48 昔の敵
「大丈夫?」
朔羽が呆れ気味に凰理に言う。
「大丈夫じゃない…」
横で斗花がヒィヒィ言っている。
俺はリートに言う。
「リートさん…ランニングの回数が……ハァ…訓練のときより多い…ですけど……」
「いや〜。紫電に勝ちたいって言ってるし、厳しめにいこうかな〜って。」
「基地の周り20周はきついです……」
斗花がペットボトルキャップを朔羽から受け取りながら言う。
篠雨も息を切らしている。
朔羽には、練習に付き合ってもらっている。優しい。
「ある程度体力ついたら30周。」
「殺す気ですか……」
「紫電は毎日40周走ってたよ。」
「……」
体力どうなってるんだ。
「ほら!あと一周頑張れ!」
「は…い……」
俺はフラフラと立ち上がる。
足を動かす。
景色が流れる。
一周を終えた俺は地面に座り込む。
何で篠雨は普通に立ってるんだ……
「15分休憩したら別の訓練ね。」
「…別の訓練って何するんですか……?」
「ん〜足運びとか…回避の練習とか剣技の反復とか…斗花は魔法の細かい操作練習。」
「多い…」
「ファイト〜。」
そのときコツコツと鳴朝が歩いてくる。
「遅れてごめんさ〜。」
「おはよう…ございます……。」
「めちゃくちゃしんどそう……あの、お客さん連れてきたさ。」
お客さん?
そのとき聞き覚えのある声が響く。
「凰理!篠雨!」
「烏兎!?」
満面の笑みにいつものジャケットとバンダナ。
「入院中のはずじゃ……」
「治ってないけど外出許可もらってん。」
篠雨が怒ったように言う。
「治ってないなら走るな!」
「ゴメンゴメン。」
「ホントにそうですよ。」
ふいに入った声に俺は後ろを見る。
俺は元気よく言う。
「お!佐竹!久々だな!海外出張、リートさんと入れ替わりで行ってたんだろ?」
「はい。」
「最近会えてなかったから寂しかったぞ〜!!」
「だからって、大量にメール送るのやめて下さい。」
「……」
鳴朝が苦笑いしている。
烏兎がジュースを飲みながら言う。
「みんなしんどそうやなぁ〜。」
「ランニングの回数が多いんですよ…」
斗花が疲れたように言う。
「まぁ、勝つんやったら頑張るしかないな。」
「そうですよね〜。」
「あ、俺の怪我治ったらみんなでどっか行こ!」
「え!それいいですね!!」
斗花が目をキラキラさせている。
俺は篠雨に言う。
「烏兎って人の緊張ほぐすのうまいよな。」
「そうだな。」
リートがおにぎりを片手に鳴朝となにか喋っている。
俺はリートに聞く。
「あの、リートさん。」
「ん?」
「レインって一体何なんですか。」
沈黙。
かすかに聞こえる蝉の声が響く。
青い空を雲が覆う。
地面の明度が下がる。
ぽつりと呟く。
「…昔の…敵さ。」
「昔の…敵……?」
俺は復唱しながら首を傾げる。
おにぎりのゴミを、袋に入れながら、リートは言う。
「うん。昔のね。あいつは緑人のせいもあるけど、味方の裏切りで大怪我を負ったんだよ。それで…崖から
落ちた。」
「!?」
「下は海でね。探したけど見つからなかったんだ。…あいつなら私のことも、パドのことも。紫電のこと
も。知ってる。」
「……」
リートが最後に冗談交じりの明るい声で言う。
「今度こそ捕まえるよ。」




