28話
「さて、困ったな……」
腕組みをしながら、準之介は思案に暮れた。
短時間の睡眠で疲労が完全に抜け切ったのは実に素晴らしいことだが、その分、膨大な「時間」が余ってしまったのだ。
(さて、何をやる……?)
一番あり得ない選択肢は「何もしないこと」だ。
人間だった頃の休日なら、自室でダラダラ過ごすのも一興だった。だが、それだってスマホを弄ったり、録画しておいたテレビ番組を消化したりといった「娯楽」があってこそ成り立っていた時間だ。
何もないこの洞窟で、ただボケッと過ごすなど苦痛以外の何物でもない。退屈で正気が保てなくなる。
かといって、外で体を動かして遊ぶというのも気が引けた。
今は太陽が登ったばかりの早朝だ。夜行性であるゴブリンにとって、昼間の太陽光は体を怠くさせ、本来の力が出せなくなる嫌な時間帯である。
おまけに周囲のゴブリンたちは皆泥のように眠りこけており、話し相手すら存在しない。
となると――選択肢は、自ずと一つに絞られた。
「……ダンジョンに、行ってみるか」
準之介は身支度を始めた。
この近くにダンジョンが存在すること自体は、前々から知っていた。だが、これまで一度も足を踏み入れたことはない。
(ホブゴブリンに進化した今なら、行けるはずだ)
不安と、緊張と、そしてまだ見ぬ未知への期待。複雑に入り交じる様々な感情が胸を押し流し、準之介の鼓動は激しく高鳴っていた。
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