35 新任務
「護衛?」
俺は首を傾げる。
いつの間にか海外から帰ってきたリートが答える。
「うん。パドの護衛。」
書類が机に置かれる。
「ノワールたちのことについて多少わかったんだ。」
書類に視線を落とす。
「もっとよく知るために取りに行かなきゃならないものがある。」
「?」
「場所を知ってるのはパドだけ。誰にも話せないんだ。」
「だから護衛を……」
「うん。凰理たちに頼みたいんだ。」
篠雨が聞く。
「何で俺たちなんですか。」
「これ。」
リートがスマホの画面を見せる。
「ニュース?」
と斗花が呟く。
『
【速報】監査局幹部、何者かに襲撃される 命を狙われた可能性
今日午前、監査局に所属する重要人物が移動中に何者かから襲撃を受ける事件が発生した。
関係者によると、襲撃者は対象者の行動を事前に把握していたとみられ、周囲には複数の人物が確認されていたという。
対象者は負傷したものの、命に別状はない。
監査局は現在、襲撃の目的や犯人の特定を進めている。
また、今回の事件を受け、監査局では一部の重要人物に対する警備体制を強化する方針を明らかにした。
』
リートがスマホの画面を変える。
『
監査局へ
次に狙うのは、組織にとって重要な人物だ。
すでに標的は決まっている。
どれだけ護衛をつけようと、どれだけ居場所を隠そうと意味はない。
その人物がどこへ行くのかも、誰と行動するのかも、こちらは把握している。
次に名前が報じられるのは、あなたたちが守ろうとしている人物だ。
――Nullより
』
「……誰が狙われるか分からないからね。重要人物には全員護衛をつけることにしたんだけど、ここは人手
不足。使える人材は使わないとっていうことでね。」
「…誰からなんですか。」
俺はメールの内容を見つめながら言う。
「わからない。発信元は偽装されてた。…ノワールたちの可能性は低いと思うよ。わざわざこんな大袈裟な
ことをする理由が分からない。気をつけないとノワールたちが返り討ちに遭うかもしれないしね。」
「……じゃあ、パドさんを狙ってる相手は…」
「さっぱり分からない。」
「……」
狙われている本人は無言で壁にもたれている。
「だからこそ、早く動く。」
明里が元気よく言った。
「明朝出発。よろしくね。」
・・・・・***・・・・・***・・・・・
俺の横で鳴朝が缶コーヒーを飲んでいる。
その横でフレンは熟睡。
篠雨は明里の手伝いでいない。
烏兎は用事で帰宅。
パドは壁際に立っている。
斗花が気まずそうに視線を落とす。
俺はごくごく水を飲む。
沈黙。
ついさっき明里が、
『じゃあ、もう少ししたら時間できるから、鳴朝見張っといて!』
と言って立ち去った。
気まずい…何喋ろう……
鳴朝が視線を何も無い宙に向けている。
そのときパドがふっと笑う。
「相変わらず困ったら、視線をそらす癖は治らないな。」
ほとんど見ないパドの微笑みに俺は驚く。
そんなに仲いいのか?この二人。
俺は聞く。
「二人って仲いいですね。」
鳴朝が視線をそらしながら言う。
「うん、まぁ、そう…かな。」
そのとき明里がやって来て、鳴朝を掴むなり言う。
「じゃ、行くよ。」
「え、あ、ちょっと……」
引きずられていく鳴朝を見ながら、パドがため息をついた。




