第183話 妖国グリムアステル②
ジュンから労いの言葉を貰った紫燕は軽く照れながらも、任された作業に集中する。光撃の痕跡を丁寧に調べ記録。持ち帰った情報は、研究室にいる博や零に渡すなどして解析してもらったり、情報をまとめたりとしてもらう、そういう手筈に変更されたと主のジュンから承っている。
今ここでの採集が無意味と思えるほどに、敵の情報は明らかかもしれないが、情報は沢山あるに越したことはない。
それが守護者の務めであるし、ひいては自国から離れた地域を管理する者の務めと紫燕は解している。
だが、里の樹連合への常駐は出来ない。軽快に移動できる紫燕であってもだ。そもそもの許可が降りてないのもある。
この長距離移動を可能にするのは、創造主の“新界”。
ここまでの移動も、ネルフェール国と妖国グリムアステルの国境に、“新界”でもって空間を繋げたからだ。その後、無断で妖国を横断し、里の樹連合へと入り、また妖国へと戻って来ているわけだが、そうでもしないと、古城から里の樹連合まではかなりの距離がある。紫燕一人でも、到着には最低数日かかる見立て。
属国先が増えるのは世界征服が目前であるのを意味するが、管理問題がまた再発してしまうというもの。一応は問題を考慮して──近日中かは不明──“新界”に近い空間移動術を守護者の誰か一人に付与する話が持ち上がってはいる。
(誰になるのかな?私だったら嬉しい、な……)
効率良く管理するために、遠方の管理者に、というのは至極当然も、紫燕は自分ではないと思っている。
(たぶん、零か紅蓮かな……?)
行き来する空間と空間を繋げれば良いのだから、移動する本人である必要もない。
それに、中遠距離で戦う銃使いの紫燕が空間移動術を手にしてしまえば最強に近い存在となってしまう。能力バランス的に弱い方とは言っても、やはり自分は不適任と、どうしても思えてならない。
(あっ、陰牢かもしれないっ!)
謙遜、自信の欠如。
傍から見れば、そう思われるかもしれないがしかし、紫燕の特性とは、やはり真面目さ・丁寧さ・器用さ。どれも随一とはいかないし、受動的に捉えられて致し方ないが、彼女も確固たる信念をってやり遂げる。
だから、ミスはない。
これまでも、これからも。
「───ムム厶ッ、これは?」
地面に幾つも振り注いだ光撃とは別の場所──誰も居ない──そう遠くはない修道院の近くで、覚えのある足跡を見つけた。
声を聞いて、ジュンも近くへとやって来る。
「何か、見つけた?」
「はい、最近どこかでこれと同じモノを見たんですよね……」
記憶を辿れば、夕暮れ……森……共和国……
「あっ!?」
思い出したのは、苦い記憶。
「獣っぽい足跡ね」
「はいっ、これ確か……ライジンって名乗ってた者と同じです!間違いありませんっ!!」
「これでつまり、更なる新手勢力の線は消えたわね。お手柄よ、紫燕。うんうん、偉い偉い」
「いえ……あっはい、お褒めいただきありがとうございます!嬉しいです、感無量ですっ!!この上ないですっ!!」
「そこまで言うこと??」
「です!!」
幼女姿の創造主に、目一杯抱きつく少女。
ジュンも、『コホンッ』と咳払いしつつ、伸ばした手で頭を撫でては腰辺りも擦る。
天井から差し込む陽光、これは恐らく祝福………なのだろう。
作品を読んでいただきありがとうございます。
作者と癖が一緒でしたら、是非とも評価やブクマお願いします。




