11章 中間発表まで
第一回握手会から数日が経った。
魔軍曹ビリーブートとの戦いから戦士アイラの意識はまだ戻らなかった。
ここは病院の一室、ついにアイラが目を覚ますと眼の前にはラフロがホッとした表情で笑っている。
「ここは……?」
「病院だよ。アイラちゃんずっと眠ったままだったんだよ」
「良かった……」
ラフロちゃんの後にはブレアちゃんとパークちゃんが座っている。二人もホッとしたようすで笑顔がみえた。
「ありがとう……みんなが助けてくれたんだね」
「やっと起きたな、これでまた選挙活動が始められるよ」ブレアちゃんがみんなを見渡す。
「アイラちゃん、自分のステータス知ってる?」ラフロちゃんが私を見つめる。
「どういうこと?」
「アイラちゃんのステータスはイケメン耐性ゼロなんだよ。だから、イケメンから回復魔法なんて受けたら大変なことになっちゃうの。私たちの中でイケメン耐性を持ってるのは私とリンドーちゃんだけ、だから他のみんなも気をつけてね」
「もし、仕方なく回復魔法を受けるときは、一日一回までだよ、約束ね。私も小さい頃はイケメン耐性が低かったから、メンズ地下アイドルのCDを買いすぎて破産しかけたんだ。イケメンは怖いねー」
(えっ、一日一回しかダメなの……無理……)
目を覚ましてすぐに衝撃的なことを言われて困惑する私の前に、知らない男の人が一歩進み出て自己紹介をする。
「新しく就任した大臣です、よろしくお願いします。アイラさんも明日から活動しても良さそうですね。では、明日から選挙活動の再開を宣言します。次の握手会と中間発表まであまり日にちがありませんが頑張ってください」
私が眠っていたため、公平を期すために選挙活動は中止になっていたのだ。可哀想なことに前回の握手会に私が出なかったためにクレームが殺到して、前の大臣は辞めさせられたそうだ。新しい大臣が今度の握手会は必ず出るようにと念を押してきた。女房と子供がいるんでと哀願された。
コンコン……とドアをノックする音が聞こえるとリンドーちゃんが入ってきた。
「アイラちゃん意識が戻ったんだって、良かったね!」
「なんだ、そのカッコ!」パークちゃんが叫んだ。
リンドーちゃんはピンクのヒラヒラのアラビアンなマスクのようなものをして、全身もヒラヒラのピンクの洋服を着ていた。ちょっと見るとても綺麗なクラゲのようにも見える。
「なにそれ、変装?」
「私ね、踊り子にジョブチェンジしたんだ」
「えっ!?」全員が驚き声を上げた。
「私、思ったの、やっぱり盗賊じゃセンター取れないって。イメージ悪すぎなんだもん」
「覚えてる?山の上のお城で首が8本のドラゴン倒して王様からご褒美貰ったとき。私が一番王様に近かったから私が受け取ろうとしたの、そしたらラフロちゃんが『盗賊が受け取ると悪いことして貰ったみたいだから私が受け取るね』って言って、ラフロちゃんが王様から受け取っちゃったの」
「ご褒美を受け取る時、新聞記者とか写真メチャクチャ沢山撮ってて、羨ましくて私凄くショックだったの……」
「ご、ごめんね……そういうつもりじゃ……」ラフロちゃんが焦って謝る。
「いいの、だって盗賊ってやっぱり悪いことして稼いでる人たちだもん。だから、これからは踊り子として一から頑張る! それから盗賊だったときのスキルが半分くらい残るんだって、なので宝箱は開けられるよ。そうそう、今夜ライブあるから良かったら観に来てね」
「おいおい、リンドー盗賊団の部下はどうすんだ? たしか世界中に10万人はいたよな」ブレアちゃんが問いかける。
「もちろん私は引退だから、一斉メールでバイバイって言ったよ。組織は誰か引き継いでくれるといいんだけど、どうでもいい、もう関係ないし。人相悪い人ばかりだから、『この命、リンドー様にいつでも捧げます』とか言われてちょっとキモかった」
病室に呆れた空気が漂う……
「そう言う訳で大臣さん、選挙ポスターの張り替えお願いね。踊り子リンドーで~す」
「この街のみんなを私の踊りで幸せにするんだ!」
リンドーちゃんが踊り子にジョブチェンジして、果たして私たちは魔王を倒せるのか少し不安がよぎったが、やる気に満ちているリンドーちゃんを見て何も言う事は出来なかった。
第二回握手会と中間発表まであと三日。今度は握手会に出なくてはいけないので、その間にモンスターが復活しないと良いのだけど……




