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追放詩人のおっさん、弟子が大魔法を使い始め聖女姿で詩聖として世界最強の流派を築いてしまう 〜SPIN YOUR LYRICS !〜  作者: kinpo


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第152話 ワシ贅沢する


ワシは真紅の皇后衣装を身に纏い、学食の厨房へと足を踏み入れた。

厨房にいた料理人たちの動きが、一斉に止まる。

彼らは、ワシの姿を見るなり、全員が硬直した。

 

「お、おお……!」

「なんて……なんて眩しすぎる装束なんだ!」

「まるで、伝説の『風と土の国の女帝』だ……!

この世のものとは思えないオーラだ!」

 

ワシの姿を見た料理人たちの間に、戦慄にも似たざわめきが広がった。

ワシは美少女聖女の外面で、威厳を保ちつつ頷く。

 

(ヤメロ!

そんな目で見ないでくれ!

ただの学食のパートタイマーじゃ!)

 

「ちょっとセベちゃん!

何アレすごすぎなんだけど〜!」

「今日、マジで料理するの?

そんな神々しい人に包丁持たせるとか、バチ当たるって!」

 

料理人たちは、セベスに詰め寄った。

 

「だから期待しててと言ったっしょ!

どうっすか、オレシーのセンス!」

 

セベスは鼻の下を擦りながら得意げに胸を張る。

その時、厨房の奥から、恰幅の良い男が飛び出してきた。

料理長である。

 

「聖女様、ご出所おめでとうございます!」

 

料理長は、満面の笑みでそう叫んだ。

 

「出所?」

「出所って何よ!」

 

ワシの背後に控えていた女子生徒たちの中から、リリアとニーナの声が響いた。

 

「師匠に向かってよくもそんな口を!許せませんっ!」

「マジ、ムカつくし!

ウチらの師匠を、刑務所帰りみたいな言い方すんなし!

マジ、ぶん殴るし!」

「料理長、わたくしの拳が、師匠への不敬を許しませんわ!

これは信仰の鉄槌ですわ!」

 

女子生徒たちは、瞬く間に料理長に群がった。

リリア、ニーナ、エレナ、スーザン、パッツイらが入り乱れ、料理長は悲鳴を上げる間もなく、ボコボコにされていく。

 

「うう……師匠のいない間、どれだけ寂しかったか、分かってんの?

二度と師匠を悲しませないでね……♡」

 

スーザンは料理長に抱きつきながら(抑え込みながら)、ドスの効いた声で威嚇する。

 

「はわわわ〜、料理長さん、危ないですぅ〜!

あ、私がぶつかっちゃった〜!

ごめんなさい〜!」

 

パッツイはドジって料理長にヘッドバットを食らわせ、泣きながら謝罪した。

 

「や、やめろー!

ご出所じゃなくて、ご無事のご帰還だー!」

「こ、こらやめんか!やりすぎじゃろ!」

 

ワシは慌てて女子生徒たちを制止する。

 

(早く止めろ!料理長死ぬぞ!

ワシのまかないを作ってくれる貴重な人材じゃ!)

 

数秒後、生徒たちがワシの言葉で手を止めると、料理長は顔を腫らしながら床に蹲っていた。

 

「聖女様……。

ご、ごめんなさい……」

 

半泣きになった料理長を、副料理長らしき男が肩を抱き起こす。

 

「聖女様、申し訳ありません!

今日は俺たち、聖女様のご帰還祝いにいろいろ用意したんで、思いっきりお願いします!

あと今日は立食形式ですんで……」

 

料理人たちが、食材の前に立ち、献身的な眼差しでワシを見つめる。

ワシは頷いた。

 

「うむ、分かった。

そうじゃのう……」

 

ワシは真紅の袖を翻し、食材の山を見据える。

 

(この衣装で、まかない飯なんて作るわけにはいかんじゃろ!

それに、せっかくのボーナスで気分が高揚しとるんじゃ!

立食形式か……。それなら満漢全席じゃ!

これしかないじゃろ!)

 

ワシはニヤリと笑った。

普段のまかないとは格が違う、最高の、そして最も手間のかかる料理。

今日は一発で決めるぞい!

ワシは両手を高く掲げた。

その姿は、完全に異国の女帝そのものだった。

 

「ふはは!ワシが皇帝じゃ!

この膳はワシが天下を取った証なのじゃ!


――四海と八方の至宝よ、このおっさんの前に最高の栄華を広げよ〜♪

アワビ、フカヒレ、ツバメの巣!

海の贅の限りを尽くして一斉に並べるのじゃあ〜!

獣の力と大地の恵みを全て濃縮し、強靭な生命力を皿に宿すのじゃあ〜!

手間暇と歴史が織りなす、究極の技術で全ての皿を黄金色に輝かせたまえ〜〜♪

酒は永遠に尽きず、酔いは頭の冴えに変わるという奇蹟を見せてくれ〜!

ワシの胃袋のブラックホールに収まるまで全ての味が劣化せぬようにするのじゃあ〜!

給料の心配や嫁の顔など全てを忘却の彼方に追いやるのじゃあ〜!

口に運ぶたび、昇天するほどの至高の快感を脳に直接流したまえ〜〜♪

この食の権力と栄華が明日のワシの力となるのじゃ!

食卓の王はこのおっさんじゃあ〜!


【おっさんの食帝即位エンペラー・フィーディング】!」

 

 

ワシの詠唱が終わると同時に、厨房の熱気が凝縮された。

ワシが選んだ食材と、料理人たちが用意した最高級の材料が、ワシの指示に従い、まるで手品のように皿の上に現れ始めた。


巨大な皿には、黄金に輝く『仏跳壁ぶっちょうへき』のスープが満たされ、

その隣には、繊細な細工が施された『北京ダック』のローストが鎮座する。

獣の力を濃縮した『東坡肉トンポーロー』や、数十種類の野菜と海鮮を使った『龍鳳呈祥ロンフォンチェンシャン』など、見たこともない豪華絢爛な料理が、厨房の長テーブルを埋め尽くした。

これはもはや、単なる料理ではない。

権威と欲望の象徴、最高の美食の祭典である。

 

「おおおおお!」

「なんて……なんて荘厳な料理なんだ!」

「この香りは、世界を統一できる!」

 

男子生徒たちの歓声が、厨房全体を揺らした。

 

「まるでアート(芸術)だよ!

ミーの食欲が爆発しそう!

この黄金色の輝きは、ミーの瞳の美しさにも匹敵するね!」

 

エストラードは自己愛を交えながら料理を激賞する。

 

「これは神の領域……!

この世の全てのオタクは、この食の聖典を前にして跪くしかありません!

僕のライフポイントがゼロになりそうです!」

 

イルムは眼鏡をクイッと上げ、至高の料理にオタク魂を燃やす。

 

「オーマイガー!

このクオリティはもう、レジェンド(伝説)だぜえ!

フカヒレ、アワビ!

これぞワールド・クラス(世界級)のメニューだぜえ!」

 

メガデスがエセインテリぶり全開で料理の豪華さを力説する。

 

「師匠、最高でござる!

この豪奢な料理こそ、教会との戦に勝利した『食の戦利品』でござる!

拙者、感涙でござる!」

 

シルビアは興奮のあまり、愛用の模造刀の柄に手をかけた。

 

「(ゴクリ)……あの仏跳壁、あれはきっと、師匠と誰か(セベスやペーター)が奪い合った愛の結晶……!

壮大なライバル関係の結末が、この皿に詰まっているのね……!」

 

カイリーは、豪華な料理の裏に隠された濃厚な人間関係のドラマを妄想し、悦に浸っている。

 

「師匠、最高であります!

その威厳、そしてこの満漢全席……!

完璧な司令官像であります!

光栄であります!」

 

ペーターは完璧な敬礼と共に、ワシへの崇拝の念を爆発させた。

女子生徒たちも、目を輝かせながら豪華な料理に見入っている。

 

「師匠、すごいです!

これこそ、教会が作り出せなかった真の救済の料理ですねっ!

この一口で、魂が満たされますっ!」

 

「マジ、ヤバいし!

写メ撮りまくりだし!

これ、インスタ映え、いや、マジ神映えするし!

絶対、バズるし!」

 

「さあ!

今日はみんなで思う存分食すが良いぞ!

ワシの無事の帰還を祝い、そしてワシの胃袋に敬意を表するのじゃ!」

 

(よっしゃあああ!

これを食えば、今日からの激務も乗り切れる!

遠慮はいらん!

胃袋が限界だと叫ぶまで食い尽くす!)

 

料理は学食に運び込まれ、全校生徒と共に、ワシは騒がしくも楽しい食事の時間を過ごした。

ワシは、己の役割を無事に終え、給料とボーナスと、そして最高の食事を得たことに、心からホッとするのであった。


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