28 明里
篠雨が椅子をガタッと揺らして立ち上がる。
「明里さん何でここに……!」
「いたらダメだったかな?」
「いや、そういうわけじゃ…」
何だ……?誰だ?
俺は烏兎に聞く。
「誰か知ってる?」
「いや、知らん。」
明里という女性が言う。
「初めまして。」
「は、初めまして……」
そのとき、パドの大声が響く。
「明里!!」
「やぁ、パド。久しぶりだね。」
数人の隊員が何事かと振り向いている。
「お前…!連絡もなしになんでここに……」
「別にいいじゃないか。」
「よくない!」
「それにしても相変わらず細いね。ちゃんとご飯食べてるかい?」
「余計なお世話だ!それに今その話はしてない!」
「話変えたかったのに。」
「変えるな!!」
「パドって面白いけど真面目な所多いよね〜。」
「話を変えるな!」
誰だこの人?知り合い??
頭が疑問でいっぱいになる。
「さてと、この子たち借りるよ。」
「何の話だ。説明しろ。」
「え〜。」
「あの…パドさん。この人って……?」
俺が聞くと明里がニコニコしながら答える。
「自己紹介が遅れたね。私は霞城明里。監査局局長で篠雨の育て親さ。」
へぇ〜って、ん?
「育て親!?」
「監査局!?」
俺と烏兎が驚いた様子で言う。
篠雨は無表情で黙っている。
烏兎が聞く。
「か、監査局の局長がなんでここに……」
「監査局って何だっけ……」
「何で知らへんねん……。諜報とか組織内の不正を取り締まったりする部署や。」
「なるほど……」
そういやそんなのあったな……
明里が言う。
「私の実家に行こうと思っていてね。一緒にどうかな?」
「ちょっと待て。何を企んでる。」
「企んでるなんて人聞きが悪いよ?パド。ちゃんと旅費も出すし。怪我の療養も兼ねた休暇を楽しんでほし
いんだよ。」
「休暇を兼ねた仕事の間違いだろ。」
「違うよ。ちゃんとした休暇さ。」
「嘘をつくな。目が笑ってないぞ。」
「君こそ相変わらず目つきが悪いね。」
「今その話はしてない!」
「篠雨は行くよね?」
「はい。」
「君たちは?」
聞かれて俺は即答する。
「行きます!!!」
「言うんはやっ!」
「そういう烏兎はどうするんだよ!」
「え〜。どないすんって言ってもなぁ……まぁ俺、怪我してないし仕事兼ねてでもええか……。」
「ということで、パド。借りてくよ?」
明里が爽やかな笑顔で言う。
パドは苦いものでも飲み込んだような顔をしている。
蝉の声が響いた。
・・・・・***・・・・・***・・・・・
足音が響く。
無機質な金属でできた観音扉が開く。
ノワールは赤いビロードの絨毯に足を踏み出す。
円形の机の上にトランプが散らばっている。
空っぽの椅子がいくつかある。
椅子に座った人物が数人、ノワールに視線を向ける。
一人の少年が頬杖をついて言う。
「ノワール久しぶり〜。」
ボブカットの黒髪に鉄紺色の瞳が不気味に笑っている。
その横で一人の男性が椅子の上で膝を抱えて座っている。
白いイヤホンが耳についている。
リゼが不満そうな表情で椅子に座っている。
アフタヌーンドレスの女性が指を鳴らす。
トランプが消えて人数分の紅茶が現れる。
その女性は微笑んで言う。
「始めましょ?」




