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13話

 



「何者でもない男よ。貴様、この鎧をどう見る?」


 魔道具の青白い光に照らされた、赤と青の二領の鎧。王のようなゴブリンの問いに対し、準之介は頭で考えるよりも先に、本音を口にしていた。


「……めちゃくちゃ格好いいですね」


「それだけか?」


 即座に問い返した。その瞳は、準之介が「見た目」の奥にある本質を見抜けるかどうかを試しているようだった。


「最高に合理的だと思います。ゴブリンの定番の鎧は、頑丈ですが重すぎて動きにくい。それに比べて、これは鉄板が驚くほど薄い。これなら戦場を縦横無尽に駆け回れるはずだ。……けれど、それでいて防御力も相当なものに見えます」


「ほう……」


 王のようなゴブリン眉が跳ね上がった。準之介は熱を帯びた口調で続ける。


「秘密は、この流線型の形状にあるはずです。これは鉄板の分厚さで正面から耐えるんじゃなく、敵の武器を外側へ逸らし、受け流すことに重点を置いている。格好良くて、合理的で、極めて実戦的だ。……正直、俺がギャレンに作ってもらおうと考えていたものとほぼ同じ、いや、それ以上です」


 沈黙が流れた。ギャレンが息を呑む。王のようなゴブリンは、信じられないものを見るような目で準之介を見据えた。


「……貴様も、これを作ろうとしていたというのか?」


「漠然としたイメージですけど。一応、図に描いてきたんです」


 準之介が懐から取り出したのは、何枚かの紙。そこには、「武将の鎧」の記憶を組み合わせて描いた、流線型の鎧のスケッチがあった。そこに並んでいる実物と、驚くほど構造が一致している。


「……下手くそな絵だな」


「すいません、絵心はないもんで……」


 王のようなゴブリンの辛口な評価に、準之介は少し顔を赤らめた。だが、彼の目は笑っていた。彼は紙と実物の鎧を交互に見比べ、確信に満ちた声を出す。


「気に入ったか」


「最高に気に入りました」


「そうか……!」


 王のようなゴブリンは、準之介の目をじっと見つめた。そして、腹の底から突き上げるような、愉快でたまらないといった様子で笑い始めた。


「くははは! 何者でもない男が、俺と全く同じ『理』を持って現れるとはな! 面白い……実に面白いぞ!」


 その笑い声は、古い伝統に縛られた岩山の工房を、新しい時代の到来を告げるかのように激しく揺らした。





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