43 決意
俺は天井を見つめる。
昼斗たちは帰り、篠雨は寝ている。
俺はポツリと呟く。
「何にも。できなかったなぁ……」
あのゾッとするようなすみれ色の瞳を思い浮かべる。
血飛沫の光景が目に焼き付いている。
守れなかった。
一撃を防ぐこともできなかった。
篠雨はすごいな……一撃…防いでたし、銃弾にも気づいてた。
斗花は篠雨を助けた。
烏兎も緑人になりそうだった人を助けたし。
篠雨の寝息がかすかに聞こえる。
「俺…何も……できてない。」
カタン。
「?」
何かの衝撃で落ちたのか、俺のカバンに入っていた炎帝が床を転がる。
炎帝を拾い上げる。
俺は炎帝を見つめる。
「強く…なる。」
もっと。次は絶対……
炎帝が夕日の光を受けて橙色に染まっている。
カバンに炎帝をしまう。
俺はゆっくり、床に足をつける。
烏兎…どこだろ。
起きたのかな……?
不安な気持ちを抱えたままスリッパを履いて歩く。
廊下に出る。
パドさんは集中治療室とかにいるのかな……
暗い気持ちで歩いていると看護師さんに呼び止められる。
「鳳宮さん?」
「うっ……」
「病室は向こうですよ。」
「いや…」
「安静にしてて下さい。」
「あの…烏兎に……」
「今はできません。あなたも怪我してるんですから。」
「えぇ…あの、オネガイシマス!」
「無理です。」
どうしよ……
突然知らない男性の声が聞こえる。
「そいつと見舞いに行っていいか?」
「?」
黒いパーカーを着た男性が俺の隣にいつの間にか立っている。
フードで顔はよく見えない。
「お見舞い…ですか?」
「あぁ。天城烏兎の。」
「えっと…」
「親族だ。さっき面会許可もらった。」
「そうですか…ですが、鳳宮さんにはまだ安静に……」
「俺が付き添う。それでも無理か。」
看護師さんは困ったような表情をして言う。
「…少々お待ちください。確認してきますね。」
俺はパチパチと瞬きをする。
「えっと……」
男性は無言で立っている。
しばらくして看護師さんが戻ってくる。
「お待たせしました。担当者に確認したところ、短時間ならいいそうです。ですが、鳳宮さんも怪我をなさ
ってるので、無理はしないでくださいね。」
「はい!」
俺たちは歩き出す。
この人…誰だろ。
「えっと…ありがとうございます。」
男性は無言で頷く。
しばらく進むと男性が一つの病室の前で止まる。
カラリとドアが開く。
機械が置かれている中、ベットに人工呼吸器をつけた烏兎が寝ている。
規則正しい電子音が聞こえる。
よかった……
無事なのは知っていたが、やっぱり少し不安だった。
男性はじっと烏兎を見つめていたが、持っていた袋を椅子に置くと言う。
「…俺が来たことは誰にも話さないでほしい。」
「えっ…?わ、わかりました……」
「ありがとう。」
静かな空間の中、男性は歩き出す。
「俺はもう行く。お前もそろそろ戻れ。」
「えっ、あ、はい……」
黒い背中が消えていく。
誰だったんだ……?
ピッ。ピッ。ピッ。
と音が響く。
俺は烏兎を見つめる。
「俺…強くなるから。今度はちゃんと……守り切る。」
沈黙だけが返ってくる。
「早く…起きろよ。みんな…心配してるからさ……」




