大きな木
てんとう虫と並んで歩く。
「お嬢さん、夢はありますか?」
「夢かぁ…。」
少し考える。
今は自分が誰なのか、どうしてここにいるのかもわからない。
「自分自身を知ること…かな。」
我ながら抽象的だと思った。
笑われてしまうだろうか。
「大切なことですね。」
てんとう虫は決して笑うことなく答えた。
虫の表情の違いなんてわからないけど穏やかな表情をしているように感じた。
春の風にふかれながら他愛もない話をして歩く。
てんとう虫とはさっき初めて会ったはずなのにどこか懐かしく、心地良さを感じた。
「大きな木はもうすぐですよ。」
長いと思っていた道のりは思っていたよりあっというまだった。
大きな木の真下につき、てんとう虫に別れを告げる。
「お嬢さんの夢が叶うように祈っています。」
そう言うとペコリと頭を下げて去っていった。
目の前の大きな木を見つめる。
方角を見失わないために登るか、安全をとって横を回るか。
少し悩んだが、木を登るのはいい案ではないだろう。
危ないし登りきるまでに体力がなくなってしまうかもしれない。
横を回る決意をし、右側へ進んだ。
しばらく歩いているとお腹が鳴る。
そういえば今日はまだ何も食べてない。
気づくと余計お腹が減る。
木から離れすぎるのも良くないが何か少しでも食べ物を、と周囲を探しながら歩く。
どこを見ても背の高い草ばかり、木の実一つ見つからない。
どれくらい歩いただろうか、辺りが茜色に染まり始めていることに気がついた。
必死に食べ物を探すあまり、自分が今どのあたりにいるのかすらわからなくなっていた。
目印をつけずに歩き始めるのは失敗だった。
木を背もたれにしてしゃがみこむ。
「これからどうしよう…お腹もすいたし、道もわからない。」
こんなことなら木の上を目指した方が良かっただろうか。
いや、木の上を目指していても途中でお腹がすくだろう。
それにもうすぐ夜になる、木の途中じゃ危ないだろう。
明日の朝、また食べ物や方向を探せばいいんだ。
とにかく今は夜が明けるのを待つしかない。
そんなことを考えていると、また遠くから声がした気がした。
「今日はそろそろ切り上げるぞー!」
耳を澄ますと確かに聞こえた。
誰かいるのかもしれない。
私は立ち上がると声のする方へと歩き出した。




