17 暗闇に天使は踊る
生ぬるい風が吹く。
濃藍の目に赤い空の光が映る。
少女は一人、道を歩く。
やがてその足が止まる。
一人の男性が立っている。
黄色いスタジャンが揺れる。
アビエイターゴーグルが日光を反射する。
男性は黒いバイクにもたれて言う。
「あ〜。いたいた。約束の時間、間違えたかと思ったさ。」
「……」
「…相変わらず冷たい。」
「……」
「そろそろ何か言って……」
「……帰る。」
「開口一番それ……まぁ、分かったさ。」
男性はバイクにまたがる。
少女も渡されたヘルメットを被って、後ろに座る。
静かにバイクが走り出す。
風に少女の髪がたなびいている。
空が黒く染まった頃、男性はバイクを路肩に止める。
「……鳴朝?」
少女は不思議そうに問いかける。
鳴朝は目の前の人物を見つめながら言う。
「お客さん。」
黒コートが闇に溶ける。
ノワールは静かに言う。
「探したよ。」
「大迷惑さ。」
後ろから黒いワンピースを着たソフィアと、スーツの大男が現れる。
鳴朝は冷たく言う。
「ここ一週間付け回してめんどくさい。何のご用件?」
「すこし…協力を頼みたくてね。」
「残念だけど、まともに話したの今日が初めてなのに協力なんて無理さ。」
「私が協力を頼みたいのは後ろの少女だ。」
「得体のしれないやつとフレンと話なんてさせる気ない。」
「ずいぶん過保護だな。」
大男が笑みを浮かべて言う。
「危害でも加えられたら怖いさ。」
鳴朝はそう言いながら、バイクのハンドルを握り直す。
ソフィアが身構える。
暗闇にエンジン音が響く。
「どいて欲しい。」
その言葉にノワールは銃を取り出しながら言う。
「お断りしよう。」
「じゃあ、無理矢理…」
「鳴朝。」
フレンが鳴朝の肩に手を置く。
「…そんなに緊張してたら、帰ってゆっくりドラマの続き見れない。」
鳴朝の手のひらはじっとり汗をかいている。
大男が一歩踏み出す。
「……鳴朝。アクセル。」
フレンがそう言うとともに、鳴朝はアクセルを踏み込む。
ノワールが引き金を引く。
銃弾が空を飛ぶ。
フレンが静かに見つめる。
そして、銃弾は静かに空中で停止した。
「!?」
鳴朝はハンドルを切って、ノワールを避ける。
大男が走って迫ってくる。
そのとき、反射的に大男はしゃがむ。
空中で止まっていた銃弾がビュンと大男の頭の上を通過した。
「何だ……!?」
大男が追いかけようと立ち上がるが、ノワールが言う。
「轟刃。もういいよ。大丈夫だ。」
轟刃は不満そうに言う。
「あいつら仕事できるんですか。」
「あいつらも一応上司。言葉遣いは丁寧に。」
ソフィアの言葉に轟刃は舌打ちをする。
ノワールはただ暗闇を見つめた。




