15章 白羽の矢
パークは市場に来ていた。
中間発表は散々だった、まさかの不正行為とみなされてせっかくの苦労が水の泡となってしまった。
得票率は8%……あんなに頑張ったのに絶望的な気分で酷く落ち込んでいる。
(刀折れ矢尽きの気分だな……)
気分転換にショッピングに来て、何か掘り出し物を探してみる。マーケットでは珍しい矢とか防具とかが見つかることもある。
市場は沢山の人で溢れていた。質の良い矢と可愛いネックレスがあったので買った、ちょっとだけ気持ちが晴れて来た。さらに何かないかとウロついていると、あのゴーレムに踏まれたイケメン商人が前から歩いて来た。
持ちきれない程の沢山の箱を持って歩いていたが、パークを見つけると挨拶をして来た。
「先日は大変お世話になりました。ラフロちゃんに回復魔法をかけて頂いたのでこうして歩くことが出来るようになりました」
「良かったね、でも戦場でお金拾ってたら危ないよ」
「すみません、僕にとってお金は命より大事なものなので……」
パークは商人はしょうがない人種だなと呆れた。その時、走って来た通行人がイケメン商人とぶつかって、沢山の箱が地面に落ちてしまった。
「キミ、買いすぎじゃないの、持ってあげるよ。どーせ暇だし」
パークは地面に落ちた箱を何個か拾った。
「すみません、すぐ近くなのでそこまで手伝ってもらっていいですか」
イケメン商人が荷物をもって行った先は孤児院だった。
「あっ! お兄ちゃんが来た!」
子供たちが走ってくる。沢山の荷物は子供たちへのプレゼントだった。パークはあっけに取られていたが、持っているプレゼントを置いた。
「わざわざ、すみませんせっかくなのでお茶でも飲んでいってください」孤児院のシスターがパークにお礼を言う。背中を押されイケメン商人とテーブルに座る。
「実は僕、この孤児院の出身なんです。この可哀想な子供たちに喜んでもらいたくて。始めは覆面レスラーで稼いでいたのですが、お金にならないので商人になりました」
すると、小さな子どもがパークのもとへ走ってきた。
「お姉ちゃん、アーチャーなんでしょ! かっこいい! それに比べてこのお兄ちゃんはダメダメなんだよ。お金持ちの息子でお金が多すぎて家が狭くなっちゃうからお土産買って来るんだって。ちゃんと働かないとダメだよね」
イケメン商人は「ハハハ!」と笑った。
(落としたお金を拾っていてゴーレムに踏まれたのに……)
「それで、キミの稼ぎはどうなの? あのパーティーじゃたいして稼げなそうだけど」
「そうなんです、来月はこの孤児院が借金を払わなくてはいけないらしくお金が必要で……」
すると、商人はボロボロになった一枚の紙を広げた。それは古い地図だった、何やら古い字でなにか書いてある。
「今日市場で見つけた宝の地図です。ちょっと高かったけど絶対本物だと思うんです。これから翻訳をしたり解読しなくちゃいけないのですが見つけ出してみせます」
すると、小さな女の子がイケメン商人の元へやって来た。
「ねぇ、本当にこのお家が無くなっちゃうの? この間、怖い大人のひとが沢山来てこのお家を取り押さえるとか言ってたけど……」
「心配しなくても大丈夫だよ」と言ってイケメン商人は頭を撫でた。
「お前、イイ奴なんだな」とパークはイケメン商人に言うと買ったばかりのネックレスを女の子にあげた。
「ありがとう、お姉ちゃん!」女の子は喜んで走って行った。
「ありがとうございます。パークちゃんは優しい人ですね」
イケメンがパークの手を取りお礼を言う。
「お、お礼なんて……」パークは照れてしまって、ポッと頬を染めた。我に帰ったパークは、
「なるほど事情はわかった、でも今から解読してたら来月には間に合わないよ。ちょっとおいで」
パークは宝の地図を手に取るとイケメン商人と孤児院の庭にでた。宝の地図を地面に広げると背中に持ち歩いている矢筒から真っ白い矢を取り出した。
「これは『平和と奇跡の教会』をトロルから守った時にお礼にラフロちゃんに送られた矢なんだ。奇跡を起こすと言われる世界に一本しかない矢で、欲しかったからお菓子と交換してもらった」
そう言うとパークは弓に奇跡の白い矢をつがえて空に向かって放った。白羽の矢は空を舞いやがて落ちてゆき地面に広げた地図に刺さった。矢は棒の部分を残し羽がハラハラと落ちた。
「さあ行ってみよう、この矢が示した所へ奇跡を信じて!」
◇
パークとイケメン商人は白羽の矢が示して場所へむかって山道歩いている。
「僕がゴーレムに踏まれて街に運ばれているとき、空を見たらパークちゃんが飛んでくる炎の隕石を撃ち落とすところが見えたんです。空に舞ったパークちゃんは天使だった。僕が人生でみた最も美しい姿でした。世界で一番綺麗だった」
「い、いや~照れちゃうな……ハハッ!……」パークは赤くなってしまう。
イケメンは真剣な眼差しで続ける。
「誰が何と言っても世界一美しい女神です、僕は感動で涙を流しました。そんなパークちゃんと今一緒にいられて幸せです。しかもパークちゃんがこんなに優しくて素敵な人だとは」
「あ、ありがとう……」
ほどなくして白羽の矢が刺し示した場所についた。
矢が刺した場所には小さな木で出来た看板が立っていた。
「大命中! おめでとうございます。お宝はこの下です、お好きなように使ってください」と書いてある。
掘ってみると美しい宝飾の宝箱に金貨が沢山入っている。それを見るとイケメン商人は涙ぐんでしまった。
「良かったね!」パークがイケメンの肩を優しく叩く。
すると、イケメン商人はパークを見つめた。
「パークちゃんありがとう、本当に奇跡だ。これで孤児院は救われるよ、実はパークちゃんを初めて見たときから思っていたことがあって……」
イケメンが拳を握る。
「パークちゃん好きです!」
(えっ!?)
「一目惚れです、僕も信じられないけど自分の気持ちに嘘がつけないんです。もちろん、パークちゃんはこれから世界平和のために魔王を倒さなくてはいけないので、僕と付き合って欲しいという訳ではないんです。ただ気持ちを伝えたかった、選挙も頑張って! 僕の大好きなパークちゃんが一位になれるように応援するから」
「い、いや、別に今、彼氏とかいないから……付き合いたいのなら……その……」
「ごめんね、突然変なこと言っちゃって。僕をパークちゃんに会わせてくれた奇跡に嘘がつけなくて、これからは影から応援するよ」
(そんなこと言われたら選挙頑張っちゃおうかな……)
パークにはイケメン商人が突然光ってみえた。
その時、腕に痛みが走った。見ると、毒矢が刺さっている。あの孤児院にいたシスターが屈強な男二人を連れていた、手には吹き矢が。
「奇跡をありがとうね。借金は私が推し活で使っちまったんだよ! でもこのお宝で遊んでくらせるよ!借金取りさん三人で山分けだ、やっちまって!」
いかにも悪そうなムキムキの男二人が襲いかかってくる。パークは体が痺れて動けない、意識が遠くなる……
(ダメ……体がしびれて……油断しちゃった……)
人相の悪い二人がイケメン商人に襲いかかる。
「ローリングソバット!」
「タイガードロップキック!」
「タイガースープレックス!」
「グワッ!」
イケメン商人は元プロレスターだけあって強かった。あっという間に屈強な男二人をやっつけてしまった。残ったシスターは慌てて逃げ出して行った。
「パークちゃん、大丈夫!?」
イケメン商人はパークを抱き抱えた。パークは痺れて動けない、息も荒くなっている。
(苦しいけど、こうして抱かれてると気持ちいいな……近くで見るとマジでイケメンだな……)
「パークちゃん、ゴメンね。仲間の僧侶から教えてもらった回復魔法を使うね。僕、これしか魔法使えないんだ、僧侶みたく上手には出来ないけど全力でやってみる」
(私にために……嬉しいな……やん!……どうしよう、抱かれているとドキドキする……もしつき合ったら私が疲れちゃったらおんぶしたり、もし怖い夢みたら添い寝して、お願いしたらご飯を食べさせて、たまに一緒にお風呂入ったり……いやんエッチ……)
「いやん……恥ずかしい……」
「えっ?」
「な、なんでもないの、ありがと……優しいのね……」
「じゃあ行くね。『全力ヒール!』」とイケメンが叫ぶ!
ピンクの電流のようなものがパークに突き刺さり体を駆け抜ける。パークが「はうっ!」と声を上げると、激しく痙攣を起こし、そして気を失った。
「あれ……パークちゃん大丈夫!? パークちゃん!」
やっとパークが目を覚ます。息が荒く、まだ手足が痙攣している、そしてトロンとした目でイケメンを見つめると、
「……YES!……も……もう一本……射てるよね……」




