30 つかの間の休憩
電車の音が響く。
窓の外は雑木林で包まれている。
凰理はあくびをする。
「結構遠いんですね。」
俺は明里に聞く。
「そうだね。まぁ、でものどかで良いところだよ。」
「へぇ〜楽しみです!」
篠雨はいつも通り本を読んでいる。
窓の外を見ていた烏兎が「あ!」と声を上げる。
俺も窓の外を見る。
静かな田園風景が続いている。
きれいだなぁ……
明里は懐かしげに、篠雨は無表情で流れていく景色を見つめている。
「そういえば、篠雨の育て親って言ってましたけど本当の……」
「本当の親はね、死んじゃったんだよ。」
「…!!…そうなんですか……」
俺は小声で言う。
「篠雨…ごめんな。」
「別にいい。」
篠雨は本をめくっている。
烏兎はどこから出したのかカメラでパシャパシャ写真を撮っている。
「写真撮るの好きなのか?」
「うん。得意やねん。」
写真を覗き込むと、綺麗な田園風景が映っている。
「へぇ〜。すげぇな。」
「やろ?そういや、篠雨は何読んどるん?」
「…量子力学。」
「………?」
「……。」
俺は本を覗き込んで言う。
「これ、日本語?」
「日本語だ。」
「……明里さんはわかるんですか?」
「わかるよ?」
「え…。」
「簡単に言えばミクロの世界だね。」
「はぁ……」
何でそんな難しそうなの読んでるんだ……
しばらくすると電車が止まる。
着いた!!
駅のホームは古びていて静かだ。
周りは民家数件に山、田んぼ。
「静かだなぁ……」
目をキラキラさせながら、烏兎が写真を撮っている。
道を歩いていると、木造の大きな建物が見える。
「あれなんですか?」
「私の実家だよ?」
「え!?」
「私の家は旅館をやっててね。」
「え……」
意外だ……
「営業中だから裏口から入るよ。」
「はい!」
木造の引き戸を開ける。
中にいた仲居さんらしき女性が笑顔で言う。
「お久しぶりです。明里さん。」
「久しぶり。」
「女将さんなら部屋ですよ。」
「わかった。ありがとう。」
烏兎が俺に
「めちゃくちゃここ高級そうやねんけど。」
「だな。」
和風感が漂っていて、きれいだ。
篠雨がスタスタと明里を追いかける。
俺たちも少し遅れてついて行く。
しばらく歩くと明里が一つの部屋の襖を開ける。
「やぁ。来たよ。」
明里が片手を上げて中にいる人物に言う。
中を覗き込むと60代ぐらいの男性と女性が、座布団に座っていた。
「えっと…こんにちは?」
「こんにちは〜よく来たね〜。」
女性がニコニコと言う。
烏兎が小声で篠雨に聞く。
「この人たちってさ……」
「明里さんの両親だ。」
「なんか思ってたんとちゃうな……」
男性はお茶を飲みながら俺たちに言う。
「重治だ。よろしく。」
「よ、よろしくお願いしまーす。」
女性が俺の手に何故かまんじゅうを握らせて言う。
「紅音よ。ゆっくりしていってね。」
何でまんじゅう……?まぁいいや。後で食べよ。
明里が
「じゃあ、部屋に行くからついてきて。」
と言って歩き出す。
追いかけながら俺は周りを見渡す。
木の匂いがして窓から庭が見える。
一般のお客さんがちらほらいる。
やっぱきれいなところだなぁ…
そう考えていたときだった。
ドタドタと足音が聞こえて、目の前で女性が転倒する。
「うおっ!大丈夫!?」
「す、すいません!」




