冒険者ルーク 201
カツン、と乾いた音を立ててアシュレグの片方の角が地に落ちた。
「トカゲに角なぞ、必要あるまい」
俺はチェシャ猫が如く、ニヤニヤと笑った。
自称・竜王は自身に何が起きたのか自覚するのに数分を要した。
(バカな! あの猫の姿が見えなくなった途端、地面に我が角が落ちた——ということは、この我が感知出来ぬほどのスピードで頭上を占拠し、角を斬り飛ばしたというのか!?)
ケット・シーはスピードに特化した種族ではない。どちらかと言うと、人間界の猫のように愛玩動物的な立ち位置であるのだった。
その妖精猫である俺が目で追えぬほどの速さで、アシュレグの頭部に乗り、奴自慢の角を斬り飛ばしてやった。
アシュレグはその事実を本能的に理解していたが、奴のプライドチキンはそれを認めるのを拒んでいた。
しまったな。
掛け声を忘れていた。
ヒャッハー、とか叫んだ方が良かっただろうか?
(普通のケット・シーではない。認めたくはないが、あの下等な種族から、特殊個体が発生したとしか考えられん——)
特殊個体はグフの例を見れば明らかだ。
ゴブリンの上位種レッドキャップの身体に、魔獣グリフォンの能力が宿っている。
俺がその事を知るのは、大分先の話になる。
まさか、グフの奴が精霊王エンリュミオンと、グリフォンの姫との間の子だとは夢にも思わないだろう。
だが、グフがなぜレッドキャップとなってしまったのかは分からない。
魔獣と精霊の混血——まだまだ、色んな謎がありそうだ。




