19章 最後の握手会
最後の握手会前夜。
私たちはイケメンズと一緒に酒場で飲み会をしている。
「まさか、リンドーちゃんが忍者に転職するとは思わなかったな……」ブレアちゃんがしみじみ言う。
「忍者ってなかなかなれないんでしょう」ラフロちゃんが目を丸くする。
「うん、でも盗賊からはなりやすいんだって、大忍者ハッタリ様に認められないとダメなんだ」
「よくすぐなれたね」
「凄いんだよ、ハッタリ様の情報網は。私がジョブチェンジのお寺で『忍者になりたいです』って言ったらもう目の前にいたの、それで部下と一緒にお願いしたら忍者の巻物くれて、ジョブチェンジ出来ちゃった。たまたま部下が持ってたチクワがハッタリ様の大好物だったらしくて、あげたらご機嫌になっちゃって何でも言うこと聞いてくれたの、本当に良かった」
「リンドー盗賊団からリンドー衆だね。全国10万人の子分も喜んでるんじゃない」
「うん、これからは誰にも知られずに良いことをするって、みんなにアピールするんだ」
◇
イケメン勇者も仲間に謝って、また元のパーティーに戻った。イケメンズは今夜にも出発するそうだ。
「えっ!?行っちゃうの……」私とブレアちゃんとパークちゃんの声が揃う。パークちゃんは少し涙目になっている。
「ええ、僕たちはお姉さまたちの戦いを見て勇気が湧いたんです。僕たちも魔王を倒すためのお役に立ちたいので」
「何も今夜出発しなくてもいいのに……」私はガッカリしてしまった。
「商人くんがあんまり後にすると別れが辛くなるからって」商人くんは真剣な眼差しでパークちゃんを見つめている。
「お願いがあったんだけどな……」私はつい小さくため息をついてしまった。
「えっ?」イケメンズが私を見る。
「な、なんでもないよ……頑張ってね……」
「じゃ、アイラちゃんがセンター取ったらなんでもお願い聞きますよ」イケメン勇者が私を見つめた。
「えっ!?」
「僕はアイラちゃん推しだから」
イケメン勇者がイタズラに笑った。
(セ、センター取ったら……な、なんでも……)
最後にみんなで乾杯して別れた。明日は最後の握手会だ。
◇
握手会は大変なことになった。
街の住民ほぼ全ての人が私たちをひとめ見ようと集まったのだった。
「アイラちゃん、またその鎧!?」ブレアちゃんに突っ込まれた。
「た、だって、前の鎧は壊れちゃったから……」
メンバー全てのところに大行列が出来た。
ブレアちゃんはとくに若者に人気で、若者は魔法が大好きな人が多かった。魔法使いのコスプレをして握手にくる人も多かった。
パークちゃんは女子に人気だ。空を舞う天使のような姿に憧れた女子は多かった。
「素敵!、天使みたい!」と目をキラキラさせた女の子に、以前アイドルに教えたような正確なファンサをあげている。
ラフロちゃんはオジサマだけでなく、小さな子供にも人気で、少森拳法はカッコいいみたい。ラフロに治療された子供たちに少森拳法を習うのが流行っている。
リンドーちゃんの忍者は言うまでもなく、街だけでなく外国にも人気だ。あちこちで忍者のポーズを決めている人たちがいる。
私のところに相変わらず修行僧の方たちが沢山来てくれた、みんな「究極の鎧」を着た私と写メを撮りたいみたいなので一緒に撮った。戦士は全世代に浸透しているので全世代の人と握手をした。一人で戦った姿を見たおばあちゃんやおじいちゃんに「偉かったよ」と褒められたのも嬉しい。
色々な人に一人で頑張ってくれてありがとうと言われると、力が湧いてくる。木の棒を聖剣にみたてて振り回す子供が可愛いかった。
握手会の途中で、運営にクレームが入り、一度ずつなら全てのメンバーと握手が出来ようになった。街を救ったメンバー全員は大人気だ。そのため、握手会は夜まで続いた。
街の人たちの笑顔と私に対する声援を頂くと元気がでる。中には会った途端に感動で泣き出す人もいて、戸惑ったけど私も気持ちが通じ合ったようで、なんか感動しちゃった。
来週末はついに選挙の日、そして魔王を倒しに出発する。街の人たちは誰に投票するか凄く迷っているみたい。
私を応援してくれる人のためにも、頑張ってセンター取ってご褒美もらおう!
五人の最後の熱い戦いが始まる。




