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GREEN RECORD  作者: ミズイロみかん
GREEN RECORD Ⅲ
53/66

53 ウィンターメモリーⅢ



「帰っちゃったねぇ。」


紫電が隣で言う。


アザミが用事があると言って、鳴朝とバスで帰っていった。


アザミも鳴朝を気にしていたらしい。


用事の話は聞いている。


たしか何かの発表だった気がするがあいつにできるのだろうか。


紫電が言う。


「さてと…パド!もう一回滑ろ!」


こいつはこいつで満喫してるな。


ため息をついて追いかける。


どうやらこの一日で紫電はある程度滑れるようになったらしい。


俺は紫電に言う。


「スキーが滑れるようになるのもいいが、車の運転免許も早く取れ。いつまで俺に運転させる気だ。」


「うっ……だってさ〜。運転はできるんだけど、標識が覚えれないんだよ。」


呆れ顔でナギが紫電を見ている。


レイルがいつもの意地の悪い笑みで言う。


「取ってねぇのお前だけだぞ〜。」


「え〜。」


雪がひらひらと舞う。


レイルが空を見上げて言う。


「降ってきたな…もう少しだけ滑ってやめにするか。」


「OK〜。」


紫電はスキー板を持って駆け出していく。


子供みたいだな……


レイルがため息をついて追いかけていく。


ナギが俺に聞く。


「てか、あんたほとんど滑ってないけど滑らないの?」


「いや…もう、十分満喫した。」


「ふーん。じゃあ、ちょっと話したいことあるんだけど。」


「?」


白い息が空を舞う。


ひらりと舞う雪を若葉色の瞳が見つめている。


「私が悪いやつとかの情報集めてることは知ってるでしょ?」


「あぁ。」


ナギは情報収集能力が高く、電子機器にも強くてハッキングなどの技術もある。


ナギが調べた情報をもとに犯罪者を捕まえたこともある。主に紫電が。


「その情報をさ、データ化してまぁ、とある場所に隠してるんだけどね…その場所、パドにも知っといてほ

しいの。」


「…何でだ。」


「まぁ…何かあったときのために。かな。」


「……」


ナギが怒った声で言う。


「そんな顔しないでほしいんだけど!まだ私元気だからね!!」


「あ〜分かった分かった。」


「適当に言ってるでしょ。」


「言ってない。」


思わず笑みがこぼれる。


ナギが驚いた表情で俺を見ていたが、ナギもくすりと笑う。


レイルがスノーボードで空中を舞うのを見ながら聞く。


「何で俺なんだ?」


「ん〜。なんとなく?」


「なんとなく…」


「なんかさ〜。信用できるし、パドなら寿命でおじいちゃんになるまで死なないだろうな〜。って感じがす

る。」


「どういう理屈だ。」


「まぁ、いいじゃん。鳴朝にはこれ以上重いもの持たせたくないし、アザミも…幼馴染の葵がいなくなって

本当は…つらいくせに、いつも通りに見せちゃってさ。アザミって嘘下手だよね。」


「…そうだな。」


「レイルだって同じ。葵とアザミとは幼馴染でしょ?……それに。部下の佐々木もいない。あいつだって…

きっと悲しい。」


「……」


佐々木。レイルとは昔からの知り合い。あいつも…もういない。


「リートはさ。私たちの何倍も重いもの持ってるでしょ。」


「……そうだな…。」


「まぁ、それに比べたら小さいことかもしれないけど、増やしたくないな〜って。」


「それで俺か。」


「うん。」


「紫電は?」


「紫電?」


「あぁ。」


「…あいつも元気なふりして無理してるってのもあるけど……。」


「?」


「私情。」


「私情…?」


「うん。私情。」


何で紫電だけ私情??


「というか全員、結局私情だろ。」


「確かに。」


ナギが無邪気に笑う。


この時間が続けばいいと思う。でも…いつかは終わる。


ナギが目を細めて言う。


「紫電は…特別。」


「あのバカが?」


「うん。パドだってそうでしょ?」


「…まぁ、そうだな。……特別って何が…」


「それは察して!」


頭には疑問だけが浮かぶ。


ナギの私情……?


ふと気づく。


一つだけ思い当たったそれに、思わず笑いそうになる。


ナギがそっぽを向いている。


「それで…場所は?」


ナギがニヤリと笑う。


「場所はね……」


冬風が吹く。



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