59 アザミ
「あれ?鳴朝くん!?久しぶり!!」
「久しぶりさ。アザミいる?」
「いるよ〜。えっと、後ろの人は…」
「凰理くん。護衛してくれてるさ。」
「わかった〜。えっと…どうぞ、入って〜。」
何だ??
中に入って部屋を見渡す。
薄暗い部屋に、大きな机が置かれている。
壁にファイルなどがたくさん入ったスチール棚や、試験管などがしまってある薬品棚が並んでいた。
椅子が一つ横倒しになっていて、書類が散らばっている。
さっきの騒音…これか?
女性が部屋の奥にある、木製のドアを叩く。
「アザミさーん。」
沈黙。
「ア・ザ・ミさーん。鳴朝くんが来てるんですけどー。」
ガンッ!
騒音二回目。
カチャ。という音とともにドアが開く。
一人の男性が顔を出す。
黒髪の短髪。キリッとした真面目そうな表情。白いYシャツを着ていて、スラックスを履いている。カード
ホルダーを首から下げていて、『谷崎アザミ』と書かれたカードが入っている。
女性が言う。
「アザミさーん。一回で出てきてくださいよ〜。本当にアザミさんはいつも……」
キィという音が響く。
閉まりそうになるドアを女性が急いで止める。
「ちょっと、ちょっと!アザミさん!!閉めないで下さい!まだ、何も用件済んでませんよ!!!」
アザミ……?この人……パドさんが言ってた…友達の人?
女性が続ける。
「閉めないで下さい!!鳴朝くんが用事あるって…!!」
アザミがようやく口を開く。
「人多い…。」
人…多い?
女性が大声で言う。
「多いって、三人ですよ!?私に至っては、仕事のとき毎回、顔合わせてますよ!??」
「多い……」
「アザミさん、いつも人多いって言うじゃないですか!!人間が一人でも存在してたら言うじゃないです
か!!!」
人間が存在してたら……!?
いつまで経っても、閉まりそうな状態のドアは動かない。
俺は戸惑いながら呟く。
「えっと…これって……」
鳴朝が苦笑いをしながら言う。
「やっぱ出てこないか…。小春、代わって。」
「あ!はい。」
小春と呼ばれた女性がドアノブから手を離す。
アザミが再びドアを閉めようとするが、鳴朝がドアのへりを掴む。
ドアを引っ張っていたアザミだが、しばらくして諦めたようにドアノブから手を離す。
小春がため息をついて言う。
「やぁーっと出てきた…。」
「……」
アザミはその場所に突っ立ったまま、無言でうつむいている。
何だ…この人……
鳴朝が笑顔で言う。
「アザミ、久しぶりさ。」
「……久しぶり。」
か細い声が聞こえる。
声ちっちゃ…
「アザミ、ちょっと用事があって、明…」
鳴朝が言い掛けた瞬間、アザミがドアを閉めようとする。
ドアに手をついて、閉まるのを防ぎながら鳴朝が続ける。
「明里が緊急で会いたいらしいさ。俺も詳しい話は分からないけど…」
アザミが頭を抱えて、しゃがみ込む。
かすかにアザミが何かを呟く声が聞こえる。
「無理無理無理無理無理無理……」
えぇ……
小春が言う。
「大丈夫ですよ〜。明里さんなら何回も会ったことあるでしょ〜。」
「会うたびに厄介事押し付けられる……」
「それは…」
明里さん…何したんだ。
鳴朝が言う。
「かなり急ぎらしいさ。」
「ほら!行きますよ!」
小春に引っ張られて、仕方なくアザミは立ち上がる。
部屋の中から松葉杖とカバンを持って出てくる。
松葉杖……?
鳴朝が小声で言う。
「アザミは片足不自由なんさ。」
「へぇ〜。」
施設の外に出たあとアザミと車に乗り込む。
鳴朝さんはバイクだけど。
俺は助手席に座っているアザミに声をかける。
「えっと…よろしくお願いします!鳳宮凰理です!!」
「…よろしく……」
小春が
「行きますよ〜。」
と言って車を発進させた。




