51 ウィンターメモリーⅡ
車が停まる。
降りたナギが伸びをしながら言う。
「ついたぁ〜。」
紫電が荷物を取り出しながら言う。
「ナギ、ピアス外したほうがいいぞ。」
「なんで?」
「なんか、金属製のものつけてると耳が凍傷になるんだって。」
「あんたいつもはバカなのに何で知ってんの。」
「パドがさっきレイルに言ってた!」
「……」
俺はスキーウェアに着替えて、車を降りる。
「紫電。雪玉作ってないで行くぞ。」
「りょーかい。」
サクサクと雪を踏む。
鳴朝はどこか遠くを見ている。
レイルがバシッ!と鳴朝の背中を叩く。
「っ…!」
「ぼーっとすんな!滑って転ぶぞ。アザミみたいに。」
転倒してしゃがみ込んでいるアザミが、涙目で立ち上がる。
俺は思わず聞く。
「大丈夫か……?」
アザミはこくこくと頷いている。
滑って転んでいるわりには、スキーができるというのだから不思議な話だ。
ナギが雪をつんつんと触りながら聞く。
「ていうかさぁ〜。スキーできんの私とアザミだけ?」
「俺はスノボ。」
レイルがあくびをしながら答える。
「じゃあ、未経験組は俺とパドと鳴朝だけか。」
紫電は後ろ歩きをしながら言う。
俺はため息をついて言う。
「こけるぞ。」
「大丈夫大丈夫!」
紫電はそう言ってジャンプをする。
体が空中を舞う。
バク宙を決めた紫電が地面に降り立つ。
俺は再度ため息をついた。
・・・・・***・・・・・***・・・・・
視界を雪が舞う。
空中を一回転したレイルが、慣れた手つきでスノーボードを外す。
「あ゙〜。久しぶりにやったから疲れたわ。」
レイルがベンチに座って言う。
俺は缶コーヒーをレイルに投げる。
レイルは右手で缶コーヒーをキャッチしながら左手で鳴朝の頭を殴る。
「いっ!」
「お前いつまでベンチに座ってる気だ。滑ってこいよ。何のためにお前の分のスキー板借りたんだ。」
「……」
「パドも滑らねぇのか?」
「俺は…今はいい。」
暗い鳴朝の瞳に視線を向けながら答える。
レイルが鳴朝を掴むと歩き出す。
「一回ぐらいやれ。行くぞー。」
「いっ…離せよ!」
レイルが鳴朝を引きずり気味に連れていきながら言う。
「…やっと喋ったな。」
「……」
「さっさと行くぞ。」
止めたほうがいいか……?
立ち上がりかけたとき、ナギに止められる。
「いいって。というか今回のスキーあいつのためだし。」
「……」
ナギはベンチに座る。
白い吐息が吐き出されて溶けていく。
「あいつ…引きずってる感じ?」
「あれは……引きずるだろうな。」
「アザミも元気ないしねぇ〜。」
白い空にぽつりと呟く。
「もう…冬か。」
夏に一人。秋に一人。二人の親友。
ナギが呟くように言う。
「葵葵と透凪が死んで。もう冬。」




