目に光をともす11
ヒカリの真剣な運転のおかげで僕らはギリギリのタイミングで宇宙センターの見学ツアーに滑り込んだ。
受付で名前を言えば、すんなりと見学者と書かれた名札と宇宙センターのパンフレットやちょっとしたグッズが入った袋を渡された。
ヒカリはさっき埋葬した猫のことで少し落ちていたが、もらった袋の中身を覗いては宇宙センターのロゴの入ったペンだのコースターだの取り出して喜んでいるようだ。
こういうところ、ほんと子供っぽい。
僕の視線を感じたのか、ヒカリがふとこちらを見る。
「どうしたの?ハル。」
なんでもないよと答えようと思ったとき、僕らのツアーを率いてくれる引率のお姉さんが、ようこそ宇宙センターへ、と説明を開始した。
さすがに、国を挙げての施設だというだけあって、設備は圧巻だ。
はじめに案内されたのはビジターセンターのような場所。いわゆる科学館みたいなところだ。宇宙開発の歴史やスペースシャトルの開発話なんかを「楽しみながら学べる」施設と言うにふさわしいだけの展示物で満載だった。
丸いドーム状の天井を見上げれば、歴代の人工衛星のレプリカがぶら下がっている。
宇宙なんて、僕の日常生活には無縁な場所だが、こんなところに来ると否応なくワクワクしてしまう。幼い頃はロケットが好きで、よく宇宙関係のテレビを見たり本を読んだりしていたことを思い出した。
だめだ、今日は仕事で来てるんだから。
そう思って気を引き締め、ふとヒカリを見ると、ヒカリは僕以上に目を輝かしている。
そういえば、ヒカリはSFが好きだ。休みの日、家でSFを読むヒカリをたまに見る。アーサー・C・クラーク、ジェームズ・ホーガン、小松左京…。宇宙ものに限らず、よく読んでいる。ヒカリの部屋の本棚にはしっかりとSFコーナーが設けられているぐらいだ。
展示物のひとつに、スペースシャトルの内部が実物大で再現されたものがあって、ヒカリはもはや大はしゃぎだった。
任務を忘れてやしないかと一瞬僕は不安になる。
ツアーは1つの建物で終わらず、有名なH-IIロケットの実物を見せてもらったり、敷地内をぐるりと一周したりした。肝心の発射場はさすがに車の中からの見学で、あの建物が…、この建物が…と大雑把な説明をされただけであったが、やはり実物を見ておくことは重要だ。
ハヤトから送られた図面を見て、どこに何があるかは知っていたが、実際に目の当たりにすると、より一層頭の中の地図が鮮明になる。
発射のための司令塔も見学コースに含まれていた。ガラス越しにコンソールを眺める。たくさん並ぶモニターの中に、端には敷地内の監視カメラの映像ももちろんあった。
ツアーは1時間ほどで終了し、最初に来たビジターセンターで解散になる。
一緒に回っていたツアー客たちは、最後にお土産も見ていくようだ。
ハヤトたちにもお土産、と言って買い物を済ませたヒカリを引っ張って、僕らは一度外に出た。僕は車を発射場を一望できる丘へと走らせた。
見晴らしのいい丘から発射場も望む。
発射場のすぐそばの建屋。そこは、打ち上げを控えたロケットの最後の調整をするところで、そこに明日打ち上げられる人工衛星もあるはずだった。




