表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放詩人のおっさん、弟子が大魔法を使い始め聖女姿で詩聖として世界最強の流派を築いてしまう 〜SPIN YOUR LYRICS !〜  作者: kinpo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

153/153

第153話 ワシ夢の中で有給休暇を取る


 

満漢全席のごとき豪華絢爛な昼食を終えた後、

ワシは皇后衣装を脱ぎ、いつもの聖女服に戻っていた。

学園長室で今後の日程について確認をしていると、サイラスは疲労の色を浮かべながら言った。

 

「聖女様は数日の間、心労が絶えなかったはずです。

お疲れでしょうから、今日はもうご帰宅されて、ゆっくりお休みください」

 

(うむ、そうじゃな。

本来ならそうすべきじゃ。

家に帰って、布団に潜り込みたい……)

 

ワシはそう内心で激しく同意したものの、

口から出たのは、聖女としての責任感に満ちた言葉だった。

 

「いや、大丈夫じゃ。

ワシは、己の生徒たちの顔を久しぶりに見た。

皆の笑顔は、何よりの栄養剤じゃからのう」

 


(なぜか帰る気になれん!

数日休んだら、職務に穴を開けたと思われ給金に響くのではないか?

この不安は、何じゃ?

生徒愛か?いや、社畜根性じゃ!)

 

ワシは、己の深い社畜根性が、休息という正当な権利を拒否している事実に、自己ツッコミを入れた。

その時、セベスが学園長室のドアを開け、満面の笑みで入ってきた。

 

「師匠っ!

午後のリフレッシュの件、お願いするっす!

生徒たちも、師匠のお昼寝詩魔法を心待ちにしているっすよ!」

 

「お昼寝……」

 

(そうじゃ、まだ仕事があったんじゃ!)

 

「う、うむ。そうじゃな。

では、皆をリフレッシュさせた後、ワシも午後の授業に参加するとしよう」

 

ワシは集められた生徒たちのへ向かい、目の前に立った。

そして、詠唱する。

 

「風と土の国の叡智よ、我が声に従い、安らかな眠りを誘いたまえ〜♪



――【睡眠詩魔法ナイト・ルラバイ】!」

 

ワシの歌うような詠唱と共に、教室に優しく澄んだ魔力の波動が満ちた。

昼食の満足感と、ワシの魔法が相まって、生徒たちは次々と突っ伏して眠り始めた。

 

「わあ……気持ちいい……」

「おやすみなさい……師匠の腕の中……」

 

生徒たちは、皆、幸福そうな寝息を立てる。

セベスは感動の眼差しでワシを見ていた。

 

「さすが師匠!

午後の授業が、最高の『癒やし』の時間になったっす!」


 

(うむ。これでよし。

全員眠らせておけば、エレナの座学が滞ることもなかろう)

 

ワシはそのまま教室の最後尾の席に座り、エレナの座学を静かに聴き始めた。

当然、ワシも昼食と疲労で限界だったため、数分後には生徒たちの後ろで居眠りをしていた。

 


 

授業が終わり、夕刻になる。

ワシは職員室で、目を潤ませたエレナと別れの挨拶を終えた。

 

「聖女様、本当にありがとうございました。

生徒たちの寝顔を見ていると、わたくしまで心が洗われるようでした……」

 

(ワシも寝てしまったが、まあ無事だったようで何よりじゃ)

 

学園の門へ向かうと、セベスと、リリア、そしてセリーヌが待っていた。

 

「師匠!

お帰りなさいっす!

今夜はアーヴル男爵家で、盛大にパーティーっすよ!」

 

「師匠っ!

セリーヌお姉様も、師匠のご帰還を心から待っていたんですっ!」

 

 

「聖女様……。

わたくしセリーヌ、師匠様が教会の汚れた手からご無事にご帰還されたこと、心より感謝申し上げます。

師匠様の清浄な魂を守り抜くためなら、わたくしは、

教会の枢機卿どもを皆殺しにする覚悟でおりましたわ……?」

 

セリーヌは深く頭を下げ、全身から黒いオーラのような狂信を放っていた。

 


(こ、怖い!

この姉妹、リリアはただの崇拝じゃが、セリーヌはガチじゃ!)

 


 

アーヴル男爵家。

リリアとセリーヌの実家は、それほど豪華ではないが、温かい雰囲気に満ちていた。

当主であるアーヴル男爵と、ブローニュ夫人が、笑顔でワシを出迎えてくれた。

 

「アサリーヌ殿!

ご無事のご帰還、心から嬉しく思います!」

「まあ、聖女様。お疲れでしょう。

さあ、どうぞ、どうぞ」

 

ワシは美少女聖女の外面で優しく挨拶を交わす。

 

(ふう、無事に帰って来れて良かった、ホッとした)

 

夕食のテーブルには、昼の満漢全席を再現した豪華な料理が並べられていた。

料理は、男爵家専属の料理人が、ワシのレシピを元に必死に作ったものだという。

 

「まあ!

この『仏跳壁』の芳醇な香り!

聖女様のご帰還には、このくらい盛大でないとね!」

 

ブローニュ夫人が優しく微笑む。

夕食中、リリアとセリーヌは、昼間のワシの皇后衣装での登場、

そして料理を詠唱する際の勇ましい姿を、アーヴル夫妻に熱弁した。

 

「お父様っ!お母様っ!

師匠が詠唱した『おっさんの食帝即位』の詩!

あれを聞いた時、私、世界の王がこの食卓に降臨したと思いました!」

「わたくしは、師匠の真紅の装束を見て、この国の歴史が変わることを確信いたしましたっ!

師匠は、もはやただの聖女ではなく、この世界を統べるべき女帝ですっ!」

 


(やめろ!盛るな!

そんな大それたことを言うでない!

あれは、ただの食い意地じゃ!)

 

アーヴル男爵は優しい眼差しで、リリアたちの熱狂的な話を聞いていた。

 

「ははは。

アサリーヌ殿の魔法は、全ての料理を詩にしてしまうのですな」

 

ワシは、家族の温かい雰囲気と、美味しい満漢全席の再現に包まれ、久しぶりに心の底からリラックスできた。

 


 

食事が終わり、ワシは寝室へと向かった。

 

(さて……今日一日の激務、そして精神的な疲労。

これで全て終わりじゃ)

 

ワシは、豪奢だが清潔なベッドに横たわった。

 

(ここは、牢獄じゃない……!)

 

数日間、教会の硬い石の寝床で寝ていたワシにとって、

このフカフカのベッドは、世界の全てにも優る至高の宝だった。

 


(おお、なんて素晴らしい!

給料も出る!

ボーナスも出る!

美味い飯も食った!

そして、フカフカのベッドじゃ!)

 

ワシは、給金への執着と、フカフカのベッドへの感謝に満たされながら、安らかに眠りに落ちた。

夢の中では、ワシは念願の『有給休暇』を満喫していたのであった。


以上で第1部完結となります。お付き合いいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ