19 白
レカムについて行きながら俺は周りを見渡す。
一本の地下通路がずっと続いている。
この状況でも昼斗はヘッドホンを装着して眠そうに歩いている。
しばらくして扉が現れる。
レカムがその扉を開ける。
広がっていたのは少し広い長方形の部屋で四角いタイルが床に敷き詰められている。
何だこの部屋?
レカムが部屋の中にある扉を開ける。
そして困惑している俺たちに言う。
「今から皆さんに洗礼を受けてもらいます。」
「?」
何言ってるんだ?
レカムは一歩下がると扉を閉める。
俺たちだけが残された空間にレカムの声が響く。
「私たちは緑人となることで高みへ行くことができると考えています。」
「!?」
緑人に……
天井が音を立てて開く。
ボトッという音とともに3つの大きな植物の塊が落ちてくる。
緑人はぎょろりとこちらを見る。
夏帆が小さく呟く。
「最悪……」
なんてこった…
俺は薬を飲んで静かに炎帝を掴む。
そのとき急に視界が歪む。
「何だ…これ……!!」
緑人の技じゃない…誰が……
気持ち悪くなってきたのか、日月が口をおさえている。
夏帆が呟く。
「…この状態で戦闘はきついわね……」
緑人がギョロギョロと瞳を動かしている。
どうする……
そのとき篠雨が刀を抜く。
「……?」
篠雨は考えるような顔をしていたが、刀を握り直して言う。
「全員動かないで待ってろ。」
「へ?」
篠雨がブツブツなにか呟く。
「…縦横30cm。だいたい90枚……目標は37枚目…」
どうしたんだ?
緑人がうめき声をあげる。
篠雨は目を閉じると静かに息をつく。
そして走り出す。
緑人が伸ばすツタを紙一重で避ける。
地面を蹴る。
緑人の上に乗ると刀を突き刺す。
悲鳴が響く。
目を…つぶったまま……
緑の液体が白を染め上げる。
うめき声が聞こえなくなったころ、篠雨は目を開ける。
呆然としている俺の顔面を叩くと言う。
「早く行くぞ。」
「いった…叩くなよ……」
夏帆が
「どうやったの……」
「タイルを目印にしただけだ。」
「普通無理!」
「何で目を閉じたんだ?」
俺が聞くと、
「目を閉じときゃ、景色の歪みようがないだろ。」
「確かに!」
昼斗が言う。
「…で……ドア蹴破るの?」
「そうだな!」
俺はドアを押してみる。
ギィ。
あれ?開いてる。
俺たちは暗闇に足を踏み出す。
ひんやりした風が足元を流れる。
黒い壁に挟まれて俺たちは進む。
「いつまで続くんだこれ……?」
そのとき白い扉が暗闇から現れる。
俺は炎帝を片手に扉を開ける。
さっきと同じような部屋でなぜか、部屋の中央を中心に大量に木の椅子が円形に並べられている。
日月が呟く。
「なんだこれ……」
夏帆が指差して言う。
「ねぇ、あそこなにかあるけど。」
「ん?」
指し示した方向を見ると、椅子の群れの中央がぽっかり空いていて何か見える。
何だ……?
近づいてみると、そこには大きな穴があり水が溜まっていた。
「何でここだけ?」
俺は首を傾げる。
その穴は底が見えず、ずっと続いているように見える。
日月が穴を覗き込んでいる。
突然静かな空間にバシャという音が響く。
「!」
篠雨が刀を抜く。
水しぶきに混じってツタでできた手が現れる。
刀が光を反射する。
だが刀は空を切る。
篠雨の肩をツタが掴む。
「!?」
「篠っ…」
バシャ。
水面がただ波打っている。
「篠雨!」
俺は飛び込もうとするが昼斗が俺の肩を掴む。
「昼斗…!」
「見て。」
底のなかったはずの穴に石タイルの床が敷き詰められている。
「なっ……」
「たぶん、魔法で連れてかれた。」
「どうやったら助けに行ける!」
「転移系の魔法なら、とりあえず探すしかないね。」
「……」
俺は水面を見つめた。




