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GREEN RECORD  作者: ミズイロみかん
GREEN RECORD Ⅲ
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54 ウィンターメモリーⅣ



「救助任務?」


紫電が言う。


「緊急要請だとよ。」


レイルがスマホをひらひらと振って言う。


「具体的な内容は、雪山の緑人研究所で異常が起きたらしい。それで連絡も途切れたし安否もわからない。

研究所内は緑人が保管されてるし、人手もないから近い場所にいる俺たちに休暇は諦めて行けってさ。」


「なるほど。」


紫電がうんうんと頷く。


俺は顔をしかめる。


「天気予報じゃこのあと吹雪だぞ。」


「研究所まで往復1時間半。吹雪は3時間半後。だから行けるって話だ。あそこは重要らしいし、緑人もい

るから急ぎたいっていうのはわかるが…俺だったら吹雪のあとに行きたいけどな。」


レイルがため息をつく。


車が止まる。


数十人が集まっている。


レイルが歩きながら説明を続ける。


「通信設備がぶっ壊れてるかもしれねぇから、先遣隊にナギを連れていきたいらしい。」


「え?」


紫電が声をもらす。


「いやいや、大丈夫なのそれ?」


「大丈夫。」


ナギがいつもの調子で言う。


「誰かついて行ったほうが…」


「大丈夫だって。心配しすぎ。」


「え〜。」


レイルが数人の隊員と地図を見ながら話している。


俺は小声でナギに聞く。


「本当に大丈夫か。」


「さぁ。」


「は?」


「…誰も……危険にさらしたくない。」


「……」


レイルがイライラした様子で戻ってくる。


「やっぱナギを連れて行くだとよ。」


「大丈夫…?」


紫電が不安そうに言う。


「さっきから大丈夫大丈夫うっさい!私が信用できないってんの?」


「いやいやそういうわけじゃ…」


レイルが言う。


「うまく行けば大丈夫だろうが……うまく行かなかったらどう…」


「うっさいチビ!」


「チビって言うな!」


「落ち着け。」


バタバタしているレイルを掴みながらため息をつく。


ナギは一言われたら十返すからな……


紫電はやはり不安そうにしている。


葵も。透凪も。似たようなことを言っていた気がする。


冷えた風が吹く。


人が動く。


「なぁ…ホントに大丈夫か?」


紫電がナギの小さな背中に向かって言う。


「…大丈夫。」


ナギが静かに答える。


白い雪の上でナギが言う。


「いつも通り帰ってくるから。」



思えば。あれが声を聞いた最後だった。



・・・・・***・・・・・***・・・・・



ナギが戻ってこない。


そう聞いたと同時に俺は駆け出す。


猛吹雪の中、叫ぶ。


「紫電!」


「無理なのは分かってる。でも…誰かがいなくなるのはもう……」



「嫌なんだ。」



舞い散る白の中で白銀の髪が揺れた。


「俺はパドみたい時


止めていれば。


あの二人は横で笑っていただろうか。



・・・・・***・・・・・***・・・・・



「パド。パド!」


俺は顔を上げる。


リートが言う。


「大丈夫?」


「あぁ…大丈夫だ。」


ふと気づく。


「鳴朝は?」


「…たぶん外。」


「わかった。」


俺は立ち上がって歩き出す。


冷気が体を包む。


黒い服に身を包んでいる鳴朝がぼんやり黒い空を見つめている。


俺は黙って隣に立つ。


沈黙の中で鳴朝が呟くように言う。


「なんで…」


「……」


「透凪さんも葵も、佐々木も。」


風が吹く。


「ナギも紫電もなんで…いなくなるんさ……」


わからない。


何も言えない。


念仏が聞こえてくる。


もういない。どこにも。あいつらは。




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