58 休日は…
翌日。
「やっぱ、烏兎の家、綺麗だよなぁ〜。」
俺は部屋を見渡す。
「ん?そう?」
「だってちゃんと片付いてるし。」
「お、おう。」
窓際に置かれた一本の白百合が花瓶に差してある。
烏兎が椅子に座った俺に聞く。
「で、いきなり来てどうしたん?」
「いや〜。今日仕事休みだから、暇ならどっか一緒に行こっかな〜って。」
「なるほど。」
「篠雨も誘うつもりなんだけど、先に行き先、決めたほうがいいかな〜って思ったんだけど。」
「確かにこの前、ことごとく篠雨に却下されてたしな。」
「どこ行こっか…。」
「平日やからあんま混んでないはずやな。」
沈黙。
「なんやろ。何言っても…篠雨に却下されそうな気がする……」
「確かに…よし!本人に聞こう!」
「結局そうなんねんな…」
インターホンを押す。
ピンポーン。
数秒後。ドアが開く。
篠雨が顔を出す。
「……」
「……」
烏兎がぽつりと言う。
「髪くくってないから誰かと思ったわ……」
「うるせぇ。」
篠雨がため息をついて言う。
「何の用だ。」
「どっか行こ!!」
「行かねぇ。」
即却下された俺は固まる。
「え!?何で!??」
「忙しい。」
「休日だよ!?」
「忙しい。今度にしろ。」
「…わかった……」
パタンとドアが閉まる。
「……」
俺は固まったまま、烏兎に顔を向ける。
「えっと…どないしよっか。」
「篠雨…今日、暇じゃなかったのか……」
「そやな…」
そのとき、烏兎がスマホを取り出す。
バイブ音が響いている。
「電話?」
「うん。」
通話ボタンを押して、烏兎が何か話している。
ん〜。どこ行こっかな……。
そのとき、烏兎が申し訳なさそうに言う。
「なぁ…ごめん。俺も急用できたわ……」
「え…」
「ごめんな…」
・・・・・***・・・・・***・・・・・
「パドさん!俺暇です!」
ブチッと電話が切れる。
「あれ?」
俺は急いで掛け直す。
「ちょっと切らないで下さいよ!!」
『だったらまともな理由で電話をかけろ。』
「だって、暇なんですよ。」
『じゃあ、仕事するか。』
「それは嫌です!」
『注文が多いな。』
少しの沈黙のあと、パドがため息をついて言う。
『手伝ってほしいことがある。』
・・・・・***・・・・・***・・・・・
「鳴朝さんのバイクかっこいいですね〜」
「ん?あ〜もらったやつさ。」
「へ〜。で…ここどこですか。」
「えっと、研究施設。」
「研究?」
目の前の大きな白くて四角い建物を見て、首を傾げる。
鳴朝はスタスタと歩き出す。
パドさんに『鳴朝の護衛。』って言われて来たけど…鳴朝さんは何の用なんだ……?てか、結局仕事するこ
とになったな……
鳴朝は慣れているのか、警備員に話しかけ、施設の中に入る。
俺は鳴朝を追いかけながら、施設の中を見渡す。
真っ白な廊下を、窓から差し込んだ陽光が照らしている。
壁には等間隔に白いスライドドアが並んでいる。ほのかに薬品の匂いがして、いかにも研究施設という感じだ。
鳴朝が一つのドアの前で立ち止まる。
在室と書かれたプレートがぶら下がっている。
鳴朝が扉をノックする。
数秒の沈黙。
ガシャーン!!
「!?」
何だ…!?
ドン!ガタッ!
騒音のあとカラリとドアが開く。
「こ、こんにちは〜。」
眼鏡を掛け、ボサボサの黒髪ロングの女性がにこやかに言った。




