20 対峙
篠雨は引きずられながら刀でツタを切る。
舌打ちをして周りを見渡す。
目の前の扉が少し開いていて、切ったツタが落ちている。
何か小さな機械の音が聞こえる。
通信機をいじっても、ただノイズだけが響く。
出れそうなのはあの扉だけか。
グレーの扉をゆっくり開ける。
「…!」
機械音が響く。
薄暗い空間に大量のガラスの箱が並べられている。
ガラスケースの中で緑人が俺を見る。
俺の足音が響く。
うめき声をあげるだけで緑人が襲ってくる気配はない。
何だここ……
目の前のガラスケースに目を向けると、『102』と番号が書かれている。
103…104……
不気味な静寂が俺を包んでいる。
108…109、110……
緑人は部屋の隅にうずくまっていたり、ガラスを叩いていたり反応は様々だ。
だが、一人も人間がいない。
俺はただ進む。
195…196…197、198、199……
俺の足が止まる。
目の前に一つの培養槽のようなものがあった。
200と番号が振ってある。
とても小さく何かが中で揺蕩っている。
……目玉?
青灰色の瞳が浮いている。
丸い瞳孔に戸惑っている俺の顔が映る。
ふと気づく。
緑人がじっと目玉を見つめている。
何なんだ……?
そのとき俺は刀を掴む。
振り返るとグレーのコートを着た茶髪の男が立っている。
男が俺の顔を見た瞬間言う。
「げっ…。これ気づくのかよ……お前と戦うのめんどくさそうだから、後ろから殺そうと思ったのに。」
俺は刀を構える。
「ひぃ〜やる気か…いやだな……絶対めんどくさい。」
男がそう言いながら身構えた。
・・・・・***・・・・・***・・・・・
「ん〜。なんも出てこうへんな……」
烏兎がカメラの映像を見ながら呟く。
朔羽はジュースを片手に画面を見つめる。
「凰理たちのほうで進展あるといいけど……」
僕は烏兎と椅子にもたれながら作業を続けていると、部屋の扉が突然開く。
振り返ろうとしたとき、烏兎に引っ張られる。
「!?」
見ると、僕の座っていた椅子に深々と岩のトゲが刺さっている。
「あれ〜?完全に不意打ちしたはずなのに。」
ドアに女性が立っている。中性っぽい見た目、ピンクのティアードスカートと黒のライダースジャケット。
昨日、道路を岩の壁で封鎖していたあの女性だった。
「ワタシ、リゼ。君たちを殺しに来たの。よろしく〜。」
「…!」
リゼはニコニコと笑いながら岩のトゲを僕たちに向ける。
烏兎が無表情で言う。
「お前…昨日のやつやろ。」
「へ〜。覚えてくれてたんだ。」
「凰理たちはどうなっとる。」
「ん〜?あ〜。アイツラのことね〜。さぁ、今頃緑人にでもなってるんじゃない。」
「お前……」
そう呟いて、俺は銃を構える。
リゼが肩をすくめて言う。
「二人揃って怖いなぁ〜ちょっと落ち着きなよ。ね?それに人に銃向けちゃダメでしょ。」
僕は手に力を込める。
そのとき烏兎が朔羽に言う。
「なぁ、朔羽くんはここで待っててくれへん?」
「はぁ?なんで…」
「ええから。」
烏兎の笑顔に俺は黙り込む。
リゼが言う。
「助け呼んでって言えばよかったのに。」
「逃がしてくれへんやろ?」
「ま、そうだね〜。」
烏兎が走り出す。
雷の音と岩とナイフがぶつかる音が響く。
「ナイフ、岩を受け流すのにしか使ってないけど、ワタシに向けないと倒せないんじゃない〜?」
「どうやろなぁ〜。あんま怪我させたくないねん。」
距離を取って息をついている烏兎に、リゼが意地の悪い笑みを浮かべて言う。
「そんな風に遠慮してたら死んじゃうよ〜?君さぁ、魔力が人より少ないんでしょ。雷でちょっと早く移動
してただけで、息切れしてるじゃん。」
「……」
「ほら、来なよ。」
リゼが笑った。




