↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/45

37話

 



「おらぁっーーー!!!」


 間合いの外から伸縮自在の愛刀『錆丸』を鋭く突く。騎士の持つ大剣の届かない超遠距離からの連撃は、まるでフェンシング選手の猛攻のようだった。


 刃先は見事に騎士の顔面へ命中する。しかし、相手の着込むフルプレートアーマーは強固で、巨体をほんの一歩後ろへ逸らすのが限界だった。


「ウヲーーー!!」


 準之介の舌打ちと、騎士の重厚な咆哮が重なり合う。


 距離を縮め、剣を振り下ろす騎士に対し、準之介は間一髪バックステップを繰り出した。絶妙に間合いを外された騎士の剣は、虚しく空を切る。


 すかさず、長さに優れる錆丸の突きを叩き込む。だが、それもまた甲冑に阻まれ、硬い金属音を響かせるだけに終わった。


(勝てない……っ!)


 準之介は即座に悟った。


 こちらの攻撃が一切通じない一方で、敵の剣撃の速度は目にも留まらぬほど疾く、空気を容赦なく切り裂いていく。一撃でも食らえば終わりだ。


 それは、初撃で斬られた背中の激痛が雄弁に物語っていた。特注の愛鎧『夏天丸』で守られているはずの背中を肉ごと切り裂かれたのだ。それはつまり、相手の威力が鎧ごと自分を叩き斬るレベルにあることを意味していた。攻撃力も防御力も、大人と子供ほどの差がある。


 視界の端に、頭部を失ったカツジの骸が嫌でも映り込む。


「おらぁーーーー!!」


 準之介は怒声とも叫びともつかぬ声を敵に向かって上げたあと、突如として敵に背を向けて走り出した。


「フォオオオ!?」


 戸惑う騎士の異様な声が背越しに遠ざかっていく中、死に物狂いで洞窟を駆け抜ける。


『もしヤバいな、死にそうだなって思ったらすぐに逃げるんだ。命があれば、また挑戦できるんだからな』


 脳裏に蘇るカツジの教え。


 あの騎士は攻撃力も防御力も間違いなく自分より上だ。しかし重甲冑ゆえか、踏み込みの速度だけは鈍かった。スピードなら勝てる――それが準之介の冷徹な判断だった。


「クソがぁああ!!」


 涙が出るほど悔しかった。目の前でカツジを殺された怒りを忘れたわけではない。だが、勝てない。今の自分では、どう足掻いても勝利するイメージが湧かなかった。


(頼む、頼むぅうううううう!!)


 背中の痛みに耐えながら、必死でダンジョンの迷路を駆け抜け、生還するための魔法陣を探す。もし運悪く行き止まりに追い詰められれば、待っているのは死だ。


「えっ……!? なんだこれ!?」


 曲がり角を猛スピードで曲がった瞬間、目の前に広い空間が現れた。それだけなら探索中に何度も見たから驚かない。だが、その場所の壁の一角だけが明らかに異様な光を放っていた。長方形型のその光は人間が出入りするのに丁度良さそうなサイズ。まるで光の扉だった。


 ハッとして鞄の中に手を突っ込む。指先に強い熱を帯びた手触りを感じた。


 見るまでもない。それは、虹色の宝箱から手に入れた『ネフェルティティの部屋の鍵』だった。






最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。