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どうやら、猫の体ともお別れらしい

 お約束の展開スタート。

 夜這いなんてさせませんよ。

「おはようございます」

「……予想通り過ぎて言葉も出ねえ」

「起きたらいないと思ったラ……」

「助けて下さい」


 翌朝目覚めたロラン達を出迎えたのは、ロープで雁字搦(がんじがら)めになったブサの端を握って引き摺るメイドの姿であった。幸いにして、ブサに怪我は無いようだ。……チッ!


「一応聞きたい。何があった?」

「深夜に私の部屋に忍び込んで来ようとしたところ、途中の罠に引っ掛かったようですね。お返ししますか?」

「此処に来た理由でもあるので、そうして貰いたい」


 本音ではいらない、と言いたい。凄く言いたい。



 * * * * * * * * * * *



「おやまぁ! ロラン、久しぶりじゃないか! 君がこんなところまで来るなんて珍しい! 相変わらずの顔の凶悪さだね! もし良ければ僕の実験に協力して、ホムンクルスに精神を移してみないかい!? 後ろの方達もどうだろうか? 安くするよ!!」

「その件で話がある」


 なんかやたらとハイテンションなのが来た、と思えば件の錬金術師である。ちょっとうざい。

 そして、さらっと実験台になる事を求めるな。気の良い八百屋の兄ちゃんか?

 そんなテンションには慣れているのか、サラッと流して本題を切り出すロラン。此処に来た目的とブサの事情、ついでとばかりに自分が錬金術で作って欲しいものもサクサクと話していく。この手のタイプの人間は、相手のペースに入ってしまうと話にキリが無いのでこちらのペースに持ち込むしか無いのである。


「ふむ、その猫をねぇ……」

「とりあえず、可能か不可能か。それと危険性はありのかを知りたい」

「う~ん……人からホムンクルスってのはやった事があるんだけどね。動物から人にってのはやった事が無いなぁ。しかも、猫の肉体も保持しないといけないんだよね?」

「それは必須でお願いします」

「うわっ!? ちょ! 顔怖いから近付かないで!? んー、ちょっと考えてみるけど少し時間が欲しいかな?」

「頼む」


 本人を目の前にして「顔が怖い」とのたまったダミアンの勇気に乾杯。アンリは凹んだが、サミュエルは大笑いである。やめて差し上げろ。

 大笑いしているサミュエルにも「君も顔怖いじゃん」とあっさり告げたダミアンの強心臓よ。笑ってたサミュエルの顔が引き攣る。

 彼の性格を知っているロランには想定内だ。何しろ、初対面の時に「やぁ、君すっごく顔怖いね! 言われない!?」なんて言われたのだから。余計なお世話だ。それがどうしてこうなったのか、腐れ縁は続くものである。錬金術の腕は良いんだよ、腕は。


 そのまま数日、町と研究所を往復しつつ適当に依頼をこなす。その間ブサはダミアンの元でジョゼと共にお留守番である。美少女メイドが居るから文句は無かろ? もっとも、ダミアンにとってはブサは立派な研究資料なので、メイドと戯れる時間は無いのだが。メイドはジョゼが貰っていきますね?


「ヴニャ(近付けさせないわよ)」

「モフモフですね」

「俺のメイドちゃん……!」

「いや、僕のだからね! 僕の(・・)メイドちゃんでぇっす!」


 ちなみにホムンクルスです。美少女メイドホムンクルス、基本ですね。


「イケメン死ねっ!」

「そしたら君は猫のままだねぇ! あはは~」

「うっぜ! こいつうっぜ!!」


 ある意味ブサの妄想を体現した男である。美少女メイドとイチャイチャ。ハーレムも良いけど、二人っきりというのもまた良し! エロ猫め。だからもてないんだ。


「ダミアン、どうだ?」

「や、おかえり! とりあえずは色々術式を変えてみて、何とかいけそうかな。ただし、ほんとの基礎のホムンクルスにしかならなさそうだけどね!」

「というのは?」

「戦闘力を持たせるのは無理って事」


 ブサのチート願望、完全終了のお知らせ。基礎のホムンクルスだとどう頑張っても雑用しか出来ない。ハーレム? 最初から不可能ですよ。猫ハーレムなら出来るけど!!


「んで、どうする? オプション付けられない分安くするし、実験台を提供してくれるんだからその分さらに割引するよ!」

「「「「「実験台……」」」」」


 言い切った。


「だって、僕からしたら丁度良い実験台だもの! 動物から人の精神を抜いてホムンクルス、なんてそうそう出来る機会なんて無いよね!」

「こいつ頭いかれてんじゃね!?」

「今さらだな」


 ブサの発言は間違ってない。紛う事無くダミアンはマッドです。


「それでそれで!? どうする? やっちゃう!? やろうよ! ね!?」

「ご主人様落ち着いて下さい。お客様方がドン引きです」

「あ、ごめん」


 ドン引きです。


「……危険は無いんだな?」

「計算上はね! とはいえ、絶対に無いとは言い切れないなぁ。そもそも、実験で想定外の事が起こるのなんて当然だし!」


 悪びれもせずに言い切る彼は間違い無くブサの同類。すなわちゲス。ブサと違うのは、対価さえきちんと払えば仕事はこなす事か。ブサの場合だと金だけ貰ってトンズラである。ブサの方がゲスだった。元詐欺師だもん、仕方が無いね。


「……ちなみに、ホムンクルスの基礎ってどんな顔だ?」

「ん? こんなの」


 ブサの気にするところはそこです。せめて顔が良ければワンチャンあるかもしれない。

 ペラリと見せられたのは所謂(いわゆる)カタログのようなものだ。そこからオプションを付けていって、最終的な値段を出すらしい。

 ちなみに、基礎の顔は何種類かある。


「……普通、だナ」

「普通ですね」

「特に目立ちはしねぇなぁ」

「普通の方が良いけどな」


 最後のロランの呟きが胸に刺さる。普段から顔でびびられているからこそ、普通の顔に憧れるのであった。イケメンで無くとも構わない、せめて普通の顔で……! ロラン達の切実な願い。


「素体は既に出来上がりのものがあるから、ソレで良ければ安くするよ」

「イケメンにカスタマイズは」

「値段超! 跳ね上がるよー」

「却下で」


 無駄金は出しません。財布を握るカーチャン強し。涙目になっても駄目なものは駄目なのです。


「妥協するか、猫のまま生きるかどちらかだ」

「……妥協します」


 だって、背後のジョゼの目が怖い。ブサが「猫のまま生きる」と言ったら、間違い無く即行で襲われます。


「よっし! じゃぁ、そこの実験台君にはこっちに来て貰おうかな!」

「せめて取り繕え」

「本当に大丈夫なんだろうな!?」


 ダミアンに連れて行かれた先は、如何にもといった雰囲気の研究室だ。壁際に立ち並ぶガラス管の中にはホムンクルスと思しき胎児のようなものが浮いている。

 そしてブサの目の前にある大きなガラスポッドの中にいるのが、ブサがこれから移り変わる事になるホムンクルスだろう。もちろん男性体である。


「全裸……」

「そりゃそうでしょ?」


 何を気にしているのだか、と不思議そうにブサを見るダミアン。彼にとってはもはや見慣れたモノです。もちろん好き好んで見たい訳では無いのだが。


「はーい! それじゃぁ、これを被ってねー! ちょっとビリッとするけど、命に別状は無いから安心してね!」


 欠片も安心出来ない。


「ちょっと待て! 心の準備がぁぁぁぁ!!」

「はーい、ガポッとねー!」


 手早く台に拘束され、頭に被せられたのはヘルメットのような物。詳しい説明を省いてザックリ説明すると、精神を抜き取る為のものだとか。

 今さらながらに体が震え出す。だがもはや、後戻りは出来ないのだ。そもそも拘束されているので逃げられない。


 そのまま視界が暗くなり、意識が薄れ……


「良い奴だったよ、お前は……(多分)」

「安らかに眠レ……(俺も今日は早く寝たイ)」

「寂しくなるなぁ……(ネタ的な意味で)」

「体の方は心配しないで下さいね!(今の内にモフモフを……!)」


 お前ら、末尾に小声で本音入れるの止めてやれ。泣いちゃうだろ。


(てめぇら、絶対に見返してやるんだからなぁぁぁぁ……!!)

 出たと同時に出番終了のダミアン。ブサとは同族嫌悪。決して相容れないタイプ。


 ちなみに、町中でやらかしたのは強引な実験勧誘&ホムンクルスのデザイン協力要請(女性限定)。すなわち、「全裸になってくれないかな!?」とひん剥こうとした。そりゃ追い出されるというものです。


 明日は投稿最終日となりますので、時間がちょっと変則的になります。閑話は全部で3話。なので、12時に最終話。1時間置きに閑話投稿して完結とさせて頂きます。よろしくお願い致します。

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