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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
第4章 ユーレイと旅をすると……

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105話 ランカ村を出発

 フォンさんが謝りに来てから二日がたった。私とお兄ちゃんは、今日、ランカ村を出発する。お父さんたちは、もう少し準備が必要みたいで、出発は四日後に決まった。


「アグス殿、リーナ殿。旅に必要な道具はすべてこのリュックサックに入れました。どうぞ」


 旅の用意をしてくれたフォガスさんから、リュックサックを受け取る。


「これはマジックアイテムのバッグですか?」


 お兄ちゃんの問いに、フォガスさんが頷く。


『マジックアイテムのバッグだと。それって、すごい量の荷物が入るバッグだよな。リーナ、見せて!』


 ユウが興奮した様子で、フォガスさんから受け取ったリュックサックを見つめる。

 

『ランサ森に行った時には、使わなかったから、この世界にはないのかと思った。でも、あってよかった~。これぞファンタジーだよな』


 旅をする事が決まってから、ユウのテンションがずっと高い。寝ている時に騒がないだけ、ましなのかもしれないけど、ちょっとうんざりしている。


「そうです。中身は旅に必要な物だけなので、あとはそれぞれが必要だと思う物を入れてください。ただ、マジックアイテムのバッグにも限界はありますから注意してくださいね」


「「はい、ありがとうございます」」


 受け取ったリュックサックを持って自分の部屋へ戻り、旅に必要な服や下着を入れる。最後に、お金の入っている小さな袋を入れ、リュックサックの蓋を閉めた。


『お金は冒険者ギルドに預けてもいいと思うけどな』


 リュックサックに両親からもらったお小遣いを入れたのを見て、ユウが小さな声で呟く。


 私もそう思うけど、問題が起きた時にお金が引き出せなかった経験から、お父さんは、ある程度まとまったお金を持っていたほうがいいと考えるようになった。今回もらったお小遣いも、すべて冒険者ギルドに預けようとしたら、お父さんに「もしも」の事を考えてある程度は手元に置いておいたほうがいいと言われた。


「準備、終わり。この部屋とも、当分はお別れかぁ」


 リュックサックを背負うと、部屋を見渡す。


「この部屋から始まったんだよね」


 リーナが死んで、私が憑依した始まりの場所。魔王を崇拝する異端者の問題が片付いたら、戻ってくるつもりだけど、なんとなく寂しくなる。


 コンコンコン。

 

「リーナ、準備は終わった?」


「うん、終わったよ」


 私を呼びに来てくれたお兄ちゃんと一緒に玄関へ行く。


「間に合った~」


「カリアス、タグアス。どうしたんだ?」


 玄関に駆け込んできた二人に、お兄ちゃんが驚いた声を上げる。


「アグスとリーナにこれを渡したくて……」


 カリアスがお兄ちゃんに何かを渡した。


「これは、水晶?」


 お兄ちゃんが、カリアスから受け取った物を見て首を傾げる。


「うん。水晶は身を守ってくれるって聞いたから、だから……」


 タグアスが説明しながら、泣きそうな表情になる。


「ありがとう、カリアス、タグアス」


 お兄ちゃんのお礼の言葉に、カリアスまで泣きそうな表情になった。


「アグスもリーナも、また会おうな。絶対に」


「「うん、もちろん」」


 お兄ちゃんと私が一緒にそう言うと、カリアスとタグアスは涙ぐみながら頷く。

 

「行きましょうか」


 キーフェさんは私たちに声をかけたあと、カリアスたちに目を向けた。


「大丈夫です。我々が必ず守りますから」


「「お願いします」」


 キーフェさんに向かってカリアスとタグアスが深く頭を下げる。それを見たお兄ちゃんは、目をギュッと閉じると小さく息を吐き出した。


「カリアス、タグアス。またな」


 お兄ちゃんは目を開けると、二人に向かって笑顔を見せる。そんなお兄ちゃんに、カリアスとタグアスは泣き笑いのような表情で手を振った。


 フォガスさんとキーフェさんの馬に、それぞれ乗せてもらって、お父さんとお母さんに視線を向ける。


「気を付けて」


「うん。お父さんたちも気を付けてね」


 お父さんがお兄ちゃんの手をギュッと握る。お母さんは、私の手を両手でギュッと握ると泣きそうな表情を浮かべた。


「お母さん、手紙を書くね」


「うん。待ってるわ」


 私の言葉に、お母さんが小さく頷く。


「そろそろ出発します」


 キーフェさんの言葉に、お父さんとお母さんが、お兄ちゃんと私の手を放す。


「「行ってきます」」

 

 お兄ちゃんと一緒に、笑顔でお父さんとお母さんに手を振る。そして、二人の傍にいる、カリアスたちにも手を振った。


 馬がゆっくり動き始める。やがて馬が駆け足になると、あっという間にお父さんたちは見えなくなった。


『この周辺に、リーナたちをうかがっている奴らはいないぞ』


 家を出た時から姿の見えなかったユウが、私の傍に飛んでくる。私はユウをチラッと見ると、小さく笑って頷いた。


「ランカ村の隣にあるトラス村まで、休憩は最低限にして向かいます。トラス村で少し長めの休憩をとって、二人の体調に問題がなければトラス村の隣にあるタンリガ村へ向かいます。二人が疲れているようでしたら、トラス村で一泊して明日、タンリガ村に向かいます」


 フォガスさんの説明に、私は頷く。お兄ちゃんを見ると、キーフェさんから説明を受けていた。


「大丈夫ですか?」


 ランカ村とトラス村のちょうど中間あたりで休憩をすると、フォガスさんが馬に水を飲ませながら、私とお兄ちゃんを見る。


「「大丈夫です」」


 ランサ森の依頼を終えた後、フォガスさんとキーフェさんに乗馬を習っていて本当によかった。そうじゃなかったら、ここまで一気に来る事はできなかったと思う。

 

「リーナ、乗馬の練習がこんなに早く役立つとは思わなかったな」


 お兄ちゃんも同じ事を思っていたのか、私を見て呟く。


「うん、そうだね」


「この感じでしたら、今日中にタンリガ村へ向かえますね」


 お兄ちゃんと私の様子を見ていたキーフェさんがそう言うと、フォガスさんもほっとした様子で頷いた。


「今日中にタンリガ村へ行かないと駄目なのですか?」


 お兄ちゃんの問いに、キーフェさんは少し考えたあと、お兄ちゃんと私を見た。


「リーナ殿とアグス殿が、ランカ村からいなくなった事を異端者はいずれ知るでしょう。その時に、なるべくランカ村から離れておきたいのです」

 

 フォガスさんの説明に、お兄ちゃんも私も真剣な表情で頷く。


『リーナ、安心しろ! 不審者がいたらすぐに知らせるからな』


 上空を飛んでいるユウに視線を向ける。

 

 さっきから、周りを気にしているのは、不審者を探してくれていたのか。

 

「異端者たちはすぐに私たちがいない事に気づくでしょうか?」


 私の問いに、フォガスさんとキーフェさんが首を横に振る。


「一週間ほどは気づかないと思います」


「一週間ですか?」


 キーフェさんの説明に、お兄ちゃんは不思議そうな表情を浮かべる。


「はい。『協会が追っている組織に、荷担している者たちがランカ村で複数人見つかった。ランカ村への人の出入りを制限し調査する』という事で、アグス殿がランカ村を出発したと同時に、人の移動に対して制限を設けました」


 キーフェさんの説明を聞いたお兄ちゃんが驚いた表情をする。


「そんな事をして大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。実際に、異端者たちが見つかっていますし、彼らが属している組織を協会は追っています。どこにも嘘はありません。ただ、すでに異端者たちは捕まっているんですけどね」


 いったい、何人の異端者がいたんだろう? ちょっと気になるかも。


「そうなんですね。いろいろ、ありがとうございます」


 キーフェさんの説明を聞いたお兄ちゃんが、キーフェさんに小さく頭を下げた。


「いえ、異端者たちにアグス殿たちの情報が漏れたのは、こちらの落ち度ですから」


 申し訳なさそうに話すキーフェさんに、フォガスさんも頷いた。


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