フランチェスカ
二人目のヒロイン登場です。これからヒロインラッシュになる予定。
「あの~、もういいかしら?」
ひとしきりグレーテルの体の柔らかさとおっぱいを堪能していると、横から声がかかった。
さっき助けた子だ。黄色人種が染めた不自然な金髪とは比べ物にならないほど綺麗な、金糸のような鮮やかな金髪の下のエメラルドのような瞳が僕たちを見つめている。
髪は泥だらけでバラバラに乱れ、顔にも青アザがあるけれどグレーテルにはない気品がある。一度だけテレビで見た○国王室の王女様みたいだ。
「助けてくれたこと、感謝いたしますわ」
女の子はちぎられたスカートの裾を軽く持ち上げ、片脚を引いて軽く会釈した。漫画で見た貴族の女子の挨拶だ。
「……親切な挨拶、痛み入る。私はグレーテル。こっちがヒロシ」
僕もグレーテルにならって頭を深々と下げる。
貴族への挨拶ってどうするかわからないけど、ひとまず大きく頭を下げておけば大丈夫だろう。
「わたくしはフランチェスカと申しますわ。ところで、爺やは……」
フランチェスカの声のトーンが沈み、長いまつげが伏せられる。
「……たぶん、あなたの想像通り。遺体はアイテムボックスに入れた」
「ありがとうございます、ですわ」
フランチェスカは今度は僕たちと同じように深々と頭を下げた。
「……平民にする挨拶じゃない」
「それでも、爺やの遺体を野ざらしにせずにおいてくれたこと、お礼を言いますわ。それとそこの貴方」
フランチェスカは僕の目を見つめた。
「黒い髪に、黒い瞳…… 噂に聞く東の国の人かしら。お強いのね」
フランチェスカの声のトーンが少しだけ上ずり、グレーテルがそれに対し鋭い視線を向けた。
どうしたんだろう?
でもフランチェスカはすぐに元のトーンに戻った。
「オークを素手で貫通する男なんて、我が家の護衛にすらなかなかいませんわ」
いるのか! ファイアハンドというか、付与系は今まで使えるのが僕しかいなかったから少しだけ優越感だったんだけど、残念。
井の中の蛙大海を知らずか。
だがグレーテルの白い耳がピクリと動いた。気がした。
「……あなたの家の護衛って、付与系の魔法使いもいる?」
「それは当然ですわ。我が家は由緒ある家柄ですのよ!」
フランチェスカが胸を張る。だが嫌味や自慢と言った感じではなく、純粋に家のことを誇っている感じだ。
「……是非、会いたい。珍しい魔法を研究するのが私の生きがい」
「それくらいは構いませんことよ。爺やの埋葬も兼ねて、わたくしの屋敷へご招待さしあげますわ」
「でもいったん、リーマンへ戻らないと」
「わたくしの目的地と同じですわ。御一緒させていただけません?」
フランチェスカも入れて、三人で山道を歩いてリーマンへ帰ることになった。オークの死体は僕の剣で解体して、アイテムボックスに収納してある。ワイルドボアの肉より高く売れるらしい。
なんだかやってることがリアルモン○ンみたいになってきた。グレーテルが解剖するかのようにナイフでオークの肉を切るのを手伝っていたのが少し怖かった。
「ドレスは歩きにくいですわ……」
仕方ないのでフランチェスカはドレスの裾を全て引きちぎり、派手なフリルのついたミニスカートのようにした。ドレスの下からは白いペチコートがちらちらとのぞいている。
「うう、はしたないですわ」
フランチェスカはそう言いながら真っ赤になる。なにしろ胸元のデコルテラインからのぞく谷間と、真っ白な太ももが露わになっているのだ。
それでも歩いていると気にならなくなってくるらしく、ずんずんと山道を歩いていく。
なんだか、歩き慣れている感じもする。
「……フラン、結構旅慣れてる感じがする」
「ま、まあ狩りは貴族の嗜みでしてよ。山歩き程度で根を上げていては、下々に笑われますわ」
「……ところで、なんであの道を執事一人が運転する馬車で移動していたの? オークが出るくらいだから、護衛を複数つけないと危ないはず」
「爺やは元Cランク冒険者ですのよ。だから大丈夫と思い、お父様も賛同して知り合いのいるリーマンの町に行くところだったんですの」
それを聞いて、嫌な感じが膨らんでいった。なぜ爺やさんが死んでいた? それに、馬車の幌には上からつき破られたように大穴があいていたけれどあれは本当にオークがやったのか?
オークの武器を思い返すが、槍や剣ではオークの身長より高い位置にある幌の真ん中にあんな大穴をあけることはできない。上から岩でも降ってくれば別だけど、岩崩れがある地形でもなかった。
「フランチェスカ。はじめどんなふうに襲撃されたか、覚えてる?」
「……ヒロシ。無神経」
グレーテルが咎めるが、僕は構わずフランチェスカに続きを促す。
ひょっとしたら。僕の予感が、当たっていたら。
「急に馬がいなないて動きを止めたので、何事かと馬車から身を乗り出してみましたわ。するとオークの集団が、道をふさいだのが見えて、すかさず爺やが矢を放って二体、倒しましたけど……」
「その後は?」
「それから、ひと際大型で目立つ色をしたオークがいなくなっていましたわ」
目立つ色をしたオーク。そんなの、僕たちはまだ倒してない。
「次の瞬間、馬車にものすごい衝撃が来て、横倒しになったと同時に爺やの悲鳴が聞こえて、それからオークたちがわたくしを馬車の外へ……」
フランチェスカは自身の体を抱きすくめるようにしてうずくまってしまった。
「ごめん、もういいよ。もう十分だ」
だが一方で、グレーテルが顔を青くしていた。
「……ひょっとするとエリート・オークかもしれない」
近くの茂みが、カサカサと音を立てた。




