64 ラグナ
アザミが目を見開く。
笑った…
明里に引っ張られて、俺は地面を転がる。
ヒュン。という音とともに鎖鎌が宙を舞う。
眠の冷たい瞳が俺を見る。
相手の人数が多い……
明里が俺に小声で言う。
「逃げるよ。」
「え?」
「確認したかったのは、誰か残されてないかだけ。数的不利だし、アザミを連れて逃げるよ。」
「わ、わかりました!」
アザミが足を引きずりながらこっちに近づく。
銃声。
アザミの銃弾とハルの銃弾がぶつかる。
レインと女性二人、剣士は立っているだけだ。ノワールとその隣の女性も動く気配がない。
明里が呟く。
「おかしい。」
「?」
刀が白く光る。
ベストの男性のナイフを弾き飛ばしながら、紫電が眠に斬りかかる。
俺も炎帝を構えた瞬間、刀が飛んでくる。
反射的に弾き飛ばす。
白い刀が宙を舞う。
紫電さんの脇差がない…いつ抜いて投げたんだ!?
明里がアザミの腕を掴んで後ずさる。
アザミが言う。
「紫電は全く本気でやってない。遊んでる感覚だ。」
「あれが……」
そのときウラがパチンと指を鳴らす。
俺は思わず尻もちをつく。
「あれ…?」
さっきと違う場所にいつの間にか座り込んでいる。
ボロボロのビルの屋上で俺は周りをキョロキョロと見渡す。
明里がため息をついて言う。
「移動させられたみたいだね。撤退できたし…好都合といえばそうかもだけど。」
アザミが疲れたようにしゃがみ込む。
明里がアザミに聞く。
「で?なんで取り残されたの?」
「ラグナのことを聞いてきた。」
ラグナ…?
「ラグナのことをね…でも、アザミは何も言ってないんでしょ?」
「あぁ。」
「だとしたら、アザミ付きで移動させたのはおかしい……」
風が吹く。
淡い金色の目が遠くを見つめる。
・・・・・***・・・・・***・・・・・
ウラは目の前の塊を見つめる。
ベストを着た男性が聞く。
「レインたちも、アザミたちも、全員移動させてしまったがいいのかい?」
「必要がなさそうだから。」
「?」
そのとき地面が揺れる。
鼓動する塊が静かに音を切る。
グシャリと潰れる音が響く。
気持ち悪そうに、眠が口をおさえる。
ウラの足元まで液体が伸びる。
静寂。
突如咆哮が響く。
潰れた塊の中から這い出た一匹の怪物は歩き出した。
・・・・・***・・・・・***・・・・・
桁違いの音に耳を塞ぐ。
凰理は思わずつぶやく。
「なんだあれ……」
四本足の怪物が歩いていた。
全身に目があり、ギョロギョロ視線を動かしている。
緑人……!!
宗教施設のときのやつよりは小さいけど…デカい……
アザミが食い入るように巨大な緑人を見つめる。
「ラグナ……!?」
「?」
アザミの黒い瞳が揺れる。
俺は聞く。
「ラグナって…何なんですか。」
「逆に聞くけど知らないの?」
明里が呆れ気味に返す。
「えっと…聞き覚えがあるような…ないような……」
「……」
そのときアザミがポツンと言う。
「ラグナは…緑核体の中でも一番、被害を及ぼした緑人だ。」
「…!」
「でも…あれはラグナじゃない。」
「…どういうことですか。」
地面が揺れる。
「ラグナは全身に目がある、人間と同じ大きさの緑核体だったんだ。」
11/5 エピソードタイトルを修正しました。内容に変更はありませn。




