20章 選挙まであと少し
夜遅くまで続いた最後の握手会も終わり、選挙まで後少し……
ブレアは街を歩いていた。
通りがかりに大学生のグループが前から歩いて来て呼び止められた。
「ブレアさんですよね。僕たち魔法同好会です」
「お、魔法好きなら投票してね」とブレアは笑顔で彼らと握手を求めると大学生は手が震えていた、見ると全員が泣いていた。
「ありがとう!」
「僕たち、魔族が襲って来たのをみんなで見ていて、あの時絶望して殺されるぐらいならみんなで死のうと……」
「その時、ブレアさんが現れて、あのもの凄い魔法を。僕たち感動して涙が止まらなくて……本当にかっこよかったです! 死ななくて良かった、魔法は最高です!ブレアさんは最高です。もし僕たちが結婚して子供が出来たら絶対に語り継ぎます」
「この子のお兄さん、魔族に殺されたんです」別の女の子がブレアに告げる。
「兄は剣士でした、複数のモンスターに同時に攻撃されて……もし魔法が使えたらと」
「お兄さんの仇は取るよ。魔王は必ず倒すね」
ブレアは予備の魔法の杖を召喚すると、彼らにプレゼントした。
「僕たちブレアさんを全力で応援します!頑張ってください」
◇
ラフロは病院に来ていた。
ラフロは一人の大怪我をした少女を魔法で回復させた。だが少女のお礼は言ったものの、どこか元気がなかった。
「どうしたの、まだ痛いのかな?」
少女は首を振ったが黙ったままだ。
「ラフロ様、この子は隣の国からお父さんが連れて来たのです」
「あの、僧侶の少ない国ね」
「そうです、この子と父は魔族に襲われて二人とも大怪我を負ってしまいました。なんとか逃げ出したのですが、治してくれるところがなくこの国まで父が怪我をしたままおんぶして運んできたのです。この子はなんとかなりましたが、父親はこの子を病院の前まで連れてきて、そこで命が尽き果ててしまったのです」
「そうだったのね……」
「お姉ちゃん、私、大きくなったら僧侶になる。そして、みんなを助けるんだ」
「いい子ね、立派な僧侶になってみんなを助けてね」
「うん、でもお姉ちゃんは凄いね、僧侶なのに強いんでしょ、魔族をやっつけてくれたって聞いてるよ」
「でも、魔王がまだいるから倒さなきゃね」
「私も強い僧侶がいいな、戦いも出来るし、みんなを治すことも出来るって凄いよ。お姉ちゃん頑張ってね、絶対応援してるから」
「ありがとう、頑張るね」ラフロはそう言うと、首にかけているアミュレットを少女にかけた。
◇
パークは孤児院に来ていた。オモチャを配って子供たちが遊んでいるのを見ていると、パークがいるのを聞きつけて若いカップルがやってきた。
「パークさんから頂いたキューピットの矢で私たち結婚するんです」
「お~それはよかった、おめでとう!」
「元々、僕は彼女が好きだったんですけどねー」彼氏が笑った。
「実は、僕たちも孤児院で育ったんです。ここにいる子供たちもみんな親を魔族に殺されてしまって、孤児院で育ててもらったんです」
「パークさんが魔族を倒している姿を見ました、本当に美しくて天使が戦っているようでした、僕は感動して涙を流してしまいました。パークさんのおかげで孤児院に来なければならない子供たちが減っているんです」
「でも、まだ魔王が残っているから倒さなきゃね」
「パークさんがいなかったら、僕たちはどうなっていたのか。感謝しかありません、パークさん頑張ってください、応援します!」
「ありがとう、頑張るよ」パークはそう言うと記念に矢を一本プレゼントした。
◇
リンドーは踊り子だった時にお世話になった劇場に来ていた。劇が終わって帰ろうとしたとき、声をかける人がいた。
「リンドーさん、私は病気で薬が買えず寝たきりだったとき、リンドーさんがくれたお金で薬が買えて働けるようになったんです。こうして子供と劇を観にくることも出来るようになりました」
「それは良かったね」
「山道を歩いていたら魔族の毒攻撃をくらい、やられてしまったんです。そして働けなくなり、お金がなくなってしまい、一家心中まで考えていたときにリンドーさんからブロマイドと一緒にお金を頂いて……あのときは涙が止まらなかったです」
「今は忍者になってさらに人助けをしていると聞いております。リンドーさんのブロマイドは神棚に飾っていつも拝んでいます」
「別に、拝まなくてもいいよ、魔族と魔王ははやく倒さなくちゃね」
「頑張ってください、応援しています」
「ありがとう、頑張るよ。もし魔物に襲われたらこれを投げてね」リンドーはそう言って手裏剣をプレゼントした。
選挙や握手会を通して人と触れ合うことで、人々の苦しみや悲しみを知ることとなった。メンバーは人々のために魔王を倒さねばと言う気持ちが強くなり、選挙が近づくにつれてセンターになりたいという気持ちは薄れていった。




