?」
「うーん、能力というか技ね」
ギルテ戦後の方針決めのあと、紅蓮には体調の様子見と称して、また暫く休んでもらっていた。その合間、遊覧旅行とは別日に零と陰牢とで長距離の移動に関しての小会議を行っていたのだ。紅蓮が知っているように現在、全守護者の耳に議題内容は伝わっていると言っていい。
紅蓮までもが気にする理由、それは単純。純粋に強さが増すからだ。
主からの新たな賜り物という解釈もあるかもしれないが、単独増強であることに違いない。
だから全員が、授与に意欲感心を強めているのだ。
(みんな、欲しがりさんね)
しかしながら、ジュンの腹中では、候補者はまだ定まっていない。
と同時に、別な事もしようと考えている。
「魂魄の再注入………?」
「そう、ん……ね」
紅蓮が考える仕草をする度、抱きかかえられているジュンは、その胸と腕に締め付けられる。
ジュンの気分が更に高揚したのは疑いようのない事実。
「ん〜〜そう……だから、ね……前にも言ったけど、魂魄を入れるのは記憶消去とかと同様に繊細な作業になるから慎重にしないといけない。空間技の件も含めて同時期にやった方が効率も良くて、でけっこう皆戦い続きでしょ、魂魄減ってきてるよね?」
「私はそれほどですが、“限界突破”を使用した者は全て消費してしまいますから、再注入は有り難い話です。それは全員が対象で?」
「ええ、そう。枯渇していない守護者も対象にするつもりね」
「有り難き幸せ、です」
魂魄が増えれば、強さもまた増す。[強さ]を求める者にとっては特に有益な情報。
『待ち遠しくあります』の言葉に、『少し待ってね』と返したジュン。
その視界には、ジュンに手を振る仲間の美女二人と知らない美女二人が映ったのだった。
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