30話
「んーーー!」
洞窟の薄暗がりの中で、準之介は全身の関節を鳴らすように大きく伸びをした。
肌を撫でる湿った風が、夜の匂いを運んでくる。いよいよ、ゴブリンの本領発揮となる時間帯だ。
ダンジョン探索から這うように戻り、横になるやいなや強烈な眠気が襲ってきた。そして今、ほんの短時間眠っただけだというのに、全身の疲労と精神的な消耗が嘘のように綺麗さっぱり消え去っている。
(やっぱり、この『スリープゴブリン』の特性は破格だ……)
改めてその恩恵を噛み締める。
夜は最前線の戦場で暴れ回り、戻ってきて泥のように眠る。
短時間の睡眠で万全まで体力を回復させたら、昼間はダンジョンへ潜り、戻ってきてまた一眠りする。
本来なら休息に費やすはずだった時間を、丸ごと行動に充てられるのだ。この圧倒的な活動可能時間は、苛烈な世界を生き抜く上で絶大なアドバンテージになり得た。
「うーん……でも、どうしたもんかな……」
腕を組みながら、胸の奥で燻るもやもやとした不完全燃焼感に思いを馳せる。
原因はハッキリしていた。初めてのダンジョン探索が、何一つ成果を上げられないまま、逃げるように這い帰ってくる羽目になったからだ。
「やっぱり……悔しいよな」
ダンジョンには「宝箱」が眠っているという。話に聞く限りその中身は千差万別で、貴重なお宝もあれば、ガラクタ(ハズレ)もあるらしい。
だというのに、自分の初探索は宝箱をひとつも見つけることすらできず、未知の魔物と不気味な迷宮のストレスに押し潰されて逃げ戻ってきてしまったのだ。
「いや……俺にできないはずがない」
普通のゴブリンの中には、過酷な戦場には一切顔を出さず、ダンジョン探索だけで生計を立てている熟練の奴らもいると聞く。奴らにできて自分にできない道理はないはずだ。
「よし……再挑戦してみるか!」
しかし、ただ闇雲に飛び込んで返り討ちに遭うのは、あまりにも芸がない。
準之介は思案の末、この岩山一帯で「知恵者」として知られているゴブリンに会いに行くことに決めた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。
評価を頂ければさらに喜びます。
☆5なら踊ります。




