27 日常
重い空気が立ち込めている。
俺は正座で床を見つめる。
篠雨が片手にギブスで眠たげに立っている。
烏兎はめちゃくちゃ焦っている。
蝉の声が聞こえる。
パドが無表情で言う。
「我々の仕事は緑人の討伐であって、建物の破壊ではないはずだが。」
目線をそらしながら俺は答える。
「そ、そうですね……」
「だが、先日の宗教団体の件でお前は民家数件を破壊したようだな。」
「えっと……」
「俺の指示は増援が来るまでの足止めで、緑人の討伐ではないはずだ。」
「は、はい……」
「だが、お前たちは討伐に向かい民家破壊の挙句に、篠雨は怪我。お前たちは何をやってるんだ。」
「すみません……」
烏兎は固まっている。この状況でのんびりしているのは篠雨だけだ。
パドが続ける。
「烏兎はともかく、篠雨と凰理。特に凰理だ。」
「え!?俺ですか!?」
「当たり前だ。」
「……」
パドはため息をつくと言う。
「まぁ、緑人を倒したことに関してはよくやった。」
「ありが…」
「だが、やりすぎだ。」
「……」
「明日から二日休みだ。ゆっくり休め。」
そう言うとパドは部屋から出ていく。
烏兎が息を吐き出す。
篠雨は飴を取り出して口に放り込む。
「疲れた〜。」
俺はそう言って立ち上がる。
それにしても何で俺だけ正座……?
窓から夏の日差しが差している。
指導員の仕事は終わり、朔羽と日月はいない。
だが、パドが『また頼む』と言っていたからまた会えるだろう。
それに、連絡先も交換したしな……
烏兎が、
「なぁなぁ、昼飯食いに行かへん?」
と言う。
「そうだな!腹減ったし。」
篠雨が飴を噛み砕く。
廊下に出ると暖かい空気が俺たちを包む。
暑いな……
食堂は程よい賑やかさでたくさんの隊員がいる。
カレーを口に運びながら烏兎が言う。
「それにしても、この基地来たときびっくりしたわ〜。学校かと思ったもん。」
「あ〜。」
俺たちの働いている、この第6支部は廃校になった中学校を改造して作られた場所だ。
外見は学校の面影が残っていて、撤去されていない鉄棒なども残っている。
篠雨は基本的に食事中は黙っているので静かだ。
ふと、烏兎が思いついたように言う。
「あのさ、明日と明後日休みやしさ、三人でどっか出かけへん?」
「いいなそれ!」
「やろ?」
篠雨は黙り込んでいる。
「篠雨も行くだろ!」
「行かねぇ。」
「え〜!行こうぜ〜。」
「揺らすな。」
篠雨が俺の足を踏みながら聞く。
「具体的にどこ行くんだ。土日だから混んでるだろ。」
「今から考える!」
「……」
烏兎が
「みんなで遊べそうなとこないかな……」
と呟く。
俺は元気よく言う。
「遊園地!」
「俺、絶叫系苦手やから何も乗れへんねん。」
「じゃあ、水族館!」
篠雨が容赦なく言う。
「混んでる。」
「映画!」
「何見るんだ。」
「ゲームセンター!」
「俺はそこ嫌いだ。」
「ショッピングモール!」
「混んでる。」
「じゃあ、どこ!?」
「知るか。」
「篠雨はどこ行きたいんだよ!」
「別にどこでも……」
篠雨がいいかけたとき、白い手が俺たちの間に伸びる。
「里帰りっていうのはどうかな?」
聞いたことのない女性の声。
長い髪。淡い金色の目。
篠雨が口を半開きにして女性を見上げている。
女性がニコニコしながら言う。
「久しぶりだね篠雨。」




