33話
ダンジョンの入り口の前に立つ準之介は、緊張と期待が複雑に入り交じった表情を浮かべていた。
愛刀『錆丸』を腰に差し、青い愛鎧『夏天丸』を身に纏うのはいつも通りだ。
だが今日ばかりは、背中に革製の頑丈なリュックサックを背負い、頭にはゴツゴツとしたヘルメットを深く被っている。カツジのアドバイスを受けて一から揃えた、万全のダンジョン攻略用装備だった。
「よし、それじゃあ行きますか!」
同じようにヘルメットを頭に乗せ、大きなリュックを背負ったカツジが、まるで散歩にでも出かけるかのような軽快さでダンジョン内へ踏み込んでいく。
「おらぁっ!!」
前方から跳躍しようと身構えたバッタの魔物へ向け、準之介は瞬時に間合いを詰めて一突きを見舞う。一閃、鋭く伸びた『錆丸』の刃が、敵の脳天を正確に貫いていた。
「はい、ご苦労さん! 『吸引』っと!」
すかさずカツジが手際よく魔石を回収する。絶命したバッタの残骸は泡のように溶けて崩れ、ダンジョンの床へと吸い込まれるように消えていった。
「それじゃあ、どんどん行くぞぉお」
緊張の色など微塵も見せず、カツジはひょうひょうと先を急ぐ。その背中に続きながら、準之介は己の成長を実感していた。
前回の苦い反省を生かし、準之介は戦い方を根本から改めたのだ。
前回は狭い洞窟の壁に刃が当たるのを恐れるあまり、錆丸を短刀ほどの長さに縮めてがむしゃらに振り回していた。
だが、伸縮自在というこの魔剣最大の特性を生かすならば、本領を発揮すべきは『突き』の戦法であることに気づいたのだ。
間合いの外から正確に敵の急所を撃ち抜く戦術へとシフトした結果、余計な肉弾戦を回避でき、驚くほど精神的なゆとりが生まれていた。
さらに今回は、途中でエネルギーを補給するための水と行動食も完璧に備えている。万が一、不意の衝撃で転倒しても安全なよう頭部にはヘルメットを被り、何より隣には無数の修羅場をくぐり抜けてきたダンジョンのベテラン・カツジがいるのだ。
前回とは比べものにならないほど落ち着いた精神状態の中、準之介は一歩一歩、確実な足取りで迷宮の奥へと突き進んでいく。
あとは――念願の「宝箱」と巡り合うのを待つばかりだった。
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