2章 町へ戻って
私たちは魔王の城を後にし、王様のいる城下町へ戻って行く。
どうしてもと言うので、盗賊のリンドーちゃんがセンターで前衛となった。このあたりのモンスターは私たちがあらかた片付けてしまったのであまり遭遇しなかったが、それでも幾度か戦いになった。
前衛にいるため、防御力もHPも少ないリンドーちゃんは何度か死にかけてしまった。その度に僧侶のラフロちゃんが回復の呪文をリンドーちゃんにかけるのだが、気のせいか呪文を唱え始めるまでに若干のためらいがあるように見えた。
なんとかして、町へ到着して門をくぐり抜ける。町では魔王を倒せそうな私たちを一目見ようと、沢山の人々が王様のお城までの道にそって集まり人だかりを作っていた。
その人だかりの真ん中をリンドーちゃんをセンターに置いて私たちは歩いて行った。リンドーちゃんは得意そうに時折ナイフをかかげたり、人々に手を振ったりしていた。
「ねぇ……まだ魔王倒してないんだから、みっともないよ……」
アーチャーのパークちゃんが引きつった笑顔でそっとリンドーちゃんに呟く。魔法使いのブレアちゃんはリンドーちゃんが得意気なのが気に食わないのか機嫌が悪そうだ。すると突然、町の人々の一人が私たちの前にひざまずいた。
「お願いです。魔王を倒してください、平和を取り戻してください!」
祈るように私たちにお願いをしてきた若者をリンドーちゃんがすっと駆け寄り、その手を取って最高の笑顔で微笑みかける。
「私たちに任せてください。リンドーとこの者どもが必ず魔王を倒し、平和を取り戻してみせましょう」
「勇者様~!」若者は号泣していた。
「チッ……勇者じゃなくてドロボー……」ブレアちゃんが小さく吐き捨てるように舌打ちをした。
◇
ほどなくして、私たちはお城に到着して王様に謁見した。
私たちは王様の前でひざまずいた。
「おぉ! この度はもう少しで魔王を倒せるところまで行ったそうじゃな。大変だろうがこの国のために魔王を倒してくれ。褒美はなんでも取らすぞ、お主たちは永遠に語り継がれるであろう」
「王様、もし私たちが魔王を倒したらどのように語り継いで頂けるのでしょう?」
センターのリンドーちゃんが問いかける。
「ねぇ、ちょっとあつかましいんじゃない……恥ずかしいよ」ラフロちゃんがヒソヒソ声でリンドーちゃんをたしなめる。
「街の中心部の大広場に巨大な銅像を建築しよう。そして、我が国の歴史書に永遠に刻まれるであろう、教科書にも載せるぞ。そして大聖堂にも巨大な絵画を飾ろう、偉大な芸術家レオナルド・ミレランジェロに君たちの勇姿を描かせるよう依頼をするぞ」
「凄っ!」メンバー全員が驚きの声を上げてしまった。
するとブレアちゃんが立ち上がり一歩前に進み出て真ん中に移動した。王様の前で手のひらと拳を合わせた。
「王様、この大魔法使いブレアが必ずや魔王を倒して見せます。王と民衆の平和のため、この命捧げさせて頂きます、この仲間たちも私を助けてくれますのでご安心を」
リンドーちゃんはブレアちゃんのマントの影に隠れてしまった。リンドーちゃんは下を向いてイラついている。
(何が大魔法使いだよ……バカじゃないの。肝心なところでいつも、MPなくなったーとか泣いてるくせに……)
パークちゃんも立ち上がり、背中から矢を一本取り出すと王様に近づき矢を丁寧にお辞儀をしてから渡した。
「王様、この矢が私たちの誓いでございます。必ずや魔王の心臓にこの矢を突き刺してご覧に入れましょう。私たちメンバーの想いが矢に込められ、この伝説のアーチャー、パークが最後にみんなの想いのこもった矢を放ち魔王を貫くのです」
「おぉ!頼もしいぞ! 伝説のアーチャー、パーク殿。そなたから頂いたこの矢は我が王の間に飾っておこう」
矢を持った王様が立ち上がり、矢を壁に掛けようとした時、ラフロちゃんが立ち上がり、首にかけていた十字架のネックレスを外すと王様に駆け寄り、王様の首にかけた。
「王様、これは私たちが魔王を倒すまで王様を守ってくれるアミュレットでございます。この奇跡の僧侶ラフロの守りが王と民を魔王から救うでしょう。ラフロさえいれば魔王など怖くありません。神とラフロと私をお手伝いしてくれる仲間が王を守るのです!」
「王様を王とか呼び捨てすんなよな!」
リンドーちゃんがつい叫んでしまった。リンドーちゃんも王様に駆け寄りほっぺにキスをする。
「これは盗賊のキスでございます。キスをした相手との約束は必ず果たすとの誓いが込められているのです。魔王はこの大盗賊リンドーにお任せください」
「おい、盗賊のキスとか聞いたことねーぞ!、そんな文化ないだろう!」
ブレアちゃんも叫ぶと王様に駆け寄り、やはり王様にキスをする。
「大魔法使いブレアにキスされた者は永遠に幸せになるとの伝説があります。マジカルキッスと呼ばれております」
「ちょっと、ずるーい」
パークちゃんも王様に駆け寄り、怒涛の勢いで10連続のキスを浴びせた。
「このキスのように伝説のパークが魔王を撃ち抜いてみせましょう」
ラフロちゃんも顔を赤くしながら、
「わ、私も負けないんだから……王様、祝福のキッスです!」
ラフロちゃんはついに王様の唇にキッスをしてしまった。
チュ、チュチュチュ……
4人にキス攻撃をされて、「この歳でこんなに女の子にキスされるなんて、歳はとってみるものじゃのう」王様はすっかりニヤけてご機嫌だが、王の間にはすっかり乾いた空気が流れてしまった。周りの騎士やお付きの人たちは唖然としている。
ひざまずいたまま、私はどうしていいか分からず下を向いていた。
私はとにかく早く帰りたい……と思った。




