61 約束
副局長…!?
研究技術局。
緑人の研究をしたり、銃などの対緑人用の武器の生産。烏兎の働いていた医療局と、共同で緑人化の治療法
研究などもやっている。…とりあえずなんかすごいところ。
アザミが呟く。
「表面温度と周囲の気温差が大きいな……」
小春が言う。
「内部の温度も測りますか?」
「いや。先に脈拍…周期的な反応を確認する。」
「さっきから一定じゃないですよね〜。」
「そうだな。規則的に見えるが、少しずつ変化している。」
明里が口をはさむ。
「生きてるってこと?」
アザミが淡々と答える。
「まだ断定できない。生命反応があることと、生物として活動していることは別だ。」
……何言ってるかわからん。
明里が聞く。
「これが、緑人の巣の可能性はない?」
「…まだ断定はできないが、緑人の巣ならもっと表面温度は低い。それにサイズが既存の巣と比べて小さすぎる。」
「なるほどね〜。」
俺は首を傾げて聞く。
「あの…緑人の巣って、どれくらいの大きさなんですか?」
「ん?あ、そっか。見たことないもんね〜。まぁ、見る機会なんてほぼないけど。」
明里が目の前の塊を見つめながら言う。
「う〜ん。小さいので高さが…200mぐらいはあるんじゃないかな〜。」
「に、にひゃく?」
「うん。200。」
デカっ……
「あの…あんまり、巣の話って聞かないんですけど……巣って何なんですか?」
「聞きたい?」
「えっと…聞きたいです。」
「了解〜。」
何で確認したんだ……?
明里が話し始める。
「私も見たことがあるわけじゃないから、知り合いから聞いた話だけど……結構昔に調査部隊が、巣に入る
ことになったんだ。隊長格まで入れて、総勢300人で巣に向かった。そこには知り合いの友達もいたらし
い。」
300人……
「でも、次の日には帰ってきたんだ。そのときの人数は何人だと思う?」
「えっと……150人とか?」
「ぴったり半分だね。正解は5人。」
え……
「5人!?」
「うん。知り合いの友達も含めてね。その友達は右腕を欠損してて、戦闘員をやめて事務仕事に移った
よ。」
「……!」
俺は無言で目の前の物体を見つめる。
アザミがカチカチ、キーボードを叩いている。
そのとき、アザミが首を傾げる。
…何かあったのか?
「何だこの数値……」
明里が聞く。
「どうかしたのかい?」
「魔力量を測定してみたんだが…数字がおかしい。」
「?」
機械の画面を覗き込む。
『1012』
明里が目を細める。
俺は小春に聞く。
「えっと…どういうことですか?」
「魔力量ですか?えっとですね。まず一般人の魔力量平均数値は200。」
意外に多い……
「あんまりいないですけど、多い人だと320。普通の緑人が357。芯ができてる強い緑人……”緑核体”は43
0〜489。」
「じゃあ…この数字は……」
「既存の生物ならありえないですね。一つありえるとしたら……魔神。」
魔神……
「魔神の魔力量測定をする機会なんて、ほとんどありません。過去の記録で1030とか異常な数字があった
り、逆に98なんて少なすぎる数値が出たりしてます。」
「差がすごいですね……」
「でも、魔神の姿をハッキリ見た人はほぼいなくて…今、私が挙げた数字も、魔神のものとは限らないんで
すよね……」
アザミはその間も機材を操作していた。
突然、アザミが口を開く。
「紫電は…変わってなかったか?」
え…
俺に…聞いてるのか……?
「は、はい。写真と変わってません。」
「そう、か……」
俺は黙り込んでいたが、ぽつりと言う。
「俺、パドさんが…紫電さんやアザミさんのこと教えてくれたとき、約束したんです。」
「?」
「パドさんは『自分にはできない。』って言ってました。だから…俺が代わりにやるって。約束したんで
す。」
アザミの真っ黒な目が、紅い目を見つめる。
「紫電さんを…絶対に止めます。」




