17章 アイラの勇気
中間発表が終わった。
一位になったのでイケメン僧侶さんにご褒美を貰いに行ったら、「そんな鎧だと集中できない」と言われ断られてしまった。せっかく喜んでもらえると思ったのに最悪……
やっぱり修行僧と一人前の僧侶だとセンスが違うみたい。寂しく今日は寝よう、他のメンバーは落ち込んでいるらしくどこかへ行ってしまった。
◇
次の日、「究極の鎧」はやめて、防具屋さんで普通の鎧を買ってイケメンさんの所へ行ったら留守だった。
みんなもどこか行っちゃうし退屈だな、街の外にでも行ってモンスター退治でもしよう。
街の外へ出ると誰かがスライムと戦っている、苦戦しているらしいので手伝ってあげた。協力してスライムを倒すと男の子はお礼を言った。
(イ、イケメン……)
「ありがとうございます、僕は勇者です」
「あ、あのイケメンパーティーの人たちが言ってた子かな?」
「そ、そうなんです、情けないことに僕、スライムが生理的に嫌いで……なんかブヨブヨしてる感じが苦手で。もう無理と思って逃げ出してしまったんです」
「でも、トラウマ払拭のため頑張って戦ってるんです」
「偉いね〜じゃあ他のモンスターは戦えるね」
「いや、他のモンスターもみんな苦手で……」
(おいおい、結局全部ダメじゃん……)
「生まれ持ってビビりの性格なので……」
「勇者なんだから頑張らないと」
「みんなからそう言われてプレッシャーが嫌で、情け無いけど……」
その時、空が突然暗くなったと思ったら、大地を埋め尽くす一万を越すおびただしい数の巨大悪魔軍隊アリが遠くに見えた。そして、悪魔軍隊アリの後からキラキラと激しい光が登った。
「あれは、魔バレンボウ将軍!」
黄金に光輝く魔バレンボウ将軍が現れた。
サンバのリズムに乗って魔バレンボウ将軍は街へ向かって襲いかかってくる。
イケメン勇者はそれを見ただけで腰を抜かしてしまった。
全ての魔族の頂点に君臨する恐怖と畏怖の象徴、預言者ノストラダマスに人類を滅亡させる黄金の闇と言われた魔バレンボウ将軍が不思議なダンスを踊ると悪魔軍隊アリの目の色が赤く変色しスピードが増した。
「先にボスをやらなきゃダメだ!」
私は聖剣を抜いて十の神技「風林火山」から風の型に構える。
「疾きこと風のごとく!」そう叫んで聖剣を素早く5回振ると、巨大なカマイタチが5本悪魔軍隊アリの海を切り裂いた、炸裂音のような風の帯で大量のアリたちが吹っ飛ぶ。アリたちの海が割れ、魔バレンボウ将軍への道がひらく。だが、アリたちはせっかく作ったこの道を拒むように無数の蟻酸を飛ばしてきた。雨のように降りかかる蟻酸にたいして、林の型を使う。
「静なること林のごとく!」聖剣を超高速で回転させると全ての蟻酸が地面に落ちた。手にしている聖剣が燃えるように赤い色に変化し、火の型を作る。
「侵略すること火のごとし!」巨大な火の玉と化した私は中央の軍隊アリを蹴散らしながら魔バレンボウ将軍を突き刺し、魔バレンボウ将軍に炎が燃え移る。最後は山の型で、魔将軍の頭の上に立つと聖剣を真下に突き刺す。
「動かざること山のごとし!」 串刺しにされた魔将軍が断末魔の悲鳴を上げる。
そのとき魔将軍が爆発し金銀の輝く紙吹雪が舞い散る、その無数の紙吹雪が刃と化し私を襲う。とっさにアテナの盾を空に向けると盾は青い光を放ち紙吹雪が溶けてゆく。だが撃ち漏らした紙吹雪が私に襲いかかってくると鎧の所々にヒビがはいった。やはり、普通の鎧では防御力が足りないのでHPがどんどん削られてゆく。
すると空中に舞う残りの金銀の紙吹雪が集まり小さな魔将軍になった。魔将軍は口からネバネバの甘い粘液を私にむかって吐きかけた。アテナの盾で受け止めたが一部が体にかかり甘い匂いが立ち込める。その隙に魔将軍は逃げていった。
魔将軍は去ったが、その甘い匂いに釣られるように、残った全てのアリたちが狂ったように私に向かって襲いかかって来た。
複数攻撃が苦手な私だが、いくつかの複数攻撃が出来る十の神技を繰り出す。
「雷光剣!」剣を高くかかげると6匹の巨大な雷獣が周囲のアリたちを吹っ飛ばす。
「紫皇剣!」聖剣が輝き星の光が軍隊アリの大群を撃ち抜く。
「十字剣!」大地を大きく十文字に割り道を塞ぎ、その割れ目に軍隊アリが飲み込まれていく。
「長い戦いになるな……」
フゥーとため息をつくと私は聖剣を持ち直した。
私の体に鋭利な紙吹雪が沢山刺さったままだ、だいぶHPを減らしてしまったがまだ大丈夫。
イケメン勇者が心配そうに私に近づいたので私は期待を込めて、
「ねぇ、回復魔法は使える?」と聞いた。
「ヒールで良ければ使えます」
「良かった! この敵を全部やっつけたら全力で私にお願いね……それまで、やられないように隠れていてね」
◇
戦いは一日半続いた。残った魔軍隊アリも数十匹になった。ただ私のHPもあと少し、ほぼ限界だ。息が荒く立っているのがやっと。油断した隙に一匹のアリに咥えられてしまった。
「キャー!」意識が遠くなる。
「アイラちゃん!」イケメン勇者が無我夢中で私を咥えたアリの背中に剣を突き刺す。アリは驚いて私を地面に落とした。私は体勢を整えると最後の力を振り絞って残りのアリたちを全て倒した。
「アイラちゃん大丈夫? やったよ! 全部倒したよ! 今、回復させるからね」
「ありがとう、危ないところを助けてくれて……全力でおねがい……」目の前がだんだん暗くなり意識が遠くなる。
イケメン勇者が「ヒール」の魔法を使おうと両手を伸ばした時、どこからか雷が落ちて勇者は吹き飛ばされた。
遠くから黒い津波のようなものがやって来る。おびただしい数の悪魔や魔族たち。その中央に大神官デービスがいる。やつが勇者に雷を放ったのだった。左には赤い火星マー魔少佐が1万体もの魔ロボットザクザクを引き連れてこちらに向かってくる。そして右には魔バレンボウ将軍が10万匹もの魔蜘蛛を連れてやって来た。更に、20万もの、ありとあらゆるモンスターが大神官デービスに従い走ってくる。
「そ、そんな……」吹き飛ばされたイケメン勇者が絶望する。




