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14話

 


(良かった、これなら切り抜けられそうだ……)


 安堵の溜息を漏らしそうになった、その時だった。


「貴様。特殊魔法を持っているな?」


 王のようなゴブリンのその一言に、準之介の心臓が跳ね上がった。一瞬の沈黙。準之介はごまかそうとするのを止め、真っ直ぐに答えた。


「……それは、言えません」


「ほう、どうしてだ?」


 王のようなゴブリンが目を細めると同時に、背後に控えるホブゴブリンたちの視線が、剃刀かみそりのような鋭さで準之介を射抜いた。


「どうしてと言われても、それを明かすことが俺にとって不利益になるかもしれないからです」


「不利益だと?」


「特殊魔法を持っていると言えば警戒される。持っていないと言えば舐められる。どちらにしても、俺にとっては損しかありません」


「ふん、小賢しいわ」


 王のようなゴブリンは鼻で笑ったが、準之介は怯まずに言葉を継いだ。


「しがない雑兵なもんで、これくらいの用心は必要なんです。いつ、どこで死ぬか分からない世界ですからね」


「ならば俺が勝手に決める。貴様は特殊魔法を持っている。……それは、どんな能力だ?」


「ですから、答えられません」


「お前を雇ってやる、と言えばどうだ?」


 王のようなゴブリンの唐突な提案に、準之介は眉を上げた。


「私を、雇う……?」


「そうだ。貴様はさっき、自分のことを『何者でもない』と言ったな。ならば、俺の配下という肩書きを与えてやってもいい。その方が、色々と動きやすいこともあるだろう」


「……そうですかね?」


「世の中とはそういうものだ。力ある者の傘に入れば、無駄な争いを避け、より大きな利益を得られる」


 普通なら、自分よりも強い力を持ったゴブリンに声をかけられただけで泣いて喜ぶのがゴブリンの常識だ。だが、準之介は即座に首を横に振った。


「せっかくのお誘いですけど、俺は自由に生きていきたいんですよ」


「自由、だと?」


 王のようなゴブリンの瞳の奥で、好奇心の炎が揺らめいた。


「誰かの顔色を窺ったり、面倒な仕事を押し付けられたり……そういう煩わしさから解放されたいんです。今日という一日に何をするか。それを自分自身で決められる立場でいたいんですよ」


 誰の持ち物でもない、自分自身の時間を生きる。その真っ直ぐな、だがどこか世捨て人のような眼差しを向けられ、彼は再び、腹の底から愉快そうに笑い出した。


「くははは! 面白い、実に面白い! この俺の誘いを一蹴するとはな!………貴様に褒美をやろう」


「褒美、ですか」


 準之介は、この王のようなゴブリンが初めて自分の名を呼んだことに気が付いた。認められたような気がして嬉しかった。


「そこにある鎧。好きな方を持って行け」


「ふぇ!?」


 今日一番の、情けない声が出た。





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