15 夕闇の中で
「よろしくお願いします。」
俺は昼斗にコソッと言う。
「結構美人だな。夏帆とは大違い…いって!」
夏帆に足を踏まれて俺は小さく悲鳴を上げる。
昼斗は首を傾げている。
「ご案内します。」
レカムはそう言うと歩き出す。
建物の中は静かで、数人の人々が手を合わせて台座の上の謎の石像に祈っている。
今のところは普通か……違法って具体的に何なんだ?
ふと篠雨が一本の柱を見つめている。
「?」
どうしたんだ?
篠雨がポツリと呟く。
「……クロイア。」
「??」
篠雨が無言で歩き出す。
俺も柱を見つめてみるが、模様の入ったただの柱だ。
……後で篠雨に聞いてみるか。
そのあと、建物の中をぐるぐる見学したが普通で違法行為の、いの字もない。
何かあったといえば、篠雨が他の柱も見つめて何か考えていたぐらいだ。
夏帆が呟く。
「この石像、何なんだろ。」
「さぁ。動物とか?」
昼斗は相変わらずぼんやりと歩いている。
結局何も見つからず、俺たちは帰る。
レカムが笑顔で言う。
「また明日、来てくださいね。」
?
「なぁ、篠雨。俺たち明日も行くのか?」
「あぁ。書類に書いてるはずだぞ。」
「……」
気づけば夕日が沈みかけている。
烏兎たちは何か見つけただろうか。
・・・・・***・・・・・***・・・・・
「緑人嫌い?」
突然投げかけられた問いに朔羽は顔を上げる。
部屋の窓から夕闇が差し込んでいる。
「何で……」
「そういう目してた。」
烏兎はカメラの映像を見たまま言う。
朔羽は呟くように言う。
「嫌いだったら何だよ。家族も全員緑人に殺されたんだ。」
烏兎は息を吐いて言う。
「意地悪な質問するけど、もし、日月くんが緑人になったらどないする?」
朔羽は思わず手を止める。
烏兎の黄色い目が寂しげに画面の光を反射している。
沈黙が流れる。
「これは多分そういう仕事。」
「分かったみたいなこと言って…お前に何がわかるんだよ。」
「確かに俺には朔羽くんのことなんか全然分からへん。」
「じゃあ……」
「でも、人が死ぬのはたくさん見た。」
「……!」
「『日月くんが緑人になったらどないする?』って聞かれて答えられへんのはさ、俺は……大事なことやと
思う。」
「…たくさん見たって何だよ。」
「……医局員のとき、片足が緑人化して足を切り落とした人がおる。植物が生えた、手遅れの戦闘員が運ば
れてくのを見送る。俺が担当してた患者の隣の患者は、いつの間にか白い布顔に掛けて動かへん。俺の周りには亡骸と肉片、悲しみ、恐怖、怒り。」
朔羽は魅入られたように烏兎を見つめる。
「被害が増えるに連れて俺の心も死んでく。医局員なのに自分の傷も止血できひんし、誰も救えへん。」
そして、寂しげに笑う。
「最悪やろ?」




