36 行き先で
俺はあくびを噛み殺しながら車に乗り込む。
「おはよう。」
「うわぁ!びっくりしたぁ。」
隣でパドがため息をついている。
「何かいつもと服…違いますね。誰かと思った。」
「狙われてる可能性があるから、少しは服装変えないとな。」
いつものTシャツとワイドパンツ姿とは違い、キャップを被って濃紺のロンT、黒の細身のズボンを履いて
る。
「なんか全体的に真っ黒ですね。」
「うるさい。」
篠雨が運転席に座る。
「おはよ!」
「おはよ。」
「あれ?烏兎は?」
「助手席で寝てるぞ。」
「えっ…ホントだ。いつの間に……」
そのとき斗花がバタバタと走ってくる。
「斗花?あれ?俺たちだけじゃ……」
「えっと、その、あ、えっと…わ、私!指導は終わってるんですけど、実戦経験ということでご一緒させて
いただきたくて……」
明里がひょっこりと姿を現す。
「ということで頼むよ。私と鳴朝は狙われてるかもしれないから動けないし。」
「は、はい!了解です。」
・・・・・***・・・・・***・・・・・
「それにしても完全に休暇潰れたなぁ……」
起床した烏兎が残念そうに言う。
篠雨が運転しながら言う。
「今度行けばいいだろ。」
俺は首を傾げて聞く。
「何か篠雨がそんな事言うの意外だな。」
「うるせぇ。」
それにしても…紅音さんと重治さんの旅館ほとんど泊まってないし『またおいで。』って言ってたから絶対い
かなきゃな。
「あの、パドさんは休みのとき、どっか行ったりするんですか?」
パドは窓の外を見ながら答える。
「行かないな。」
「へぇ〜。」
斗花が不安そうに言う。
「明里さん、『休暇潰れちゃったし、護衛がてら買い物でも楽しんできて!』って言ってましたけど…大丈夫でしょうか。」
「まぁ…確かに。」
今日の目的地はなぜかデパート。パドさんに何でか聞いても教えてくれない……
「日曜日だから混んでそうですね。」
斗花の一言に篠雨が不満そうな表情をする。
「そういえば、パドさんだけ情報の場所知ってるって言ってましたけど…どういうことなんですか?」
俺の質問に少しの間のあと、ポツリと答える。
「……教えてもらったからだ。」
「?」
そのとき、車が停まる。
降りた烏兎が言う。
「マジのデパートやん。」
「そりゃそうだろ。」
篠雨があくびをしながら答える。
パドが歩き出す。
賑わっている人混みを見て篠雨がため息をつく。
「人混み嫌い?」
「嫌いだ。」
パドはスタスタと迷いなく歩く。
斗花が
「色々売ってますし、今度皆さんで行きたいですね!」
「そうだな!夏帆誘ったら絶対買いまくるな。あいつ、買い物好きだから。」
「そうなんですか……」
パドについていく内に、ゲームセンターの近くまで来る。
篠雨は不機嫌そうで、楽しく雑談しているのは俺たちだけだ。
無言で歩き続けていたパドが足を止める。
休憩用のベンチが置かれている場所に、ポツンとゲームの機械が置かれている。
ゲームセンターに何で置かれてないんだ?
目の前に大きな画面があって、手元にタッチパネルがある。
パドはじっとそれを見つめていたが視線を移す。
「篠雨、やってくれ。」
「俺ですか?」
「あぁ。」
画面を覗き込むと、『色々クイズ』と適当につけてそうなゲームタイトルが表示されている。
タッチパネルを篠雨がタップする。
烏兎が画面に表示された文字を見て言う。
「名前入れなあかんねんな。」
画面には『名前を入れてね!』と書かれている。
パドがタッチパネルで『1121』と入れる。
数字……?
そしてゲームがスタートする。
『クイズに答えてね!』
『【第1問】
1から1000までの整数のうち、
「3の倍数でも5の倍数でもない数」の個数を求めよ。
ただし、計算機の使用は禁止。 』
篠雨がタッチパネルに表示された選択肢を、問題を見た瞬間に押す。
『533!正解!』
沈黙。
俺はポツリと呟く。
「だから篠雨か……」
『【第2問】
江戸時代、徳川吉宗が行った享保の改革において、
大名に米を納めさせる代わりに参勤交代の江戸滞在期間を短縮した政策を何という?
A. 上げ米の制
B. 公事方御定書
C. 相対済し令
D. 株仲間 』
『A. 上げ米の制!正解!』
斗花は出てくる問題にわからないのかずっと首を傾げている。俺も全く分からない。
篠雨は一度も間違えることなく解いていく。
『【第6問】
古代ローマにおいて、紀元前287年に成立し、平民会の決議が元老院の承認なしに全市民を拘束することを認めた法律は何か?
A. 十二表法
B. カヌレイウス法
C. ホルテンシウス法
D. リキニウス・セクスティウス法 』
『C. ホルテンシウス法!正解!』
「もうヤバすぎるやろ……」
烏兎がため息をつく。
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