18 壁
鳴朝は急ブレーキをかける。
「何これ……」
大きな壁で道路が塞がれている。
盛り上がったアスファルトの壁の上で一人の女性が笑う。
「びっくり〜?逃げ道塞がれて最悪だね〜?」
中性っぽい見た目の女性で赤紫のショートカットにピンク色のティアードスカート。黒いライダースジャケ
ットが街灯の光を跳ね返している。
「後ろの女の子いなくなったら寂しいね〜。ワタシが遊んであげよっか?」
「結構。」
「残念〜。逃げようとしてもダメだよ?後ろからはノワールちゃんが来てるし。」
鳴朝が静かにポケットに手を入れたとき。
「何してるんですかー!!」
暗闇に突如響く大声。
壁の向こうで凰理は大声をあげた。
・・・・・***・・・・・***・・・・・
壁の上に立つ女性に俺は言う。
「こんなところに壁作ったら邪魔ですよ!」
俺の横に呆れた顔をした篠雨が立っている。
日月が呟く。
「邪魔とかどうとかの前にこれ、犯罪でしょ。」
女性は面倒くさそうな表情で言う。
「もうちょっとしたら片付けるから待ってよ。」
「おいしょ。」
その声に女性は横を向く。
いつの間にか壁を登ってきた凰理と翼で飛んできた烏兎が立っていた。
「あ!ほら、バイク困ってるじゃん。ん?」
俺は目をこらす。
ノワールが姿を現す。
「あぁー!!この前の!パドさんのとこに来た……えっと何だったけ?」
「ノワールや!」
烏兎の言葉に篠雨が背中のバックを掴む。
ノワールがため息をついて言う。
「最悪のタイミングでめんどくさい邪魔が入りましたね。」
そのときノワールが手を上げる。
「邪魔が入りましたし、また他の機会にお話します。」
「?」
コツ。
突然響いた足音に俺は横を向く。隣にはアフタヌーンドレスを着て、つばの広い黒い帽子を被った女性が立
っていた。
女性が指を鳴らしたと同時にふっとノワールたちの姿が掻き消える。
「!?」
そこに残ったのは、俺たちとバイクの人。
俺は下に降りてバイクの人に言う。
「あの、だいじょ…」
突然のエンジン音。
バイクはハンドルを切って逃げるように、壁と反対方向に走り去っていく。
「……あれ?」
逃げられた……
俺はただ一人、そこに立ち尽くしていた。
・・・・・***・・・・・***・・・・・
翌朝。
レカムが微笑みながら色んな人と喋っている。
篠雨はやはり柱が気になるのかじっと見ている。
建物はとくに昨日と変わりはない。
昨日といえばノワールたちはいったい何だったんだ…?
パドさんに連絡したけど、「わかった。」しか言わなかったし。
考えていると気づけば人は俺たちしかいない。
レカムが言う。
「今日は、皆さんにお見せしたいところがあるんです。」
「?」
レカムは石像の裏に回ると、台座をペタペタ触る。
何してるんだ?
そのとき、ギィという音とともに台座に仕掛けられた隠し扉が開いた。
「…!?」
レカムは静かに階段を降りていく。
「…行くぞ。」
篠雨はそう言うと、バックのベルトを握って歩き出す。




