冒険者ルーク 202
しまったな。
片方の角しかないドラゴンでも、歴戦の猛者の傷のように見えてしまうな。
だが、角が二本無ければマヌケに見えないか?
「貴様ッ、残りの角も斬るつもりか!!」
焦ったアシュレグが身動ぎする。
どうやら、気づかぬ間に声に出していたようだ。
俺は再び、ニヤリと笑う。
「俺の見解に間違いが無ければ、トカゲには角が生えていなかったはずだが」
「我を愚弄するか、猫如きが!!」
巨体を揺らすアシュレグ。
俺は空中に放り出される。
——が、駄竜の眼前でその姿は留まる。
俺のオリジナル魔法、ラグランジュ・ポイントを発動させたのだ。
確か、宇宙用語で安定した場所を指したはずだ。
そう、俺はいかなる場所にも一分間だけ、強固な足場を作ることが出来る。特筆すべきは、この能力は限定的だが俺が作成したラグランジュ・ポイントの半径三メートル以内は時間と空間の干渉を受け付けないという物だった。
つまり、余程のことが無い限り、この足場が崩壊することはないのだ。
空中に浮く、レビテーションの魔法も存在するが、それでは即座に攻撃に転じることが出来ない。
ゆえに、俺はふんばりの効く足場を構築する魔法を生み出したのだ。
ふんばりと言っても、決して温泉の名ではない。
「猫如きが調子に乗るなッ!!」
激昂したアシュレグから、ファイヤー・ブレスが放たれる。
俺はとっさにトラロック・リジルで、ドラゴン・ブレスを斬り裂き、無効化した。
炎が霧散し、竜炎は跡形もなく消え去る。
「なっ!? 我がブレスを無効化しただとッ!?」
お前のブレスは無効だ。
とんでもないスキルで、異世界を放浪しながら飯テロを仕掛ける主人公の名だ。
話が逸れた。
「世の中には、竜よりも強い猫が居ると知れっ!」
さぁ、お仕置きの時間だ。
トカゲを痛ぶる趣味はないが、奴は俺の逆鱗に触れた。
たった一人の肉親をバカにされて、ここでキレなきゃ妖精の名折れだ。
父上の名誉は、俺が守る。
それが、王族な猫の宿命だ。




